2000年フランス製作ドラマ『レ・ミゼラブル』(ジェラール・ドパルデュー主演)完全版 感想
東宝ミュージカルの『レ・ミゼラブル』を観劇した勢いで、こちらのDVDを購入。
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2000年の、本国フランスで製作された、ドラマ『レ・ミゼラブル』です。
短縮版(3時間)は観たことありましたが、完全版は初めて。
短縮版が個人的にあまりにつまらなかったのですが、完全版の評価が非常に高いので、観てみたくなったのです。
全四話、6時間越え。
観終えたので、感想。
スタッフ
製作: ジャン=ピエール・ゲラン
監督: ジョゼ・ダヤン
原作: ヴィクトル・ユーゴー
脚本: ディディエ・ドゥコワン
撮影: ウィリー・スタッセン
音楽: ジャン=クロード・プティ
出演
バルジャン: ジェラール・ドパルデュー
ジャベール: ジョン・マルコヴィッチ
ファンティーヌ: シャルロット・ゲンスブール
テナルディエ: クリスチャン・クラヴィエ
コゼット: ヴィルジニー・ルドワイヤン
修道院長: ジャンヌ・モロー
マダム・テナルディエ: ヴェロニカ・フェレ
マリウス: エンリコ・ロー・ヴェルソ
エポニーヌ: アーシア・アルジェント
アゼルマ: ソフィー・ミルロン
フォーシュルバン: ヴァティム・グロウナ
アンジョルラス: ステフェン・ウィンク
クールフェラック: クリストファー・トンプソン
ミリエル司教: オットー・ザンダー
ガブローシュ: ジェローム・アードレ
ジルノルマン: ミシェル・デュショソワ
感想
※ネタバレあり
ほぼキャラクター感想になりました。
第一話を観た時は、面白い!と思いました。
短縮版のつまらないイメージが強かったので、完全版は面白いじゃないか!と喜ぶ。
が、第二話、第三話……と進むうちに、なんとなく残念な気持ちに。
つまらなくはない……のですが。好きじゃない。
基本はかなり原作通りだったと思いますが。
しかし謎の改変もあり。
更に一部キャストが個人的に微妙だったのが、イマイチな気持ちに拍車をかけていたと思います。
微妙なところ
ジャベール
まず、ジョン・マルコヴィッチのジャベール。
演技は上手いですよね。でもどーも、あのねちっこさが無理!
ジャベールあんなに蛇のような感じだったかしら……?
悪くはなかったのですが、好きになれないジャベールでした。
自殺は入水は入水でも、橋から飛び降りるのではなく、岸から歩いていく形。あの決然とした表情で死に向かうシーンは良かった。
死の前のシーン、「その強盗を見逃す罪と、捕らえる罪の間で」という台詞はぐっときました。
ジャベールにとってはもうすでにどちらを選んでも、自分は罪を犯すということになるんですね。
彼が死を選ぶ理由がわかりやすく表現されていたかと思います。
マリウス
それからもう1人、ダメだったのがマリウス……。というか一番ダメ。
私は元々嫌いです、マリウス。ミュージカル版ではかなり緩和されてますが。
それがこのドラマではまあ!言葉は汚いですが、クソ野郎ですね本当に!!
原作通りと言うべきか。
コゼットと革命の間での変わり身が激しすぎてついていけない。
それにミュージカルではまだ、コゼットか革命か、と悩んでる様子が伝わりますが、これは違って、コゼットのことしか頭にないんですね。
コゼットと出会ったから、革命は参加しない。
それはそれでいいと思いますよ。そう決めたのなら。
しかしコゼットがいなくなった、だから革命に参加する、と戻ってくるシーンが、仲間のためにではなくいかにも「やけっぱち」すぎて腹が立つ。
お前もう帰れ!!って思った。
あとはバルジャンに対しての態度……。
結婚後のバルジャンとマリウスの会話。バルジャンを追い払うマリウス。原作でもマリウス最低ポイントはここですが。
コゼットにはバルジャンが去ったことについて嘘をつき続けます。
私がコゼットの立場なら、このマリウスの嘘が発覚した時点で幻滅するレベルですよ、まじで。
このドラマのコゼットも、けっこうキレてるように見えたけど。
しかしこのドラマ、ここでバルジャンの方に謎の改変加わってまして。これがちょっと…。それは後ほど後述します。
それからこれは身も蓋もない意見ですが、マリウス役の俳優さんの顔が苦手すぎる!!
私好みじゃない程度ならいいんですが、かなり嫌いなタイプのルックスでして。
見てるの割と辛かったよ。
アンジョルラス達学生
あとは学生達の扱いが雑すぎなのも気に入らない。
彼らの死の場面はなし、マリウスが仲間の死に対して苦しんでる、悲しんでる描写もなし。
(おかげでマリウスめ……!なポイントがひとつ増える)
まああの長い作品を映像化する上で、どこかは省くしかないんですがね……。
このドラマではそれは学生達だったということで。
謎ポイント
基本はかなり原作に忠実だったと思います。
思いますっていうのは、もう原作の記憶があやふやだからですが。
このドラマを観ていて、「そういえばこんな場面あったなー」と思い出すことがいくつもあったので、多分なかなか忠実。
にも関わらず、私が気になって仕方がないポイントが以下二つ。
ガブローシュの存在
今作でのガブローシュは、かなり早い段階で登場します。
バルジャンがまだ幼いコゼットを連れている時、ガブローシュが彼らに寝床を提供してあげるのです。
さすがガブローシュ!男前!とガブローシュ贔屓な私は思いつつ、これだとコゼットより年上設定だけどどうなるん……?とも思った。
それがまさかの!
6年後かな?コゼットも大人になり、マリウスも登場する。そこに再度現れる、なんら変わらず少年のままのガブローシュ。
………このドラマのガブローシュは、妖精さんかな???
なんでこんなわかりやすく辻褄の合わないことになってるんですか。
製作段階で誰か疑問に思ったでしょ絶対。
バルジャンのコゼットに対する愛情
さっきマリウスについて述べた時にちらっと書いた改変です。
結婚後のマリウスとバルジャンの会話で全てを打ち明けたあと、バルジャンはマリウスに、コゼットへの愛情は「男として」だと言います。
なんでだよ!!!???
え、これなんで!?原作そうだった!?違うよね???
この発言があって、マリウスはよりバルジャンを遠ざけるわけですが。
(だからと言って、虐待してたわけでもないバルジャンをコゼットから引き離す権利はお前にないけどな!!!)
この改変は辞めて欲しかった……。なんとなく、これは感覚的な、気持ち的な問題ですが。
良かったところ
何人かがイメージぴったりのキャスティング!!
エポニーヌ
エポニーヌとガブローシュが一番好きな私は、ここがいかにイメージ通りかは重要ポイントで。
このエポニーヌはとてもぴったり。
荒れてて、汚れてて、気が強くて。悪党の娘!という感がバリバリの汚さ(中身も外見も)なんだけど、その中に垣間見える純さと真っ直ぐさが、まさにエポニーヌ!
エポニーヌはやっぱり、一途で可哀想なだけじゃ、違うんです。汚くないと。それがエポニーヌ。彼女の生きた世界。
(しかしこの役者さん、身綺麗にしたらけっこう美人さんでは?)
しかし子供時代エポニーヌは、コゼットに対してかなりの残酷さ。
あの親であの空間にいればそうなるわな。
テナルディエ夫妻
ミュージカルではコミカル感強めに描かれますが、このドラマでの悪党っぷりが最高。
この2人を演じた役者さんが、また美男美女なんです。美人と男前。
いやらしさが際立つ。
ミュージカルでのテナルディエ夫妻の(観客による)愛され感が、私は嫌いなんですよね。この2人は徹底的に「悪」でいて欲しい。貧しさ故の、悪に成り下がって、もうそこからやり直せない存在。
ファンティーヌ
ファンティーヌもなかなか好み。
可憐な見た目に対して、実は割とたくましい。
娘のためにとても懸命な若い若い母親像が良かったです。
バルジャン
さて主役、ジャン・バルジャン。
ぴったり!というのとは違いますが。
ジェラール・ドパルデューがとにかく上手い。
特に冒頭の荒々しさ。悪人のように感じる。
その荒々しさは、生まれ変わった後も時折顔を見せ、彼は善人になったけれども、「完璧な人」ではないんだと思って、そこが愛おしい。
ただ体格が良すぎるんで、後々は良いけど、囚人時代はもう少し痩せてて欲しかったかも。
コゼット
猛烈に可愛い!最高に可愛い!
父親(バルジャン)を愛し抜き、凛とした強さも備えてる。
お人形さん感が強くなく、私好みのコゼット。
ジルノルマン
地味に良い。
頭固くて分からず屋感強いながらも、孫への愛情溢れんばかりに見えたところがとても良い。
上手い。
ガブローシュ
謎ポイントを除けば良かった。何より子役がかわいい(笑)
このドラマでも、テナルディエ夫妻の息子(エポニーヌの弟)設定はないっぽいですね。
が、テナルディエの脱獄に手を貸すシーンはあり。
テナルディエの脱獄を助けるようにエポニーヌに頼まれたガブローシュ、エポニーヌにキスを要求します。
「キスして」と言うガブローシュに、エポニーヌはませたガキだと言いますが、ガブローシュはこう答えます。
「女のキスじゃないよ、ママのキス」
おでこにキスして欲しい、と。
たくましい浮浪児の孤独な一面が垣間見えて、かなりぐっときた場面。
それからこのガブローシュの男前ポイント!!
何かとマリウスの手助けをしてるガブローシュ。
マリウスが「危険だぞ」と忠告する場面があるのですが、それに答えるガブローシュ「守ってあげる」
なにそれ!!!かっこいい!!!!
原作よりちょっと見た目年齢上だなーと思いますが、飄々としていて、たくましく愛らしいガブローシュで良し。
まとめ
トータル的には、イマイチです。
ほぼ人物の感想しか書いてませんが、特に感動もしなかったし、観終わって「もうDVD売ろうかな……」とか思ってしまったんで、私にはかなり微妙だったのだな、と。
原作に忠実なのにね?
多分なんですけど、これも感覚なんですけど、原作をなぞってはいるけど、原作の魂は伝わらないな…と思うドラマでした。
世間的にはかなり高評価なので、興味のある方は観てみてください。
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