すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

小野不由美『屍鬼』第一巻 感想

私の中では『十二国記』と並んでメジャーな小野不由美作品で、以前から気になってはいたのですが、この度ようやく手をつけました。(ちなみに十二国記も読んでません)

読むきっかけ

今回読もうとしたきっかけは、先日『残穢』を読んだからです。

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これも今更感がありますが。

これがまた面白かった。ほぼ一気読み。

一人きりで静かな時に読むと怖い。ゾクゾクする。でも確かに怖かったけど、ホラーなのにやけに論理的で、理屈っぽく、筋道がしっかりしているところが面白かった。ややくどく感じないこともなかったんですが、私好み。

民放じゃなくて、NHKのドキュメンタリーっぽい感じ。実在の人物が登場するので、そういった意味でも「ノンフィクションかな?」と錯覚させる。

この『残穢』に満足したので、では同じ小野不由美の作品を、ホラーを読もう!と思って、長ーい『屍鬼』に手を出しました。

屍鬼』とは?

第52回日本推理作家協会賞長編部門候補作。 上下巻合わせて1000ページを超えるボリュームを誇り、登場人物はメインとなる人物たちの周りや家族なども事細かに登場し、150人を超える。

スティーヴン・キングの「呪われた町」へのオマージュであると後書きで触れている。

ちなみに、京極夏彦は連作小説集『どすこい』内で、本作のパロディとして『脂鬼』を発表している。

Wikipedia

屍鬼』第一巻あらすじ

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた――。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

新潮文庫

感想

※ネタバレはなしでいきます。

読み初めから「これは当たり」という感触。

まだ第一巻、序盤に当たる。丁寧に丁寧に、村の地理的条件、歴史的背景、多数の登場人物を描き出している。この丁寧さはミステリー作家っぽい。(ミステリー作家なんだが)

これはホラーサスペンスって感じかな。

作品世界の設定も骨太だし、何よりこのかなり多い登場人物!これだけみっちり描かれたら、決して平穏ではないはずの彼らの行く末が心配で仕方がない。
(しかし、海外ミステリみたいに、人物一覧表が欲しいと思った)

この丁寧な作品の組み立て方が後々かなり効いてくるんだろうと思って、これからの展開にとてもドキドキする。

レビューで何人も「序盤が動きがないから挫折しそう、退屈、長い」などと見かけたが、決してそんなことはない!この時点でかなり面白い。興味深さもあるし、何よりこれだけしっかり世界を描かれていると、引きつける力が強い。

私は決して都会暮らしではないが、もちろんこんな村には住んだことがない。

ああ、超ド級の田舎の暮らし、人間関係はきっと本当にこんなのなんだろう、と思いつつ読む。リアルさ。
個人的には他人の干渉が嫌いなので、絶対住みたくない。現代っ子なんです。

この狭く、人口も少なく、密接でかつ排他的な村社会。ここにこれからどんな恐怖が訪れるのか。

が、 私は読書前にレビューをあたっていたところ、軽くネタバレに遭遇してしまいまして。ネタバレというほどではないかもですが、少なくともこの第一巻だけではわかっていないこと。
多分この作品は何も情報を入れずに読む方が良かった。やや心構えをしてしまっている自分がいるから。

とはいえ、この丁寧に描かれた世界にじわじわと迫ってくる恐怖と、その得体の知れなさは逸品。その恐怖は「死」であるのだけれど、納得出来なくもないのに不条理さ不可解さを含んでいる。得体のしれないことって怖い。

この作品はいわゆる群像劇にあたると思うが、強いて言うなら主役は若僧侶と医者だろう。幼馴染の2人。単に私がこの2人が好きなだけかも?

この2人に注目しつつ、さっそく第二巻に手をつけます。

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