すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

韓国ミュージカル『ファンレター』感想~人間の矛盾と愛

先日ちらっとこちらの記事でお話した、韓国ミュージカル『ファンレター』の映像。

komakurashi.hatenablog.com

 

ど根性で字幕を付け終わったので、先日満を持して鑑賞しました。
絶対好きだと思ってたけど、もうめちゃめちゃ良かったです。

2019-2020年公演のこの映像は、4パターンのキャストが収録されていましたが、私が観賞したのはイ・ギュヒョンverです。

 

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あらすじ

https://namu.wiki/w/%ED%8C%AC%EB%A0%88%ED%84%B0(%EB%AE%A4%EC%A7%80%EC%BB%AC)?from=%EB%AE%A4%EC%A7%80%EC%BB%AC%20%ED%8C%AC%EB%A0%88%ED%84%B0

"안녕. 나의 빛, 나의 악몽"
1930년대 경성. 경성에서 잘 나가는 사업가인 '세훈'은 카페에서 쉬던 중 놀라운 이야기를 듣는다. '히카루'라는 죽은 여류작가의 소설이 출간된다는 사실이다. 게다가 알려지지 않았던 그녀의 진짜 정체까지 밝혀진다고 한다.
'세훈'은 구치소에 갇혀있는, 문인들의 모임 '칠인회' 멤버이자 소설가인 '이윤'을 찾아가 그 출간을 중지해달라고 부탁한다. '이윤'은 정확한 이유를 밝히지 않으면 그럴 수 없다고 말하며, '히카루'의 애인이었던 소설가, '김해진'이 그녀에게 남긴 마지막 편지까지 품에서 꺼내 자랑한다. '세훈'은 자신이 그 편지를 꼭 봐야 한다고 말하며, '히카루'에 대한 이야기를 꺼내는데...
さよなら。私の光、私の悪夢。
1930年代京城京城で売れっ子の実業家「セフン」はカフェで休んでいる時に驚くべき話を聞いた。 「ヒカル」という死んだ女流作家の小説が出版されるという事実だ。 さらに、知られていなかった彼女の本当の正体まで明らかになるという。
「セフン」は拘置所に閉じ込められている文人たちの集まり「七人会」のメンバーで小説家の「イ·ユン」のところを訪れ、出版を中止してほしいと願う。 「イ·ユン」は正確な理由を明らかにしなければできないと言い、「ヒカル」の恋人だった小説家、「キム·ヘジン」が彼女に残した最後の手紙まで胸から取り出して自慢する。 "セフン"は、自分がその手紙を必ず読まなければならないと言って、"ヒカル"についての話をするが···。

 

感想

盛大にネタバレしてます。
気にする方はご注意を。




とりあえずざっくり箇条書きで流れを書くと、

  • 日本統治下の過酷な世の中、朝鮮文學を絶やすまいとする文人たちの集まり「七人会」のところで小間使いとして働くことになるセフン。そこでヘジン先生と対面を果たす。

  • 上記あらすじの「ヒカル」はセフンのペンネーム。

  • ヒカルからのファンレターを受け取り、その文章を通してヘジン先生はヒカルに恋をしていた。女性だと思いこんで。

  • そのことを知ったセフンは焦るが、ヘジン先生のあまりに純粋な恋を目の当たりにして、「ヒカルは本当に存在する」ものとして手紙を書いていく決心をする。

  • セフンとヒカルは同じ人間であり、意思も目標も共にする者だったはずが、段々二人の思いは違う方向へと向かっていく。

  • 命を尽きさせても最高傑作を書かせようとエスカレートしていくヒカルと、それよりもヘジン先生に生きていて欲しいセフン。

  • もう駄目だとなったところでセフンは自分の利き手を刺す。(=ヒカルを殺す)

  • ヘジン先生に真実を打ち明けるが、拒まれる。

  • 最後に遺されていた手紙で、ヘジン先生がすべてを受け入れてくれたことを知り、許しと救いを得るセフン。

  • ラストは、消えていたヒカルがセフンの元に帰ってくる。

 

セフンの心、ヒカルという存在

私はこれ、今回ちゃんと通して観るまで、セフンとヒカル、そしてヘジン先生の愛の物語だと思ってました。 実際そうなんですけど、どちらかと言うとそれよりも私の印象は、セフンという一人の孤独な青年の内面を描いた話だと感じました。

 

母は死に、父には日本に留学に行かされ。その父は文学への理解はない。
自分には誰も愛してくれる人間はおらず、セフン自身も自分のことが好きではない。

「ヒカル」は間違いなくセフン自身なんですけど、でもセフンではない。セフンの「理想の自分」を投影した姿なんです。
文学の才能があり、ヘジン先生の愛を受け、セフンには書けない大胆な文を書き、奔放な明るい人。
自分ではない自分を作り上げ、心に置き、ペンネームとして使っていた。その人は、その人だけは、常に自分の味方

ヒカルは元々ただのペンネームでありながらも、最初から舞台に登場します。つまり、ヘジン先生の誤解から始まる混乱よりも前から、ということ。
それは結局、最初はただのペンネームだったと言いながらも、元々それだけではなく、セフンがヒカルを「自分の味方」として作り上げた、という解釈ができるかなと思います。
ただそれだけでなく、文学の才能はヒカルのものだったり、ヒカルがいないと自分は愛されない、ということだったりと、良い要素を自分ではなく別人格に与えているあたり、セフンのあまりにも皆無な自己肯定感と、深い絶望を感じます。

 

ヒカルは、最初の登場時はボーイッシュで、中性的な印象です。
それが、ただのヘジン先生の誤解から、セフンが「意図して」ヒカルが存在するように書こう、と思う辺りで、ヒカルはチャーミングな女性の姿に。ヘジン先生の恋心を知ることで、ヒカルの姿は理想のお嬢さんとなる。
そしてセフンの手を離れ、ヒカルが暴走する第二幕になると…誰の手もつけられないような、人の心を手玉に取る、妖艶な大人の女性になります。
最初はヒカルはセフンに似ている、無邪気な少年のようなのですが、どんどんと「別の存在」になってくる様子を視覚的に表しています。

 

ヒカルはセフンそのものであり、半身であり。セフンを助けてくれる、一番の味方であったはず。
それがヘジン先生への愛情により…。愛情の違いにより、二人は一人の中で引き裂かれていく。至高の文学を求めるヒカルと、ただヘジン先生の愛と健康を求めるセフン。
ヒカルはセフンの持っていない才能、愛を持つ存在であると同時にもう一つ、セフンにない部分を持つことになります。それがあの攻撃性です。

ややこしいのは、何度も言うようですけど「二人は一人」であるということです。
すなわち、セフンがついていけなくなるヒカルの暴走も、間違いなく心のどこかでセフンも望んでいたことであるということ。ヒカルはセフンの心から生まれている存在である以上、セフンの望みを知り尽くしているのです。
ヘジン先生の文学を愛したセフン、そんな彼が「例え行きつくところは死だとしても、先生がその過程で生みだした最高傑作を読みたい」と心のどこかで思うのは至極当然のことだと思います。

 

言ってみれば一人の人間の中の矛盾を極端に描いた物語が今作です。
人間は皆自分の中に矛盾を抱えています。でもセフンのようにあそこまでかけ離れ、自らの矛盾に耐え切れなくなることは、もはや病気と言っていいほどかも知れない、二重人格のような分離した存在を生み出しています。

しかし文学だけでなく、先生という存在そのものを愛したセフン、その理性は、そんなヒカルが表す自身の暴走を許さなかった。
だから彼女を殺した。
彼女を殺すということは、自身の一部、半分を殺すということ。ヘジン先生のために。

 

自らが生んだ悲劇とは言え、半身を失ったセフン。
自分の愛される部分であり、才能であったヒカル。

 

この作品は、ラストもとても好きです。セフンはヒカルを殺しましたが、最後にヒカルはヘジン先生に送り出され、セフンの元に帰るのです。
ヒカルを深く愛していたヘジン先生ですが、セフンには彼女が必要だとわかっている。自分よりも。ヒカルが戻り、二人はまた一人になる。

 

ただ悩むのは、このラストでセフンはヒカルを受け入れるけれど、ヒカルを「自分として」受け入れたかは微妙だなというふうに個人的には思うことです。
というのは、この作品内でセフンの自己肯定感が上がっているようにはあまり感じられないからです。彼が自身を認めない限り、ヒカルを自分として受け入れることはできないですし。
更に、ヒカルの分裂があまりにも激しすぎたことの強い印象もあります。

と思う一方で、ヘジン先生の手紙で救われ、ヒカルがいない状態で七人会に加入しているので…。自分を認めてあげられたのかなと、思わなくもないです。 ずっと考えてますがどっちとも取れますかね…。

 

ヘジン先生の恋、セフンの愛

セフンのヘジン先生に対する愛はいわゆる恋愛なのか、っていうのは観る前から気になっていたところなのですが、いざ観てみると「崇拝」という言葉が一番しっくりくるなと思いました。
どちらにしても、誰にも愛されず、またおそらく誰のことも、自分のことも愛していなかったセフンにとって、ヘジン先生が唯一の「愛する人」だった。
ヘジン先生がヒカルの言葉に救われていたように、セフンもヘジン先生の言葉に救われていた。言葉を通して繋がる心があった。
 

 

ヘジン先生に関しては、言ってみれば被害者ですよね。
ただヘジン先生もどうも幸せに生きてきたわけではなさそうで(この時代の朝鮮人だから当然でしょうが)、ヒカルだけが初めての、心から愛せる人だったよう。そのせいか、執着心はすごく強いな…と。「この人が唯一の人」という強い愛と執着。
しかしヘジン先生の誤解を知った時点でセフンが打ち明けていれば、ヘジン先生の傷ももっと浅かったでしょう。
でもセフンは違う道を選び、ヘジン先生はヒカルへの愛にのめり込んでいく。

だからセフンに打ち明けられたとき、ヘジン先生はその事実を受け入れられなかった。「ヒカルがどんな人でも、どんな姿でも気にしない」と言っていても、その言葉が決して嘘ではなかったとしても、それでも、ヒカルが身近にいる青年だったことは、ヘジン先生にとってすぐに受け入れられることではなかった。
ただ最後のユンとの会話からも察することが出来、更に最後の手紙からも分かりますが、ヘジン先生もいつからか、心の奥底で悟っている真実があったようです。ヒカルがセフンであるということを。でもそこから目を逸らし続けていた。
ヘジン先生の心で作り上げたヒカルは、決してセフンではなかったから。

それでもヘジン先生はショックを乗り越え、最後の手紙を残します。全てを受け入れ、

手紙の主が誰であろうと、愛さずにはいられない

と書き残し、セフンの心は救われます。 愛されたことがないと思っていたセフンが、ここでやっと愛を手に入れた。

 

この物語は、孤独で愛のない青年が愛を得、そして半身を取り戻し、もしかしたら自分自身のことも受け入れられた、そんな物語。

 

文学のこと

日本統治下で文学人が苦しんでる話なので、まあ日本人として見ていて辛いものがあります。
私も文学に救われてきた人間ですし、どこの国であっても、その国の文化を取り上げるというのは罪深いことだなと思います。その国の言葉や文化を取り上げるということは、その人たちの尊厳を奪うということ…。

この物語の中で、彼らの活動に対して「国がこんな時に」「役に立たない」と一般に言われていますが、いつの時代もどこの国も、文学が「役に立たないもの」として軽んじられるのは、もうずっと変わらないんでしょうね。
確かに文学とは、「役に立たない」と思う人にとっては間違いなく役に立たないと思います。そこから救いを得る感性をきっと持ち合わせていないから。それが駄目というわけではないけれど、文学に救われる人間がいる以上、それを否定しないで欲しい。

メインはヘジン、セフン、ヒカルの3人ですが、その背後で七人会が日本統治の世の状況に抗って、なんとか朝鮮文学を守ろうとしている…。文学は人間として必要なものだから。観ていて心が痛いけど、彼らはとても眩しい存在だなと思います。

 

 

ちなみに「七人会」は「九人会」という実在のモデルいるそう。

 

 

彷彿とさせる作品

観ていて思い浮かべた作品が複数あって、まずこれはもちろん挙がるでしょう、シラノ・ド・ベルジュラック
言葉から生まれる愛、言葉で通じ合う心と言ったら、やはりこの作品は外せません。

大好きなミュージカル映画ロケットマン
そしてウィーンミュージカルモーツァルト!』
ヒカルは、モーツァルトにおけるアマデのよう。そしてロケットマンにおけるレジーのよう。その人の何かしら(才能とか…)の具現化。
ただヒカルとセフンの関係は分裂が激しすぎて、上記二作品とはまたとても印象が異なりますが。
あとロケットマンは、エルトンが最後間違いなくレジーを、自分を受け入れますし。自分を愛することを知る。ファンレターは、先程も述べたように、その部分は悩ましい。

 

ナンバーについて

YouTubeで動画を見たとき、CDを聞いてる時からとても好きでした。
すごく好み。
更に歌詞を訳して意味を知ると、もう震えるような名曲が多数です。
日本は輸入ミュージカルが多いので(韓国も?)、国産オリジナルミュージカルでこんなにクオリティ高いの羨ましい。曲良し内容良し演出良しですよ。最高。

私はそもそもヘジン先生役のイ・ギュヒョンを目当てに興味持ったし観たので、ヘジン先生のナンバーは好きなものがほとんどです。
が、通して観たらあれも良い、これも良い…。鳥肌モノが多いです。

 

下記は2016年初演のハイライト。 youtu.be

 

一曲ずつメモ。

유고집

「キム・ヘジンの恋人だったヒカル」の遺稿集が出版されるニュース。更にヘジンの最後の手紙があるという話。それを耳にするセフンという、冒頭のナンバー。

 

그녀의 탄생과 죽음

ヒカルの遺稿集の件、ヘジンの手紙の件を問い詰めに、東京の拘置所に囚われているイ・ユンをセフンが訪ねた際の応酬。

これは歌詞じゃなくて曲調がすごく好き。

あなたが聞きたい話をしてあげる
僕たちはとても親しかった
この目で共に彼を見て
この手で一緒に文を書いたから

youtu.be

 

아무도 모른다

セフンの深い孤独が歌われたナンバー。
そしてヘジン先生に「悲しみを抱いているなら その悲しみを分けてください」と伝える。

セフンとヘジン先生が同じ悲しみを抱いており、それを知り、手紙を通して心を通じ合わせたことが分かります。

誰も知らない
ここの誰も
僕が誰なのか、何を望んでるのか

 

悲しみを分かち合った唯一の人

 

Number 7

日本統治下での苦しさを歌う内容。

 

いくら占領された土地だとしても
芸術まで占領されるわけにはいかないじゃないか

 

눈물이 나

ヘジン先生との対面を果たしたセフンの喜びを歌うナンバー。

本当に本当にヘジン先生に憧れて、尊敬して、ここまで来たんだなと。
このナンバーのセフンは初恋中の少年のような感じです。ここはちょっと恋っぽい。

 

夢か現実か
目の前に広がる今この風景が
あまりにも嘘みたいで胸がいっぱいで
バカな僕は涙が出る

 

그녀를 만나면

今度はヘジン先生が「ヒカル」への恋心を歌うナンバー。
うっとりとして、本当に愛しそうで、ピュアな愛情を感じます。
私がこのミュージカルに関心を持ったきっかけの動画がこの曲でした。

 

彼女は僕に言った
悲しみを分けてほしいと
彼女は分かるかな
その一言で病気を忘れて
1日を生きて、1ヵ月を生きる

youtu.be

 

거짓말이 아니야

ヘジン先生の誤解を知り、「ヒカル」を存在するものとしてヘジン先生を騙し通す決心をする。
ヒカルの具体的な設定を作り上げ、ヒカルは愛らしい女性として生まれ直す。
「嘘じゃない」「目を隠せば同じ」と、自分で自分の嘘を信じようとする。

これが悲劇の始まりですよ…。セフンがヘジン先生をがっかりさせない為に、また自分が嫌われない為に、絶望の道へ突き進みます。この時点ではまだまだ軽い感じですが。

 

僕の嘘を信じよう
すべては真実だ

 

신인 탄생

ヘジン先生がヒカルの文章を発表してしまい、新人女流作家誕生として世間から大きな注目と好奇心を浴びる。

 

글자 그대로

「文字通り 願った通り 叶う」とヒカルがセフンに歌う。

ここで初めて出てくるヒカルの下記の歌詞は、この後繰り返し登場します。かなり印象的なフレーズ。

 

私は闇の中の声
君が寂しい時に助けてあげた手
私は君の味方よ

 

Muse

ヘジンのあまりにものヒカルへののめり込みっぷりを心配するユンはじめ友人たち。
「ミューズが現れたんだな」と歌いますが、そのミューズは天使か悪魔か。
ミューズは芸術家の恋人。ヘジンにとってのそれはヒカル。

 

僕のすべてを失ってもいいから
今夜僕の窓辺に訪ねて来てください

 

섬세한 팬레터

ヒカルの正体はセフンではということをユンに疑われて、焦ったセフンがヒカルにどうしようと訴える。ヒカルは巧みな文章でヘジンを操り、翻弄する。
二人だけの世界で、誰にも邪魔されないよう、ただ一緒に文を書く。生の伴侶はあなただけ。

この辺りから物語はより暗く、深く、激情に包まれていきます。震える。
ヘジン、ヒカル、セフンの愛と文学、執着が混ざり合い、凄まじい人間の感情が絡み合う、第一幕ラストの曲です。

 

分かりましたか?
あなたの生の伴侶はただ私だけ
私じゃなくてどうして他の人が必要なんですか

 

ただ文を書きながら、君と一緒に
いつも僕が望んでいた愛だ

 

あなたを理解する人は僕だけだ
僕たちの間に他の人は必要ない

 

世界は必要ない
誰もいらない
君だけ僕のそばにいれば
全てを捨てることができる

youtu.be

 

투서

七人会について投書があり、今までの文章を燃やすことにする。文人たちの無力さと憤りが歌われる。

 

どこかに私たちを望む読者がいるだろう
いつかは私たちの文章が輝くだろう

 

글자 그대로 Rep.

 

별이 반짝이는 시간

ヒカルとセフンがかけ離れ始める。
死の影が色濃く見えるヘジン、それでも書かせようとするヒカル。ヒカルを気が狂ったと責め、ヘジンを助けたいセフン…。

こんなに輝く瞬間を待ってたじゃない これが私が、いや君が望んでいたことよ

 

私は君の悪夢、闇の光
最も深い魂
夜の闇の中で
2人きりで交わした対話覚えている

 

この輝く時間の間 すべてを忘れて
恐らく気づかれないだろう
死に至るにせよ

 

あなたが望んでるんじゃないの
私のせいにして隠れてばかりいて 楽でしょ?
忘れられない栄光をあげる

 

생의 반려

ユンがヘジンとヒカルの原稿を見る。そこに書かれていたのは、自身たちをモデルとする悲劇の恋の物語。

「この全ての人物さえいなければ」
「愛が叶うはずです」
「現実の限界を超えて」

 

輝く時間の間
すべてを忘れてしまえ
恐らく気づかれないだろう
死に至るにせよ

 

この物語の中、男(ヘジン)と女(ヒカル)が薬を飲み心中するシーンがあります。私が観たイ・ギュヒョンバージョンでは、薬を飲み、死ぬのは男だけです。死ぬ気のなかった女の姿にゾッとするものを感じましたが、気になって他のバージョンを確認したところなんと、他3パターンでは全部二人とも飲んでいます。これには衝撃…。
脚本を確認してもその辺のト書きはなかったんですが、この違いは解釈分かれる。

 

별이 반짝이는 시간 Rep.

 

거울

セフンがヒカルと決別する強烈な一曲。
もう二度と書けないとしても。唯一の味方だったヒカルをヘジンの為に殺す。
自らの半身。もはや完璧に分裂してしまったけれども。

消える直前の「肝に銘じて、君は…私なしでは誰にも愛されることができない」というヒカルの歌詞は、一種の呪いのようでもあり…。

 

誰も僕を愛したことがない
僕だって僕のことが嫌い
誰も僕を愛していない

 

私は君の小さくて甘い沼
堂々と美しく愛される夢
君は私なしでは何もできない

 

その人の目には僕はいない
日差しの中で輝いていたその姿
僕が愛した暖かさ
もう見つからない

 

ああ、僕の心よ、このまま目を覚まさないでくれ

 

肝に銘じて、君は…
私なしでは誰にも愛されることができない

 

さよなら 僕の光 僕の悪夢
闇の中の声
助けてくれた手
僕の片割れ

youtu.be

 

고백

ヒカルを殺し、ヘジンに真実を告白する。

二人の悲痛さが激しすぎて…。

 

どうか私を見てください
私があなたの…ヒカルです
私はあなたのために
私の心さえも殺しました

 

違う お前は、ヒカルじゃない

 

いっそ最後まで秘密を守ればよかったのに
いっそ最後まで嘘を言えばよかったのに

youtu.be

 

해진의 편지

ヘジンがヒカルではなくセフンに遺した最後の手紙。

これによってセフンは、救いを得、文学を取り戻すのです。

すべては私から始まった
間違った幻想から覚めたくなくて
何時かしら悟った 薄薄ながら
私の周りを漂う彼女のような風を
彼女に似た繊細さと震え
彼女とは違う優しさと純粋さ

 

僕よりもっと勇敢な君を見て
私もやっと一歩踏み出す
手紙と原稿を受け取ってほしい
彼女にあげたい花と一緒に

 

それが誰だって
手紙の持ち主を私は愛さずにはいられない

youtu.be

 

내가 죽었을 때

ヘジンの許しを得て、ヒカルがいないまま、七人会に入ったセフン。
ヘジンとヒカル作の『生の伴侶』が出版されることになる。
最後の、セフンからヘジンへのメッセージ。

セフンは一生ヘジン先生を忘れることはないでしょう。ヒカルと共に。

 

へジン先生は私にとって初めてお会いした春のような方でした…

 

みんなそうだ
すべてが過ぎれば忘れて生きると言っている
僕はいくら過ぎてもそうはならない

 

永遠に忘れることもできない
そのページをつかんで 今日を生きる

 

僕の愛が死んだ時、僕の青春も死んで
振り向きさえしなかった
僕の春を今になって送る

youtu.be

 

キャストについて

出演者は全部で7人。(七人会は一度も七人じゃなかったけど)
ですが、主要3人のみちょろっと書いときます。

 

イ・ギュヒョン as キム・ヘジン

ギュヒョンさんから出会ったこのミュージカル。もちろんギュヒョンさん目当ての鑑賞。
この人は本当に最高です。
悲しみや孤独を抱えた、影のある役がすごく上手いんですよね。
ヘジン先生の孤独と愛、恐怖と絶望…。優しい笑顔から狂気じみた迫力まで。何でも自由自在です。
最初のピュアな恋から、だんだんと愛にがんじがらめになって、堕ちていく姿…。
ミュージカルなのでもちろん歌唱力も。歌が上手いとか声が良いとか言うだけでなく、いかに歌に演技を乗せられるか。演技と歌がかけ離れないか。ギュヒョンさんはもうパーフェクトですね。ありがとうございます。

 

ユン・ソホ as チョン・セフン

CDで聴いていた時はあまり好みじゃなかったこの人ですが、まー本編観たら演技が良かったので大満足です。
彼の演じるセフンは本当に純で気弱で、自分のことが好きではなくて…。ヘジン先生への愛、ヒカルへの信頼と恐怖、そして哀しみ…。
もうセフンが可哀想で可哀想で。この人だったからここまで哀れに感じたのかなあ、と思わないでもないです。

 

キム・ヒオラ as ヒカル

この人もCDではあまり好みじゃなかったのですが、まあすごい迫力でした。
やはり後半。狂気じみた姿。ヘジンを、セフンを駆り立てる熱と、併せ持つ冷酷さ。二人の男を(色々な意味で)翻弄する大人の妖艶さ。
すごく良かったです。



おわりに

色々な人に観て欲しい、でも観てもらう手段がない…という葛藤と、単に自分の思いが昂ったのでここまで長々と書いてしまいました。
もし興味を持たれた方いましたら教えてください。喜びます(笑)

なかなか観られないと思いますが、昨年世界配信があったようなので、またあるかも?
アンテナ張っときます。

もしここまで読んでくださった方がいましたら、ありがとうございました。
好きな作品にまた出会えて、幸せです。







※セフンの行動からの批判とそれに対する反論の論争が一部(?)で巻き起こっていたようで、そのまとめをナムウィキで読みました。なるほどなぁ…考え方の勉強にはなります。
要約しようかとも思ったのですが、その辺の先入観はなしで観て良かった、と私自身は思ったので、載せないでおきます。(こんなにネタバレしといて何だけど、それとこれとは別)
とりあえず覚え書き。