すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

本家ウィーン版ミュージカル『I AM FROM AUSTRIA』Blu-ray感想 ー 自分を取り戻して生きていきたい

宝塚で昨年やってましたね。

『I AM FROM AUSTRIA』


ウィーンオリジナルはLukas Perman出演で気にはなってました。Blu-rayが出ることも知ってはいました。
が、そのBlu-rayはリージョンフリーかつ、なんとなんと、日本語字幕入り
というのを発売後に知り、慌てて購入した次第です。

というか凄いな、日本語字幕入りって。 日本に需要あること知ってるんだな。
Mozart!も日本語字幕欲しかった……(笑)


今回もドイツAmazonにお世話になりました。
メモっておくと、
12/18に注文
12/23に発送
1/3に到着
です。
※ちなみに到着予定日は1/10とかでした…。

送料込みで3,340円!安い!最高!






I AM FROM AUSTRIA im Raimund Theater - Offizieller Trailer



スタッフ

作詞作曲: Rainhard Fendrich
脚本: Titus Hoffmann、Christian Struppeck


キャスト

Iréna Flury
Lukas Perman
Elisabeth Engstler
Andreas Steppan
Martin Bermoser
Dolores Schmidinger
Matthias Trattner
Karim Ben Mansur
Martin Berger



感想

※ネタバレあり


宣伝動画など見てても、ブロードウェイミュージカルっぽい雰囲気、ハッピー系で、あまり私の好みではなさそうだなぁと思ってました。(暗いのが好きなもので…)

だからハッキリ言って作品内容への期待はそんなにでした。 ただ諸々のCDのみで好きになったLukasを観てみたかった。

キャストのパフォーマンスへの期待はめっちゃ高かったです。ドイツ語圏ミュージカル俳優への信頼度が高すぎる私。


が!内容も良かった……!
意外と刺さりまくりました。泣いたし。


ストーリーとしては王道です。
一般人と世界的スターの恋。 一言で言うとこれ。

そしてテーマは「故郷」

国としての故郷だけでなく、家族、パートナー、そして自分自身……。あらゆる意味での自分のルーツであり、帰れる場所。

物語としては「ザ・王道!」としか言えない内容に、何故こんなに刺さったのか、私の言葉では上手く言い表せないです。
ただ脚本と演出が上手いんだろうなとしか言えない…不甲斐ない…。
王道の中にスマートに現代的捻りを入れていると言うのか。


女性としての生きにくさ、それに悶えて苦しんで、自分が何者か悩み、そして乗り越えていくパワフルさに惹かれるのは確かです。
近年こういう作品多いですが。

なんて言ったって私、ハッピーで可愛い『Blond』で泣きそうになりましたから。
スターを夢見た。でも選ばれない。ブロンドにして、男に好かれ、選ばれ、スターになった。人形のようにおとなしく、可愛らしく、みんなと同じ格好をして。
この場面のダンサーがみんなリカちゃん人形のようだったのが、なんとまあ皮肉を効かせた演出。
とてもとても可愛い曲、でもこの使われ方がひどく私には切なく、刺さりました。


それからやっぱり『I AM FROM AUSTRIA』。これで泣きました。
ジョージと出会い、自分自身を思い出し、取り戻していったエマ。ここで完全に彼女は「自分自身」に戻った。
この曲はオーストリアでは第二の国歌とまで言われているそうな。素敵な曲です。
自身のルーツに、自分自身に誇りを持てることは、本当に素晴らしいなと思いました。


こういう恋、こういうパートナーと出会えることは羨ましい。
自分を見つけ、失わない。自身を尊重し合える仲。

エマの強さも、ジョージの優しさも大好きだー。


もちろんハッピーエンド。
エマを束縛し、彼女自身から遠ざけていたマネージャーに一喝するところは、やっぱりスカッとしましたね。

でもエマというキャラクターは、決して気の弱い人ではない、バリバリ強いし、マネージャーにだって今までも散々訴えかけてる。なのにそんな人でも、なかなか取り戻せないんだなぁ…。


ちなみに一点だけ気に入らないことがあって、それがジョージと結ばれた後、パパラッチに囲まれた時のエマの態度。
あそこで真先にジョージを疑ったのが謎すぎる。
後の展開に必要だったんだと思いますが、あそこはそういう「物語展開」のための態度に見えて、あの流れは残念でした。
あと、誤解が解けたら謝れよ、と思った…。心狭い私。




演出が色々凄いし、面白い!それこそBlondのシーンで外に出て行くとことか。
舞台セットも凄い!綺麗!
ウィーン版Mozart!のBlu-ray観た時もビックリしたなあ…。
なんたるクオリティ。




さて、期待のパフォーマンス!はやっぱり皆さん良かったです!

主演エマ役のIrénaは、CDだけ聴いてるとそこまで好きでも(嫌いでも)なかったんですが、演技も合わせて見ると、なんとまあチャーミング。応援したくなる!

Lukasはね、凄いですね。
こないだも最新のエリザベートコンサートCD聴いてツイートしてたんですが、声がいつまでも青年ですね!爽やか好青年、演技もめちゃ上手くて本当に見れて良かった。
あとハンサム。知ってたけど。ハンサム(二回言う)。
あああとほんの数年、ウィーンミュージカルにハマるのが早ければ…。

他のキャストも、というか主要キャスト皆さん好きかも。
俳優自身をすごく好きになる、というのはなかったですが、皆さん役にハマりすぎててすんばらしかった! エマだけでなく、どのキャラクターもチャーミングですし!
マネージャーは除く。でもマネージャー役の彼上手いし声も好みでした。


ダンスパフォーマンスはこの作品の見どころのひとつ、というかメインだと思うんですけど、そこまでこういうダンスに興味がないので、そこのところの感動は個人的には薄かったです。
でも凄かったけど!!



曲はRainhard Fendrichの既存の曲を使用、いわゆるジュークボックスミュージカルです。
好みどんぴしゃではないけど、けっこう好き。
ちなみに先にCDで聴いてたんですけど、『Midlife Crisis』だけ知ってました。なんでだろ




期待値低めだった分、めっちゃ感動してしまいました。
本当に観て良かった…。映像出してくれることの有り難さ。
更に日本語字幕を付けてくださったことは感謝し切れません、ありがとうございます。 いっこだけBlu-rayで気になったのは、メニュー画面にチャプターがないってことですけど!ビックリしたよ!(笑)


こんなお手頃価格で手に入る。
興味湧いた方は是非是非御覧になってください!


I am from Austria - Original Cast Album Live

I am from Austria - Original Cast Album Live

  • 発売日: 2017/11/17
  • メディア: MP3 ダウンロード


『氷艶hyoen2019 月光かりの如く』感想

お久しぶりです。

はてなブログに出戻ってきて一発目の記事はこちら。

 

 

フィギュアスケート×源氏物語

『氷艶hyoen2019 月光かりの如く』

 

 

 

 

内容感想

 

BS日テレで元日に放送していたため、録画しておきました。

 

まず内容について、さらっと感想を。

 

私は『源氏物語』の知識は全然ありません。

学生時代に授業でかじったけれど、その微かな記憶さえもが遠いところへ……。

というわけで『源氏物語』とこの作品の具体的な差は分からないです。

 

そして観る前にTwitterで検索していると、「これは源氏物語を借りた別物だから」と皆さん仰っていました。

 

さて、でも例えそのコメントを見ていなくても、「これは源氏物語ではないよな……?」と知識のない私でさえも思うくらいには、源氏物語ではなかったです(笑)

 

もう完全オリジナルでもいいやん、って思って観てました。

はっきり言ってストーリー的には、面白いものでもないです。

ツッコミが捗った……。けど書かない。

 

役者陣の演技と、フィギュアスケーター陣のスケートが良かったので、成り立っていた感じ。

アイスショーと思って観ると大満足ではあります。でもちょっとでも「演劇」と思って観ると、だいぶイマイチかな……。

まあこれを観ようと思う人は、おそらく演劇ファンよりもフィギュアスケートファンの方が多いと思うので、その辺は問題ないでしょうか。

 

私もフィギュアスケートに興味なかったら観なかったと思うし。

 

あ、あと演出や舞台セットが綺麗で、なかなか凄かった。海の場面とか「おおお」ってなった。

お金かかってそう(笑)

 

 

 

 

出演者感想

 

出演者の皆様のおかげで、この作品は観れるものになっていましたありがとうございます。

 

まず役者陣の皆様。

 

私は特に波岡一喜福士誠治が良かった……!

波岡さんの憎々しい、典型的な悪役っぷり最高。

そして反対のポジションである福士さんの凛々しさよ。歌声も私好みでした。

 

あと滑るのすごいな……大変だったろうな……。

 

 

 

 

 

フィギュアスケーター陣の皆様。

 

スケーター陣は、それぞれにばっちり見せ場あり。

 

みんなよくあの衣装で滑れるな……プロすんごいな。

 

スケーター陣はさすが、滑りでの演技が素晴らしい。台詞入るとちょっと違和感はあるけど、それでも普通の演技は素人のはずと思えば上手い。体を使った表現は、皆さん本当にさすがの一言。

これ見るだけで価値があるので、やっぱり企画的には成功かな…(笑)

 

 

キャスト発表時、ランビエールリプニツカヤ出演に「うおおおおお!!!」ってなってました。

ユリア見てるだけで割と泣けてきてました←

二人で滑るシーンめちゃめちゃ良かった〜。

しかし日本のアイスショー兼演劇で、和物で、この二人見れるなんて、なんたる贅沢……というか異空間かな?

キャスティングされた方ありがとう、出演してくれたお二人、ありがとう。

 

ところでランビ演じた朱雀帝が、なんだかんだ一番可哀想だったように思うのですが。

 

 

荒川静香の悪役良かったなぁ、ぶっ飛び気味の陰陽師織田信成も。

しっとり、哀しみをたたえた鈴木明子も。

荒くれ海賊の一員で、真っ直ぐにリーダーを慕うキャラクターは、村上佳菜子にぴったり。

 

 

そして光源氏役の高橋大輔

本編前に放送された、ちょっとしたドキュメントでは、台詞言うのに照れっ照れだった高橋さんですが、本番ではさすが。

もうね、高橋さんの滑りが好きです。でも台詞入るとむしろ私がなんか恥ずかしかったよ!?(笑)

あと歌ねー。声が良い。好き。音外すのは、もうしゃーないかな(笑)

モテる感じとかよりは、優しさ溢れる柔らかい雰囲気の光源氏でした。

 

高橋さんだけの話じゃないけど、氷上の殺陣良いですね!スピード感凄くてカッコいい。

 

 

 

 

はっきり言って、「源氏物語と銘打った意味とは!?」と思ったけど、スケーター陣と役者陣がそれぞれ良くて、皆さん自分の最高のパフォーマンスを見せてくださっていたので、企画としては良かったと思います。

 

もうちょい脚本良ければもっと満足ですが←

 

でもこの企画はどんどんやっていって欲しいですね!

また海外スケーターも呼んでね!

 

 

The ICE 2019 感想 / 生まれて初めて生のフィギュアスケートを見たよ!

 

フィギュアスケートは、ソチ五輪シーズンからのゆるいファンです。

アイスショーも試合も、テレビ観戦のみ。

試合はチケット取るの大変そうだし、アイスショーはめっちゃ値段高いし、というか生って遠いし見えなくてつまんなそう…。と思っていた私。

そんな私が今回なぜ生で観る決意をしたかというと、それはひとえにミハイル・コリャダの出演が決まったからです!!

アイスショー嫌いなコリャダくん。そんな彼が、日本でアイスショーに出てくれるって!?

コリャダくん大好き、更には昌磨ネイサンの2017-2018ワールド表彰台トリオが好きな私、これは行かねばなるまい、と。

ってわけで、行ってきました。(前置き長いな)
大阪公演、7月28日です。

すでに一か月以上経ってしまったので、おぼろげな感想。
少しだけでもメモっときます。

 

THE ICE 2019

 

 

 

 

感想

生のフィギュアスケート凄い!!
確かに遠かったけどそれでも凄い。楽しい。
誰を見てても飽きない。体感時間が一瞬。
テレビで見るより皆の演技がより美しくカッコよく可愛く、魅力がダイレクトに伝わってきて、そしてスポーツとしての迫力と技術を物凄く感じた。皆あまりにも素敵すぎて輝いていた。

 

超一言感想。素人です。

 

 

オープニング

一番の目的のコリャダをガン見してたけど、ラストの決めポーズで一人だけさっさと手を下ろしちゃってた可愛い。

 

 

 

本田紗来

キャッツ。
末恐ろしさが凄い。
兄弟姉妹って下の子が上の子目指して結果超えがちだけど、彼女も例に漏れず姉妹の中で一番凄いことになりそう。すでになってる?

 

 

 

樋渡知樹

ルパン三世からの監獄ロックからのルパン三世で、まず演目が楽しいし曲の繋がりが良い。
面白いしかっこよかった。

 

 

 

ロマン・ポンサール

何これ超かっけー!!!
ひたすらセクシーな、大人の男の魅力全開。

 

 

 

マライア・ベル

可愛い可愛いイメージだったマライアちゃんが、大人の女性に!
色っぽい演技。

 

 

 

本田望結

望結ちゃん好きです。
ダンサブルな演技が最高。彼女の踊り好き。

 

 

 

本田真凜

ラ・ラ・ランドですね似合う!
やっぱりこの子は華がある。オーラがすごい可愛い。

 

 

 

ボーヤン・ジン

テレビで見る演技よりも滑らかな印象でかっこいい好き。

 

 

小松原美里 / 
ティム・コレト

アイスダンスのしっとりさが良いよねー。

 

 

 

ネイサン・チェン&マライア・ベル&ロマン・ポンサール

3人のコラボ。
ネイサンの動きが尋常じゃないカッコよさでネイサンに視線くぎ付けでしたごめんなさい(笑)
知ってたはずなのに驚きのカッコよさ。
高速スピンがまた凄い。好き。

 

 

 

ミハイル・コリャダ

新SPプロ披露。
まだまだ感あってちょっと物足りなかったけど、やっぱりひたすらスケーティングが美しすぎて見惚れる。ただ滑ってるだけで見飽きない。
完成形が楽しみだった。 (先日、このプロは変更したとネットで見た。幻の新プロ…)
ちなみに衣装は昨季の黒白のやつだった。

登場時の歓声がとんでもなかった。
他の人は皆、名前コールされてわーっと拍手って感じだったのに、コリャダの時はその前から怒涛の歓声。みんなまちわびてたんだね。

そして結婚おめでとうございます!!初日は花束もらったらしいね!

 

 

 

ガブリエラ・パパダキス / 
ギヨーム・シズロン

以前はアイスダンスもちょろちょろは見てたんだけど、最近ご無沙汰だった。
から、多分初めて見たこのトップスター。
凄すぎる…!あまりにもとんでもなくて、唖然としてしまった。
二人がまさに一体となって作り上げる、夢のように優美な世界。

 

 

アリーナ・ザギトワ

やっぱり生の方が凄いかも…。
全ての技術の高さをひしひしと感じる。

 

 

 

坂本花織

新FSプロ披露。マトリックス
本当に新プロですか?という異常な完成度の高さ。このまますぐに試合に出られる。
すごく盛り上がったし超カッコよかった。かおちゃんのダイナミックなジャンプがこのプロにぴったり。

 

 

 

紀平梨花

優美でしなやかで柔らかだけど、芯の強さを感じる。

 

 

 

紀平梨花 & ミハイル・コリャダ

何故この二人?という謎コラボ。レア感すごい。
だけど、かっこよかった…!コリャダ最高大好き(笑)

 

 

 

ネイサン・チェン

全てが上手い。
何しててもかっこいいし、すごく人を惹きつける力がある。

 

 

宇野昌磨

こちらも吸引力が半端ない。
会場を飲み込む力。
昌磨も大好きです、生のGreat Spiritsたまらんかった…。

 

 

 

その他もろもろ

コラボ系、女の子たちがキュートすぎる、五銃士最高すぎる。

グランドフィナーレは君の瞳に恋してる。
コリャダがめっちゃこっち側にいたのでガン見。可愛くて可愛くて、まあぶっちゃけ遠くて表情はっきりと分からなかったけど、笑顔弾けてて、撃ち抜かれる。楽しそうだったし、毎年来てください…。

写真撮影の五銃士もこっち向きでラッキー。良いねー全員可愛いねー。

まとめ

楽しすぎて凄すぎて、幸福感ではち切れそうでした。
行って良かったです、本当に。
感極まってちょっと泣きそうでした。
コリャダ来年も来て欲しいけど、来なくても来年も1回は観に行こうかと思いました。

 

ところで私、完全版の放送がよりによって観られないチャンネルで。(追加契約も出来ない)
見たかった…DVDとか出してくれたらいいのに…。

 

終わりっ。

『ロケットマン』感想〜自分を愛する幸せ

 

キングスマン』で一気に人気を集めたタロン・エジャトン主演。
そして私が一番好きな俳優である、ジェイミー・ベルが共演。
で、楽しみにしていた映画『ロケットマン』。

サウンドトラックが発売されて、予習しとくかーくらいの軽い気持ちで聞いたら、もう最高で。
そこから更に楽しみ度が上がって、やっと公開です。

公開初日に観てきました。そして数回リピートしてます。まだ通います。

※最終的に映画館では9回鑑賞しました。

 

 

 

 

スタッフ

監督:デクスター・フレッチャ
製作:マシュー・ボーンデビッド・ファーニッシュアダム・ボーリングデビッド・リード
製作総指揮:エルトン・ジョンクローディア・ボーンブライアン・オリバーティーブ・ハミルトン・ショウマイケル・グレイシー
脚本:リー・ホール

キャスト

タロン・エジャトン
ジェイミー・ベル
リチャード・マッデン
ジェマ・ジョーンズ
ブライス・ダラス・ハワード
ティーブン・グレアム
テイト・ドノバン
チャーリー・ロウ
ティーヴン・マッキントッシュ
トム・ベネット
オフィリア・ラビボンド

解説

グラミー賞を5度受賞したイギリス出身の世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの自伝的映画。並外れた音楽の才能でまたたく間にスターへの階段を駆け上がっていった一方で、様々な困難や苦悩にも満ちたエルトン・ジョンの知られざる半生を、「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」や「ロケット・マン」など数々のヒット曲にのせたミュージカルシーンを交えて描いていく。イギリス郊外の町で両親の愛を得られずに育った少年レジナルド(レジー)・ドワイトは、唯一、音楽の才能には恵まれていた。やがてロックに傾倒し、ミュージシャンを目指すことを決意したレジーは、「エルトン・ジョン」という新たな名前で音楽活動を始める。そして、後に生涯の友となる作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いをきっかけに、成功への道をひた走っていくが……。日本でも社会現象となった大ヒット作「ボヘミアン・ラプソディ」で、降板した監督に代わり映画を完成させたデクスター・フレッチャーがメガホンをとり、「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンが製作を担当。同じく「キングスマン」シリーズでブレイクしたタロン・エガートンがエルトン役を務め、吹き替えなしで歌唱シーンもこなした。エルトン・ジョン本人も製作総指揮に名を連ねている。

映画.com

感想(ネタバレなし)

まずはネタバレなしで感想を。

期待値は高かったが、本当に素晴らしかった!!!
明るくキャッチ―な曲の数々は魅力的で、「ミュージカル映画」にふさわしく、なんとも場面にぴったりな選曲をしてくる。もう「映画のために書いたんじゃないの…?」と思うほどのハマり具合。
映画のために書いたのではないのに、曲が歌詞があまりにも心情を上手く語っていて、震えるほどに良い。これぞミュージカル。
ミュージカルらしい群舞もあり、派手な演出もあれば、しっとりと聞かせる曲も多数。ミュージカル的に歌うだけでなく、BGMとしても多く使われている。それもまたすべて場面にぴったり。すごい。

それに、あまりに映画でエルトンの心情に歌詞がハマりすぎているから、エルトンじゃない人(バーニー)が歌詞を書いてるなんて信じられない気持ちになる。
まさに一心同体。音楽の面では、二人で一つ。

 

語られるエルトン・ジョンの半生は辛い。愛されない、愛が欲しい。孤独が深まるほど、絶望に落ちるほど、彼の衣装、ステージパフォーマンスはどんどんド派手になっていく。その対比があまりに辛くて、胸が締め付けられる。苦しくてたまらない。

 

派手な「ミュージカル」に彩られているけれど、内容自体はとてもシンプル。
愛を求め、自らの身を滅ぼしかけ、そして復活するスター
普遍的な内容で、それゆえにあらすじだけ引っ張ると似たような作品は多々あるけれど、この作品の吸引力は尋常ではなく、もう完全に虜になってしまっている。

 

こんなに辛くて苦しくて胸が痛くなっても、あのラストが観たいから何回も観てしまう。いや、もうあの辛さも含めて全て観たいから。観るほどに全てが愛しくて、大好きで、輝きを放ってる映画だから、もう完全に、私の人生の一本になっている。

 

大スターの半生だけど、極めてパーソナルな物語。
だからこそ、私たち一般人にも、波乱万丈な人生を送ってない人にも、とても響くものがある。
メッセージは皆に通じるもの、「自分を受け入れ愛すること」だから。

頑固で意地っ張りで、虚勢を張るエルトンが悲しくて。「ここで素直になっていれば……」と思うシーンの多いこと。「本当の自分が愛されるわけがない」という思い込み故に自身のことが大嫌いだったけど、本当はそんなことなかったのに。

エルトンは大スターで、私みたいななんの取り柄もない人間とは違うけど。あんな波乱万丈な人生は送らないけど。どんなに孤独で辛くて苦しんでも、どんなに自分が嫌いでも、全てを乗り越え自分を愛せるようになった彼に、とてつもなく勇気を与えられる。人生に希望を与えてくれる。

何より自分を受け入れ愛するという、人によってはすごく簡単で、人によってはとてつもなく難しいけど、一番大切なこと。このストレートなメッセージ性が、胸を撃ち抜く。

 

辛い映画だけど、回を重ねるごとに、幸せなシーンの輝きが尋常ではないほど増して見える。バーニーとの出会いに、ユア・ソング、クロコダイル・ロック。輝ける瞬間が美しいほど、それに比例してこの後の絶望が増すんだけれど。

 

そして、タロンくんの素晴らしさ。
私はエルトンはぼんやりとしか知らないけれど、タロンは見た目も歌声も、エルトンには似ていないと思う。(当然寄せてはいる)
でもこの映画の中に完全にエルトンが生きていて、生々しくその叫びを歌うからこそ、強く心に衝撃を受ける。
演技も歌も、圧巻の一言。

盟友バーニー役のジェイミーは、こんな彼を見たらいくらでも惚れ直さざるをえない素敵さ。
演技力が彼も非常に高いので、あの全てを物語る瞳を見ていたらもうそれだけで泣けて泣けて。
エルトンにとって親友で、盟友で、天使のような存在。
ジェイミーをバーニーに選んでくれてありがとうとしか言えない。
あとファンの私でもあまり思ったことはないんだけど、この作品のジェイミーはとても綺麗。いつも通り可愛くもあるけど、すごく綺麗に撮られてて感激。

 

ちなみに、『リトル・ダンサー』との関連も忘れられない。脚本家が同じで、ジェイミーのデビュー作。当時カンヌでエルトンが涙したという傑作映画。
舞台ミュージカル化していて、作曲はエルトンが担当している。
そういう繋がりを頭に入れておいて鑑賞すると、そこここに『リトル・ダンサー』の影が見えるかも。ビリーはエルトンだし、バーニーでもあると思った。

 

その他キャストも、実在の人物は分からないけれど、とにかく全員が「この役はこの人じゃないと!」というハマり具合。
マッデンのセクシーさにゲスっぷり、ブライス・ダラス・ハワードの「自分が一番」のような母親。

 

あまりに辛くて胸が締め付けられて、初見では体調に異常をきたしたほど心に響いた映画で、哀しいけど、同時にとても愛しい映画。
あのラストは美しく、快感でもある。

また、これは「ファンタジー映画」であるとのこと。
ファンタジーとして演出している描写が、そのように描き出しているからこそ、より一層彼の精神をハッキリ表現できているんだなあと思う。彼の心の内を。

 

ただ「ミュージカルファンタジー」であるということからして、史実と異なる点は多いし、ある程度映画と現実との切り離しは必要。

それでもこの作品を観て、バーニーの存在に、エルトンの現在の幸せに、感謝せずにはいられない。
そしてこの映画を作ってくれたことに。ありがとうございます。

 

 

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以下も良ければどうぞ。言ってることはここと被ってますが。

ロケットマンに関する私のツイートまとめ

感想(ネタバレあり)

ネタバレばんばんあり。鑑賞済みの方向けです。

曲がないシーンもありますが、前後シーン含めて曲ごとに流れに沿って語ります。私が思うことをひたすら書いてるだけ。何も参考にはなりません。

グループセラピーを受けるエルトンが過去の人生を語るので、全編通して場面場面にセラピーでの彼の様子が挟まれる。
最初はド派手な衣装を身に着けていたのが、少しずつそれを脱ぎ捨てる。
話し方も、最初の方は見栄のようなことも口走っていたが、どんどん自分の気持ちに素直になっていく。
このオープニングに繋がるGoodbye Yellow Brick Roadのラストで、ここにやってきたキラキラのエルトンの衣装から、羽や飾りが少しずつ落ちる。
この演出が大好き…。
ここに来ることを自身で決めた時から、ほんの少しずつ彼の装飾は取れ、そして語り、素直になり、向き合ううちにどんどんとレジーに戻っていく。

The Bitch is Back

オープニング、サントラで聞きまくっていた『The Bitch is Back』ではなく、『Goodbye Yellow Brick Road』のメロディで幕を開ける。
輝くタイトルと共にドアを開けて入ってきた、ド派手な衣装のエルトン。
このオープニングが、上記に書いたようにラストのクライマックスに繋がるのが感涙もの。

 

とてもその場にそぐわない格好でやってきたエルトンは自己紹介を始めるが、その時の表情がなんとも。タロンくんがとにかく上手い。皮肉たっぷりで、作り笑顔で、自己嫌悪にあふれている。

 

「どんな少年だった?」の質問から始まる、エルトンの過去への旅。
現れた少年レジーは、エルトンを挑発するような笑みを向けて。エルトンは戸惑いと…どこか恐怖を感じてるような表情。自分を振り返るのが、自分と向き合うのが怖いんだろうか。

歌い踊る群衆と、呆然とたたずむエルトン。華やかでキャッチ―な歌とダンスの中、険しい表情を浮かべて少年期の自分、レジーと対峙している。
エルトンがレジーを見つめる顔は、穏やかではない。険しいもので。苦しいような、複雑なような。彼のレジーを見つめる表情で、これから辛い物語が始まるんだと観客は思う。

 

冷静に考えて、レジー少年は本当に天才だね!!

 

ジーは父の帰りを楽しみにしているのに、父のレジーに対する仕打ちはあまりに酷い。
決して虐待などはしていないけど、徹底的に関わりたくないようだし、まるで他人みたい。
親は子を愛するものだと信じたいけれど、そうではないのが悲しい。

「ハグして」という言葉は、愛情を得たい、確認したいから。「甘えるな」と実の父親に返されるのは、あまりに辛い現実。

エルトンは父との思い出を語りながら、父について「僕をハグ」「幸せな子ども時代だった」と言っていて、エルトンの見栄っ張り、強情さが見える。

 

すでに孤独を抱えたレジー少年が、ベッドでオーケストラに指揮をし、ピアノを弾く場面。
オケの皆はとても穏やかな表情でレジーを見つめていて、これが彼の求めるものだと。
さらに彼の弾く曲は「ロケットマン」。後に重要な場面に使われる、孤独を歌った曲をこの場面に採用しているのが、オケの皆の優しい表情と相まって、すごく心を締め付けてくる。

I Want Love

ジーは才能を見出され、王立音楽院に行くことになる。
少年時代のレジーにとって、重要なのはおばあちゃんの存在。彼女がいなければピアノを習うことも、王立音楽院に行くことも出来なかっただろうし、何よりレジーに唯一の愛情をそそいでくれた。

初めて王立音楽院に足を踏み入れたレジーが「帰りたい」という場面は、『リトル・ダンサー』のビリーと重なる。夢を持ってやってきたけど、自分が今までいた環境とのあまりの違いに怖気づいてしまう心。そこに叱咤激励してくれる肉親の存在。

 

両親は不仲で、ピリピリしているけど、レジーはたぶんそれを自分のせいだと思っている。子どもにこんなことを思わせる親って、なんて罪深いんだろう。
家族皆が「愛が欲しい」と歌い、それぞれに愛を欲しているのに、向いている方向は違って、家族なのに、彼らの間で何もかみ合わない通じ合わない辛さ。

 

母の浮気がばれて、父はついに出ていく。
「僕のせいだ」とレジーは言うし、今までもきっとずっとそう思ってきた。
父は別れの挨拶もなし、悲しんでるレジーのそばに来るのはおばあちゃんだけ。

 

ジーエルビス・プレスリーのレコードに出会うことによって、また人生の転換を果たすが、この辺りのエピソードを見ていると、父と違い、母のレジーに対する愛は決してゼロではないと思う。ゼロでは。
また義理の父となるフレッドも、レジーに良くしてくれているし、むしろ親は離婚、再婚して良かったんじゃないの?とも思うけど、それでも実の父からの愛を得られなかったことは、レジーの心にいつまでも深い傷を残す。

Saturday Night's Alright

母と義理の父、祖母に見守られ、パブで演奏。これがレジーの初舞台?
ここは幸せな家族に見える。

 

ジー少年もめちゃんこ歌上手いんだけど、青年レジーにバトンタッチした途端、タロンくんのあまりの上手さに、何回観ても歌い出しで仰け反る一曲。
ダンスも少し披露してるけど、群衆ほどばっちりは踊らない。踊る群衆の前でぴょこぴょこしてるレジーがかわいい。

大暴れで歌い弾け、レジー少年が歌いだしたパブに、今度は青年レジーが帰っていく。彼は今はブルーソロジーというバンドメンバーに。
そこでバックバンドのスカウトを受け、またレジーの運命は動き出す。

 

バックバンドをしている時に、レジーはこうアドバイスを受ける。
「元の自分を消して、なりたい自分になる」
これが映画の伏線のひとつに。
ジーはこの言葉を聞き、「元の自分を消して、なりたい自分になる」ために、改名を考える。
ジーを消そうとする。

Thank You For All Your Loving

自身の売り込みにきたレジー、彼はここでついにエルトン・ジョンとして歩み出す。

レイ役チャーリー・ロウ、『わたしを離さないで』のキミか!!大きくなったね!!!(笑)

Border Song

今作には数回スローモーションが使われているが、どれも彼の運命的な場面で使用される。で、最初がここ。
レイがエルトンに「この歌詞に曲を」と封筒を手渡す。バーニー・トーピンの書いた歌詞。
BGMで『Border Song』メロディー。2回目以降の鑑賞になるとこれだけで泣く。

 

エルトンとバーニーの出会いこそ奇跡であり運命。
やってきたバーニーにエルトンと名乗り、バーニーに「親しくなったら本名を」と言われた1分後には本名を教えちゃうエルトン。
話している表情からも、彼が瞬時にバーニーに惹かれ、心を許しているのがわかる。嬉しそうで。初恋の瞬間みたい(あながち間違いではない)。
本名を教えると「いいね」と褒めてくれ、皆に馬鹿にされた「ラレード通り」の素晴らしさも分かち合える。きっと感性が近く、同じ気持ちを分かち合える、唯一無二の人との出会い。
一緒に歌って笑いあう二人が可愛い。
あまりに幸せな瞬間で、そこからBorder Songをバックに描かれる二人の語らいのシーンも、幸せすぎて泣いちゃう。

 

「彼は僕の兄弟」
魂の伴侶のような相棒と出会えた。

Rock And Roll Madonna

アメリカンバンドの友人に「ホモセクシュアルだ」とばらされるエルトン可哀想。
アウティングじゃん。この時代は普通なの?
エルトンがゲイだと告げられかなり戸惑ってるらしいバーニーだけど、すぐジョークでその場を和ませる彼が好き。
「本当か?」と聞かれ「わからない」と答えるエルトン、やっぱりバーニーが初恋かな。

 

二人でウキウキアパートへ帰るシーン。踊るバーニー(ジェイミー)がビリー(リトル・ダンサー)に重なってジーン。

 

屋上での二人のシーンはまたロマンチック
「君が僕らの歌を歌うと奇跡が起こる」

バーニーにキスしようとするエルトンだけど、静かに拒絶される。
でも「君を愛してる」とちゃんと伝えてくれる。たとえ愛の意味合いは違っても、バーニーはエルトンを愛しているし、作中でエルトンに「愛してる」と言ってあげるのはただ一人、バーニーだけなんだよな。

 

ガールフレンドにゲイということを話したエルトンは、バーニーと共にアパートを追い出され、エルトンの実家に転がり込む。
ここでピアノを破壊された時のエルトンの超ビックリ顔と、バーニーの「あーあ」みたいな表情がすごく好き(笑)

Your Song

今作中最も感動する場面のひとつ、Your Songの誕生シーン。

観に行く前に特番で一曲丸々観てしまっていたこのシーン。しかも良すぎてリピートが止まらなかったよね、本編観る前から。

 

バーニーが歌詞を渡し、瞬時に曲は出来上がる。

聞こえてきた曲に引き寄せられ、弾き語るエルトンのもとにやってきたバーニー。彼の顔を上げた時の瞳がたまらない。驚いたような、ハッとしたような、心打たれた瞳。
そこからクシャっとなる笑顔もたまらない。

「君のために(this one's for you)」「君の歌だ(this is your song)」の歌詞を歌う時に、バーニーを見つめるエルトンにボロボロ泣き。
更に「君の瞳は誰よりも美しいと(Yours are the sweetest eys I've ever seen)」の歌詞の時の画面がバーニーのアップなのもたまらないし、「なんて素晴らしいんだ 君のいる世界(How wonderful life is you're in the world)」と歌うエルトンが嬉しそうで幸せそうなのもたまらない。

これは、お互いへのラブソングだと思った。
バーニーからエルトンへの、そしてエルトンからバーニーへの。愛の形は違えど。

お互いに「これは君の歌だよ」って言っている。

「How wonderful life is while you're in the world」
二人の関係性を美しく表した場面で、本当に名シーン。

Amoreena

アメリカでの初ライブ。

帽子が良いね、とダグに話しかけたバーニー、「気に入ったか?」と聞かれ「とっても(I do,like it)」って言い方が超絶可愛い。
ダグにジョークで迫られて声が裏返り気味なのも可愛い。

Crocodile Rock

アメリカ上陸のエルトンの初ステージ。

2個目のスローモーション。またエルトンの運命が変わるとき。
初ステージに上がる瞬間。

最高に楽しいし、皆が宙に浮かぶ演出が大好き。
あの場の皆が、地面から浮かび上がるほどに高揚していた。会場の皆を熱狂の渦へ。快感の高みへ。

ノリノリのバーニーとレイが大層可愛すぎる。

そしてジョン・リードの初登場。

Tiny Dancer

初ステージの成功から、パーティーへ。

親しくなった女性と立ち去ろうとするバーニー、複雑な表情を浮かべるエルトンに「いいだろ?」と聞いてるのがなんとも。
去る前に二人で酒を飲む。バーニーが彼女を見つめている時は仏頂面で、自分に視線が向くとすぐに作り笑いを浮かべる。素直じゃないのはこの時からなんだな。ゲイではない片思いの相手を引き留めることはできない。自分の本心を押し隠して、バーニーを見送る。

バーニーが去る直前にエルトンの頬にキスするのは、これまた『リトル・ダンサー』のビリーが、ゲイの友人マイケルに別れのキスをするシーンにダブる。

 

Tiny Dancerの場面は、初鑑賞時に衝撃すぎて卒倒しそうになった場面。

この曲の場面は、あまりに切なくて身がちぎれそうなほど。
私の解釈では、このシーンではエルトンがバーニーを思って歌っているように見えるから。歌詞で「She」と言ってるにも関わらず。
彼女と去っていくバーニーを、延々と追い続けるエルトンの視線。

そして、バーニー役がジェイミー・ベルであるということで、即連想してしまう「ダンサー=ジェイミー=バーニー」の図式。
エルトンが、決して叶わない恋を、バーニーを思って歌っている…。

最初のサビの「Hold me closer, tiny dancer」(抱きしめて可愛いダンサー)」の部分を歌う時なんて、スクリーンは(彼女を見つめる)バーニーのドアップですよ。
彼女を見つめるバーニー、を見つめるエルトン。

でもこれは、ジェイミーというキャスティングだからこそ沸き上がった感情なのだろうか。
つまりジェイミーとリトル・ダンサーが結びついている人は、咄嗟に私と同じ解釈に脳が働くと思うけど、このことを知らない人には、この図式は成り立たないかと?
やっぱりバーニーが一緒にいる彼女、ヘザーがtiny dancerだと思うのかしら?

 

史実としては、この曲はバーニーの最初の妻マキシンについて歌った曲。

この映画の中で曲の「彼女」のことを、バーニーと一緒にいるヘザーと解釈して、「ヘザーを思ってバーニーが書いた詩を、バーニーに恋してるエルトンが歌う」という風に考えても、どっちにしても辛すぎますが。

 

どちらにしてもバーニーを思うエルトン。そして孤独なエルトン。という図にはなる。辛い。

 

いやでも私はやはりこの映画においては、「tiny dancer」=「バーニー・トーピンを推したい。

 

しかし、ジェイミーがキャスティングされた段階ですでに脚本も使う曲も決まっていただろうから、ジェイミーが「リトル・ダンサー」だったからこの曲が採用されたわけじゃないだろう、と思う。分からないけど。
そこからジェイミーがバーニー役に決まって、その結果この場面からこういう印象を受けて、となったのは偶然の産物なのか、と思うと、個人的に奇跡的な感じを受ける。

しかしパンフを読んだら、「ジョン・リードとの出会いの場面の重要な曲」として制作側は作ってるらしき記述があって、「そうじゃないだろー!!!」と思いました私。

でもオフィシャルブックの方では、この曲についての記載で、「エルトンがバーニーが自分だけのものではないこと(中略)を身に染みて感じるんだ」と書かれており、全力で頷いた。

ちなみに何回目かに、映画に詳しくない友人を引っ張っていって鑑賞した。もちろんジェイミーのことも『リトル・ダンサー』も知らない彼女。
その際この曲のことを(私が語りつつ)聞いてみたんだけど、何も知らなくても「この曲はバーニーのことを歌ってるように見えた」とのこと。「彼女」とか「ダンサー」は比喩的な表現で。
そうか、全然知らなくても、脳内で「ジェイミー=ダンサー」と結びついてなくても、そういう風に見える(人もいる)のか…!という個人的に嬉しい発見。(ちなみにこの友人は映画自体は好みじゃなかったみたいで残念(笑)仕方ない)

Take Me To The Pilot

ジョン・リードとの対面を果たすエルトン。
この場面は制作側やマッデンのインタビューを読むと、ちゃんと(?)興味を持ってというか恋をしてというか、そんな気持ちがあって近づいてきた、という意図のようだけど、私は正直Tiny Dancerでの私自身の感情があるせいか、リードはこの時から計算でエルトンに近づいているのでは?という考えになってしまった。
バーニーに失恋したところを抜け目なく狙ってきた。そんな感じ。

 

この曲はYour SongのB面らしい。
そんな曲をリードとのベッドシーンに使うとは…鬼畜…。バーニーとの対比かな。

この曲のおかげで気まずくないベッドシーンって感じ。ロマンチックな曲はこの二人には似合わない。

この男性同士のベッドシーン、いろいろ話題になってたからどんなものかと思ったけど、男女間ならあらゆるメジャー映画で普通にあるレベル。
なのになんやかんやと言われている事実が、このエルトンの時代に比べたらまだマシになったとは言え、まだまだ同性愛者の生きづらさを感じさせた。

 

「また会える?」というエルトンに対して「それより思う存分成功を楽しめ」と返すのも、私的にはエルトンを気遣ってというより、特にエルトンに感情がないって感じがして、イラッ。

Don't Go Breaking My Heart

サントラで聞いてたよりもタロンくんの声がすごく甘く聞こえてびっくりした。惚れる。

knockでノックの振りをするのが可愛すぎてきゅんとするシーン。

そしてやってきたリードを見てしれっとした顔をしてるけどウキウキを隠しきれていないのが可愛い。

 

尚、このシーンで歌われるときは、リードもやってくるし、「Don't go breaking my heart」の部分が心に残って、「リードが…」という気持ちになるんだけど、エンドクレジットで流れる時は違う部分が心に残る。
この物語を観終えた時に聴くこの曲は、掛け合いのキキの「I couldn’t if I tried」と「You take the weight off of me」の部分の方が優しく響いて、嬉しい気持ちになるんだ。

Honky Cat

リードとの再会、激しいキスシーン。

この曲もまさにミュージカル!という場面の一つで、ここのマッデンはかなり男前度高い。
レストランのシーンとかかっこよすぎる。

贅を尽くし、華やかな世界で生きるようになり、ある種の喜びに目覚めたエルトンだけど、この場面はリードがエルトンの望みを引き出したようでいて、「リードの思うロックスターの姿」をすっと押し付けたようにも感じる。
華やかで一種の幸せはあるけど、破滅への第一歩のような印象も受ける。

「田舎暮らしとはオサラバさ」

 

Pinball Wizard

レイたちとの別れを経て、両親と対峙する。

父との対面シーンは、今作で最も辛い場面の一つ。
玄関先でお互い戸惑う。ハグは出来なくても、握手もしない。
渡したプレゼントに礼も言わない。
二度目の結婚で生まれた二人の息子たちは、父にぴったりくっついて、肩を抱かれて。自分には決して許されなかった、与えられなかった愛情を目の前で見せつけられる、こんな残酷なことがあろうか。
息子たちの、特に下の子の、エルトンを品定めするような、なめるような目つきが嫌だ…。
サインを書くエルトンを父がじっと見つめているが、一体彼は何を思っていたのだろう。
車に乗るエルトンを見送り、息子を抱き上げる父は、エルトンにどんな残酷な光景を見せているのかわかっていたのだろうか。

 

母には電話でゲイをカミングアウト。
エルトンが電話した時、母が見ていたテレビにはリベラ―チェ。
ゲイと告げた母は「知っていた」し「気にしない」と答えるが、それに続く言葉が「孤独な人生を選んだと自覚して」「誰からも愛されない」というのは、一体。この母は、エルトンに対する愛はゼロじゃないと思う、と述べたけど、でも彼女はわざわざ息子を傷つける。なんでこんなこと言うんだろう。

この母親の一言は、エルトンにとって完璧な「呪い」だ。それまでもゲイの自分に、親に愛されてると思えない自分に負い目があったかもしれない。それがこの一言で決定的になった。「ゲイであること」によって、自分は「誰からも愛されない」。実際はそんなことはないのに、母親によって、そう思い込まされてしまった。残酷だ。これが毒親か……息子の自己肯定感を奪っていく。

 

「愛には出会えない。だから求めない」 こんなことを思うようになってしまったのは、確実に母親のせいだ。

セラピーでのエルトンは、もう派手な衣装を脱ぎ捨て、バスローブ一枚の姿。自分の感情に正直な彼になってきている。

 

ステージ前、控室で鏡を見ながら薄くなってきた髪の毛を気にする。
ドラッグを吸い、アルコールを飲み、まさに死んだ魚のような目で鏡の中の自身を見つめる。
眼鏡をかけ、作り笑いの練習。
胸が張り裂けそうになる場面。

彼にとって眼鏡と衣装は鎧だ。

 

ステージ前に心配して話しかけるバーニー。
「こんな派手な衣装なしで歌いたくないか?」「本当の君らしく」「我慢するな」
バーニーはいつも、エルトンを引き戻そうとする。バーニーはエルトンと違って、レジーも愛しているしレジーの才能を信じているから、こんな言葉をかけてあげられる。

でもエルトン自身は違う。
「客が観に来ているのはレジナルトじゃない、エルトン・ジョンだ」と。
あの時「元の自分を消し」たエルトン。彼は自分を愛せないし、自信がないし、エルトンとして派手にふるまっていないと、誰からも必要とされないんだと思い込んでいる。
だからバーニーの言葉に素直に耳を傾けられない。

ただ、ここはまだエルトンには少し素直さが残ってはいる。
当たり散らしたバーニーに、「ごめん」と謝るから。「わかってる」とだけバーニーは応える。
この不安定な、激情的なやり取りを繰り広げ、エルトンはそのままコミカルな動きでステージに立ち、満面の笑みを浮かべる。
このステージに出る瞬間で号泣する私。

Pinball Wizardのあまりに激しい歌いっぷりに恐怖さえ覚える。
ぐるぐる回る世界。彼はすでに限界まできているんだ。

Rocket Man

リードとの決定的な別れ。

自宅でのパーティーだが、エルトンは一人きり。

やってきたセレブ風なにこにこのバーニーめっちゃ可愛い!!(笑)
そんな晴れやかなにこにこ笑顔でやってきて、エルトンの様子を見ると女性陣を追い出し、自身も複雑そうな顔で部屋を去っていく。エルトンが他人を拒絶しているから。

タイトルでもあるRockemanは、ここでのエルトンの自殺未遂で歌われる。
プールに沈んだ彼は、プールの底でまたレジー少年を見つける。曲の出だしを弾き語りで歌うレジー少年。
エルトンを見つめる顔は悲しそう。
エルトンが歌を引き継ぎ、彼がこの生活から抜け出したいという思いが切に伝わる。


助けられて救急車に乗せられるエルトンの目に映る、怒鳴り散らすリード、焦って心配そうな母、リードを押しのけ誰よりも気遣ってる様子のバーニー。

救急車からステージへ、歌いながら衣装を着せられ、そのままステージに立つこの演出がまた逸品。
あんなに苦しそうなのに、ステージに出た瞬間すごく笑顔。
自殺未遂から、超満員の観客の前で、孤独を歌う。
華やかなステージが、大勢の観客が、より彼の孤独を浮き上がらせているように見える場面。

エルトンはロケットとなり、夜空で弾けて花火となる。

 

プライベートジェットに乗ったエルトンは、バーニーに「少し休みたいんだ」と言われる。
「二人で一緒に消えないか」農場で、あの頃のように、やり直そう。
プロポーズかな、っていうようなロマンチックな誘い。BGMは、Goodbye Yellow Brick Road
ここでエルトンがうんと答えていたら…。あんな意地を張ったことを言わずに、もっと素直になれていたら。
バーニーは食い下がらない。ただただ悲しそうな顔でエルトンを見つめている。
仕事上での決裂。

Bennie And The Jets

ステージでの歌から始まるが、そのままクラブでのシーンに移り、かなりの倒錯感あふれる場面。虚構と破滅と贅沢と、あらゆる欲望と、すべてのピークのようなシーン。
人間がボロボロになっている姿。
そんな中思い出す、数々の言われたこと、されたこと。

 

リードとの決定的な別れの場面は、エルトンが「君が金に困っても?」というセリフが印象的。印籠を突き付けるように言うから。切り札のように。

Don't Let The Sun Go Down On Me

レネーテの、「自分をわかってくれる」感が素晴らしい。
エルトンがゲイじゃなければ、きっと彼女と幸せになれたんだろうけど、ゲイだからそうはなれなかった。
離婚後も友人として上手くやれたりしなかったんだろうか?現実でどうだったのか気になる。

 

ここで呆然と悲しみに暮れ、疲れ果てて歌うエルトンに、応えるレネーテの姿が美しく、本当に心優しい、エルトンのことをわかってあげられる人なんだな、と思える。

結婚式では戸惑った顔のバーニーが印象的。

Sorry Seems To Be The Hardest Word

レネーテとの別れの朝、BGMで流れているのもこのSorry Seems To Be The Hardest Word。
でもレネーテには「すまない」と告げることができる。
彼女もバーニーと同じ返事をくれる。ただ一言、「わかってる」と。

 

母と義理の父との会食。
母の言葉は息子を傷つける。ここまで観てきて決して愛情がゼロには見えないのに、彼女はすごくエルトンを傷つける言葉が多い。もちろんわかってて傷つけてるんだろうし、エルトンに愛もあるけど同時に憎しみもあるんだろう。
エルトンの方も母を挑発してしまっているし。
哀しい母子関係。

Goodbye Yellow Brick Road

ジェイミーの歌を聴く日が来るなんて…!という本編と関係ない気持ちが抜けない(笑)

 

仕事上では離れていたのに一緒にここで食事をしているのは、エルトンのことが心配で様子を見に来たんだろう。

リードのことを尋ねられ、「彼は僕を大嫌いだ」と言うエルトンに対し、「誰も嫌ってない」とバーニー。
オフィシャルブックではこの場面のページ(曲としてはSorry~の方)にこう書かれている。「誰もおまえを嫌ってなんかいないよ…」「…おまえ以外は」

エルトンのことを心配し、気遣い続けたバーニーが、いくら言っても意地を張り続けるエルトンについにさじを投げる。
エルトンは「一番大事な時に去った」「一番君を必要な時に」と言っているが、言葉としては素直でも、彼のこの時の態度は酷いもので。
バーニーがエルトンに決別を突き付けるのに歌うGoodbye Yellow Brick Road。オープニングでも流れ、更にバーニーとの仕事上での別れのシーンでも使われたこの曲。
辛そうに、悲しそうに歌いながら去っていくバーニー、彼が本気で去ろうとしてることに気づいてエルトンは慌てて追う。「まただ!」「辛い時に僕を置いていく!」と叫ぶ。後に一人、自身の振る舞いを後悔するエルトン。「僕は馬鹿だ」

この別れが更にエルトンをどん底に追いやり、彼はボロボロの中後悔にさいなまれる。
「バーニーが僕を裏切った」と。
ただ結果的にバーニーに決別されたことが、エルトンに自身の立ち直りを決意させる。

 

オープニングから、ここにきてこの曲が繋がる。この演出が好きすぎるし、号泣する。
羽が落ち、衣装ははがれていく。

タイトルにぴったりなのはRocketmanだが、今作で一番重要な使われ方をしているのはこの曲のように思う。

I'm Still Stannding

そしてセラピーの場面に繋がる。
すっかりジャージ姿で素になったエルトン。

「自分が嫌いだった」「愛されないと」

現れる、エルトンにとって重要な、重要だった人たち。
切っても切り離せない両親、愛してくれた祖母、ボロボロにされたリード、そしてバーニー。
ここでの会話はエルトンの心の中での対話だが、現実の彼らはこの通りの言葉を彼にかけるだろう。

[追記2020.1](両親に「僕を侮辱するな」とやっと言えた。実際、両親にこの言葉をどれだけ言いたかっただろうか。この一言、エルトンのやっと手にした自己肯定を強く感じさせて、泣いてしまう。やっとここまできたんだ…。そしてそれにバーニーが「よく言った」と認めてくれるのも…)

バーニーが現れると、エルトンは泣きそうになりながら「素直になれず…」と言うが、ここは原語だと「I never told you how much I need you」と言っていて(多分)、それがまた刺さる。どんなに君が必要だったか。
バーニーはまた「愛してる」と、そして「自分が何者かを忘れるな」と言ってくれる。まさにエルトンにとっての天使。
このバーニーの慈しみ溢れる言葉が、映画の最初の方とつながる。「元の自分を消して」という言葉。
ジー少年を消してきた彼が、自分が何者かを理解する。

彼はレジナルト・ドワイトであり、エルトン・ジョンであると。

 

彼らが消え去り、そこに現れたのはレジー少年。 

「ハグして」
決して応えられることのなかったこの要求を受けて、エルトンが抱きしめる。自身を。

素直になることは、結局自分自身を救うことになる。

愛を得られなかったエルトンが、自らを愛せるようになる。肯定できるようになる。
これ以上にこの作品にふさわしく、美しいラストがあるだろうか。

彼が求め続けた愛は、自分自身にまず与えることから始まる。

 

施設で静かに治療しているエルトンの元、バーニーが訪ねてくる。
いつものあの優しい笑みを浮かべて。

シラフの時に無能だったら、と不安に思うエルトンに、バーニーは笑い、「君が怖いのは感情が戻ることだ」「僕にウソはつけない」
いつだって、出会った時から、バーニーはエルトンの一番の理解者だった。
「兄弟だ」と言って去っていくけれど、兄弟以上の魂を分かつ者同士という感じ。

引き留めるエルトンに「自分で立ち直れ」と言い「これに曲をつけてくれ」と渡すが、これも、エルトンが完全に立ち直るにはこれが一番有効だと分かっているんだろう。
自分がずっとそばにいて励ますことではない。
シラフでも、無能じゃないと。レジーは素晴らしい才能を持っているんだと、自身に気づかせること。これがエルトンの復活に一番必要なものだ。

 

そして「魂の伴侶」のようなバーニーから渡された、その曲。I'm Still Standing。

恐る恐るピアノに触れ、弾き出すと、彼に戻る笑みと自信。嬉しそうな表情、力強い音楽。

完全なるエルトンの復活を表す一曲として、この曲を映画のラストに持ってきたのは完璧としか言えないし、本当に映画のために作られたのかと勘違いするような、作品にぴったりの素晴らしさ。

涙が止まらない。

最初にも書いたけど、この曲に限らないが、本当にバーニーが歌詞を書いてるなんて信じられない。映画を見ているとあまりにもエルトンの心情にリンクしすぎていて。

 

エルトン・ジョン本人のMVを模しているが、完コピ具合が凄い。

 

ラストのクレジットで、エルトン本人があれから幸せなことが本当に嬉しい。
素敵な伴侶、子供達も得て、どうかこのまま元気に長生きしてください。

 

ただひとつ、ちょっとだけ残念なのは、夫についての文章で「ついに本当の愛を知る」と出たこと。
リードの愛は本物ではなかったが、今なお続くバーニーとの友情は本物の愛では…?と思う、この映画を観ると。そこだけ残念かな。

もちろん「恋愛的な」パートナーをエルトンは欲していて、そんな人と出会えたことは素晴らしいこと。エルトンが自分を肯定し、愛した結果。生涯のパートナーにより、「本当の」愛を知った。
だけど、「本当の愛」もいくつもあるんだよね、とバーニーに思いを馳せながら心の中で思う。

(I'm Gonna)Love Me Again

エンドクレジットはエルトン本人とタロンくんでデュエットの新曲。作詞はもちろんバーニー。

この曲は英語苦手な私にとっては、日本語字幕を出してほしかった…とつくづく思う。
でもタイトルだけでも泣いちゃうよね。「もう一度自分を好きになる」

I'm Still Standingで映画を締めくくり、この新曲を流す、もう本当に完璧。

終わり

期待はしていたけど、本当に大好きな、人生の一本になった映画です。

エルトンの人生を語りつつ、すべての人に共通の普遍的なメッセージ。自分を愛すること。

観ていて辛さで胸が苦しくなるけど、その分ラストで救われる。何回でも観たくなる。

タロンくんの演技歌合わせてトータルのパフォーマンスのあまりの素晴らしさと、大好きなジェイミーの存在の尊さに、リピート鑑賞に拍車がかかってます。

 

多くの人に観て欲しい。是非。

 

ミュージカル『レ・ミゼラブル』2019年 感想

 

東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』。今年も大阪公演に行ってきました。
2015年に初観劇、そして2017年も観て、今年は最多5回の観劇。
プリンシパルキャストはほぼコンプリート出来ました。

ほぼキャスト感想です。メモ書き。

私は観劇したのは、7/3、7/10マチソワ、7/15マチソワです。

 

『レ・ミゼラブル』梅田芸術劇場

スタッフ

作:アラン・ブーブリルクロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ヴィクトル・ユゴー
作詞:ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
演出:ローレンス・コナージェームズ・パウエル
翻訳:酒井 洋子
訳詞:岩谷 時子
プロデューサー:田口 豪孝坂本 義和
製作:東宝

感想メモ

内容は一緒なので、改めて内容の感想はいいかなと思ったのですが、いくつか個人的メモ。

コゼットとバルジャンの初対面のシーン。この場面を見ると、絶対原作を読んだときに大泣きしたことを思い出す。
急に現れた得体のしれない男を全く怖がりもしなかったコゼット。「この人は自分を救ってくれる」と本能で分かったのだろうか。初対面で即通じ合った心に、号泣。
ミュージカルではコゼットが最初びっくりしてますが、原作では驚いてさえもいなかったような?

「コゼット思い出す〜」の場面、5回中2回が完璧見切れでした、悲しい。エポニーヌ見たかった。この場面好きだし。

前から思ってましたけど、ミュージカルでのグランテールとガブローシュの仲良しさなんなんですか!?最高。二人見てるだけでも泣く。
テーブルの上に上がり、ラマルクの死を伝えると、アンジョルラスに抱き上げられて机から下ろされるガブローシュ(ここ何回見てもなんか微笑ましくて笑いそうになる)、そのあと真っ直ぐグランテールの元へ。
そして熱狂してアンジョルラスのもとに集まる学生たちからガブローシュを引き離すグランテール。
Drink With Meで泣いてるグランテールに走り寄って抱きつくガブローシュ。
ガブローシュの死でのグランテール…。
二人のキャラクターが好きなので追いがちですが、さんざん泣かされますね。

A Heart Full of Loveも泣きどころ。
恋に無邪気なマリウスと、孤独なエポニーヌ。
そもそもコゼットの場所をエポニーヌが教えて、それで彼女はその場に残ろうとするけど、マリウスが呼ぶじゃないですか。「エポニーヌ!」って。あそこの感情ってなんなんですかね。ただ友人に着いてきてほしいってことなのだろうか。エポニーヌは呼ばれてマリウスの手を引いて走りますが、なんとも残酷な場面だよなぁ。

エポニーヌとコゼットの再会がまた胸が痛いのです。逃げる時、門越しに見つめ合う2人。今は愛され、輝きの中にいるコゼットと、地の底でドロドロになって生きるエポニーヌ。対比が苦しい。

最初観た時、Empty Chairs at Empty Tablesでガブローシュがいなくて驚き。そしてラストもいない、というかカテコもいない!そして気が付く、ソワレ故の子役の時間問題ですね……。仕方ないとは言え、彼がEmpty〜とラストシーンにいないのは悲しい。

これまで気づいてなかったんですが、エポニーヌ「警察だわあいつはジャベール」の時に、ガブローシュがそばにいるんですね。というか、ジャベールがきたぞ!とエポニーヌに教えてますね。姉弟の絡みがあって私は嬉しい。

エポニーヌが死んだ時、ガブローシュがショックを受けてますよね。
観客は姉弟ってことを知らなくても、ボロボロになって暮らすもの同士で親交があったのだろうと思うことは出来ますが、やっぱり姉弟だと思うと……。
お姉ちゃんの死を悲しむ弟。駆け寄ろうとして、グランテールに止められて。その腕の中で力をなくして。
エポニーヌが死に、運ばれていく死体を見送り、落ちていた彼女の帽子を……姉が愛した男性に手渡す。

ずっと最後にバルジャンが「私は父じゃない」って言うの謎でした。コゼット引き取った時にはコゼットは物心ついてるし、知らないおじさんが連れに来たって覚えてるだろ!って。
でもあれってつまり、引き取る時に「コゼット私の子だ」というのを、本当の(血の繋がった)父が連れに来てくれた、という意味に思ってた(バルジャンもそう思わせるように言った?)から、ラストの告白になるのか。という今更な気づき。原作どうだっけ……。

7/15のマチネ、二幕すごい泣いた。そこまでの3回はそこそこだったんだけど。このキャストやばい。

キャスト別感想

今回はたくさんのキャストが観られたので、キャスト別に感想メモ。

キャラクターによって文章量に歴然とした差が(笑)

ジャン・バルジャン

福井晶一

美声。清廉な、美しく真っ直ぐな歌声。
このバルジャンは、いかにも真っ直ぐで誠実な人柄感がある。
序章の荒々しさも良いし、生まれ変わってからの清純さが素敵。

7/10マチネでは「24653」下げてきて、調子悪い?と。とてもそうは思えない声してましたが。

吉原光夫

バルジャンとしては一番好き。
何より冒頭の野性味、野良犬感。傷つけられボロボロで、人を信用出来ないバルジャン……すごく良い。イメージぴったり。決して元々美しい善人ではなかった感が。
そこから生まれ変わっての市長の凛とした佇まいに、失われない強さが最高。

リトルコゼットに対する一際優しい歌声にもグッとくる。

他のバルジャンもそうかもですが、光夫バルジャンの時に気がついた。エポニーヌにめっちゃ優しい。(手紙届けにきたとこ)

佐藤隆紀

とにかく美しい歌声。
が、荒々しく高音な部分「ジャン・バルジャンは死んで生まれ変わるのだ」とかが弱いかな。苦手音域っぽい。

シュガーバルジャンは「24653」が低い。これは常でしょうか?ここは上げて欲しい……惜しすぎる。

光夫バルジャンとは対照的に、元々「良い人」感が強いバルジャン。

ジャベール

川口竜也

空気を貫く真っ直ぐな美声。まさに自分の正義を貫くジャベール。
美声で真っ直ぐだけど、頑固そうな。

バルジャンとジャベールのキャストは、人によっては役を交換してもできるけど、やっぱりそれぞれ選ばれてる役の違いを感じるなーと川口さん聞いてて思った。
一番正統派かな。
ひたすら真っ直ぐな、清廉なジャベール。

下水道から抜けたバルジャン達の元にきたとき、歌声はすごくはっきりしてて荒々しいのに、もう顔がほぼ泣いてて辛そうで。この表情見て「うわっ(涙)」ってなった。
今回の自殺でもちょっと泣いたけど、それよりこのシーンのこの表情が刺さった。

上原理生

川口さんの真っ直ぐ清廉潔白さに比べて、悪役感が強めかな、と思う。
ややねちっこい。
3階最後列で体にビリビリ響き渡るStarsの凄まじさ。なんて声だー!

伊礼彼方

ジャージーボーイズの時も思ったが、歳の取り方がやたら上手い。Look Down後の再登場でビックリした。見た目も老けさせてるけど、声の感じが違う。

最初の方は真っ直ぐ凛々しく美しい声だが、伊礼ジャベールは他の二人に比べ、なんとなく抜けてるというか、アホっぽくも見えた。若いせいなのか?

素晴らしい声。というかジャベールが似合う。

自殺で泣いた。伊礼ジャベール、なんかもう、ボロボロで。ぐしゃぐしゃで。どうしたらいいのか本当に混乱してる感じ。私ジャベールの自殺で泣いたの初めてかも。

一瞬このジャベール怖いって思う雰囲気があった。どこのシーンかは忘れた。

ファンティー

知念里奈

この人は本当に、声が苦手なんですよ私。はっきり言って嫌いなタイプ。
強いなぁ〜……。
死ななそうって思った。演技は割と良いと思うけど、いかんせん声が趣味じゃ無さすぎて辛い。

濱田めぐみ

期待は高かったがとにかく上手い。
歌はもちろん演技も上手い。歌は3人の中でダントツ上手い。
死の場面のボロボロさが良い。目開けたまま息を引き取る。他のファンティーヌは違ったよね?

二宮愛

可憐さがある。
これと言って私の好みではないけど、ファンティーヌとしては一番好みかもしれない。

しかし3人とも、I Dreamed a Dreamはあんま泣けないな……けっこうみんな強い。
「男に捨てられても生きていけるよね?」感がある。二宮ファンティーヌが一番それが薄いかな。
そして死の場面がみんな良い。

エポニーヌ

昆夏美

完璧なエポニーヌ。歌も演技も素晴らしい、そして大好き。
強くたくましく、やさぐれていて、でも一途で真っ直ぐなエポニーヌ。
なんて声。やや低音の部分の太さとかすごく好き。色鮮やかな歌声なの。

「その髪好きだわ」でマリウスの頭両手でくしゃくしゃってやるの好きー!

One Day Moreでエポニーヌ見ながら目が潤んだ、初めて。

昆ちゃんで、今季初めてOn My Ownで泣いた。

最後の「安らかだわいつも雨は」のあたりの、死に行くゆったりした歌い方で涙腺崩壊です。

自分がマリウスに愛されることはないとはっきり分かっていて、それでもマリウスを愛し抜く強い女性。

カテコの時小野田くんと仲良しで仲良しで仲良しで、とても可愛かったです。手繋いでだか肩組んでだか忘れたけど、とにかくわちゃわちゃと一緒にはけてくの。知ってたけど、目の当たりにするとまじで仲良し!

唯月ふうか

エポニーヌにふうかちゃんは可愛すぎだろと思ってたら、なんのその、すっごく良いエポニーヌ!
とは言えやっぱり可愛さがかなり強めではある。
声も可愛いのに、芯のある強さ。エポニーヌにはそれがないとね。

撃たれたあと、「どうした君何を」に振り向いて、マリウスと目が合うとニコッとしたエポに涙が。
ふうかちゃんエポニーヌは一番いじらしい。

あと、一番希望を感じさせる。もしかしたらマリウスが自分を好きになってくれるんじゃないかっていう希望。他の2人にはない。切ない。

One Day More「ふたつにひとつ」と歌うマリウスをじっと見つめ、「行かせるものか」とばかりに学生たちの元に連れてくエポニーヌが悲しい。

屋比久知奈

歌唱披露を聞いて大丈夫か?と思ってたが、始まると評判良いので割と楽しみにしてた屋比久ちゃん。
第一声はやっぱり苦手な声かもと思ったけど、聴いてたらいやそんなこと!声も割と好みです。
演技が良い。

可愛さよりやさぐれ感が強く、それが原作の雰囲気に近くて好き。荒っぽくやさぐれてて、でも純で一生懸命。

屋比久ちゃんは他の2人に比べて、少女っぽいというか子どもっぽい。それも悪くない。見たのが2回とも海宝くんとのペアだったせいか、妹感が強く出てた。マリウスに相手にされてないな……って。
カテコのおじぎが深すぎてかわいい。

エポニーヌは3人とも、カテコの時に長すぎるコートの裾を持って、テテテーとはけていくのがめちゃめちゃ可愛い。

マリウス

海宝直人

相変わらずの坊ちゃん感と、とてつもない歌の上手さ。

キラキラした目でお金差し出さないで!(腹立つ)
「なにくれる?」って言われてお金差出すのって、無意識にエポニーヌを下に見ているよね。まあマリウスはお坊ちゃんで、エポニーヌは親はいても浮浪児みたいなもんだから、確実にエポニーヌはお金に困ってはいるんだけど。

弾を拾いに行こうとして止められた時の、「ここにいても同じだ」の捨て鉢な言い方が好き。

今回初めて海宝くん以外のマリウスを見て、比べて初めて気づく、海宝マリウスの大人っぽさというか、やや硬質な感じ。優しいのに、冷たさも感じるような。

内藤大希

初めて見た海宝くん以外のマリウス。(東宝で)

何このマリウス!好き!!!
純というか、懸命な感じ。
このマリウスは本気でエポニーヌの恋心に気づいてなさそう。
ほんとバカっぽい、でもそれが好き。

「彼女と行くか仲間と行くか ふたつにひとつ」のすごい悩みっぷりが良い。
ひたすら真っ直ぐで、全力で、一所懸命なマリウス。かわいい。
「まさかあの日ジャン・バルジャンに救われた」のとこの、ショック受けて後悔しまくってる姿。

全てが全力という感じで、大層好印象。

コゼット

生田絵梨花

やはりあまり声は好きじゃない。
この子の声は細いのにどこか中性的というか少年ぽいというか、硬質な感じがあって、そこが不思議。そういうとこはけっこう好きなポイントのようで、でも平たい感じがイマイチかな……。

でもとにかく可愛い。見てて癒される。キラキラしたオーラが、愛されるコゼットらしくて良い。

小南満佑子

美声ソプラノ。
真っ直ぐ美しい歌声で好き。

熊谷彩春

楽しみにしてた、噂の彩春コゼット!
すごく良い。上品で凛としていて、コゼットのイメージにピッタリ!

アンジョルラス

相葉裕樹

キラキラ感がある、ギラギラ感もある。
声のハリと艶やかさが凄い。カリスマ性があって、歌声にも輝き溢れる。

若くて親近感が沸くアンジョルラス。上山アンジョはもう少し近寄り難い感じだったかな?
いつか相葉ジャベールと海宝バルジャン観たいなって。

ガブローシュ死んだあとの戦いで歌うシーン、やぶれかぶれな感じ。悲壮感、もうどうにでもなれ、ってなってる。

上山竜治

真っ直ぐないかにもリーダー格なアンジョルラス。
ばっちがキラキラなら、上山さんはとても堅実な感じ。
冷静なリーダーで、思考で引っ張るタイプな印象。

小野田龍之介

3人の中で一番普通の人っぽい。
リーダー性よりはなんというかみんなの先輩?お兄さん?感。近しい感じがあって親近感沸く。ようでいて、やっぱり近寄りがたい気も。

とにかく歌が良い。ひたすら良い。声が好きすぎる。あの声にどこまでも付き従っていきたい。

テナルディエ

駒田一

荒々しさが強め。

橋本じゅん

悪役感が強くてかなり良い。

KENTARO

とにかく上手い。演技も上手いし声もすごく良い。テナルディエはみんな上手いが、一番好きかな。

テナルディエ夫妻嫌いなんで、わかりやすくコメント短い私。

テナルディエは、見た三人でそんなに大きな印象の違いは感じない。
そして三人とも、演技も歌もすごく上手い。
FNS見ると、舞台で観れなかった斎藤テナルディエだけ印象違うかな。かなりねっとりしてそう。

マダム・テナルディエ

森公美子

荒々しさ強めだし、コメディ感も強め。
安定の森さん夫人。

鈴木ほのか

荒っぽさが強い。
上手いし荒々しいのはいいとして、あまり叫ぶような歌い方(演技)が好きではない。

朴璐美

細くて爆乳ですね……(笑)
コメディ感より悪役感が強くてかなり良い。
この人と鈴木さんはセクシーさ押し出してる。
朴さんかなり好みかも。

ガブローシュ

大矢臣

かっこいいけど年相応の幼さとか可愛さを強く感じさせて、なのにしゃきっとしてて、好みのガブローシュ。
一番好みかな。
勇者ガブローシュとしての凛々しさかっこよさと、浮浪児の少年としての幼さが絶妙なバランス。かっこよさのが強め。それが良い。
エポニーヌが死んだと同時に力抜けてた大矢ガブローシュ。

小林佑玖

かなり幼い。ガブローシュにしては幼すぎる。あとスタッカート気味な歌い方が少しだけ気になるけど。
が、かなりの美声で凛としているせいか、無駄な甘さ幼さは感じさせなくて、これまた好みのガブローシュ。
というか歌めっちゃ上手くないか!?

坂野佑斗

凛々しくすごくかっこいい声。
一番年長なので、やっぱり一番頼りがいのありそうなガブローシュ。

グランテール

川島大典

コメディ感強めで声がちょっと高め。そこが好みじゃないが、全体的な演技は良い。

丹宗立峰

本当にかっこいい。ワイルドで酒に溺れていても実は冷静で、一歩引いて皆を見てるグランテール。大人。
丹宗グラン大好き。

「レッド」(燃える魂)の時はマリウスを指し、「ブラック」(孤独な夜)ではアンジョルラスを指してたけど、マリウスがそのまま歌ったので、「お?」って感じで笑ってた。

フイイ

これは役者の話ですが、前半組のフイイ、マチソワした時、マチネで「来い相手になるぞ」が裏返ってるけど大丈夫かこの人?となってたら、ソワレでは下げてきましたね。
後半組は安定してました。

終わりに

感想というか、ただのメモになりました。

今回けっこうたくさん観れたし、やっぱり好きだなーと改めて思った作品。

早くも2021年公演が発表されたので、また楽しみです。

海宝くんが今回で卒業ということですごく寂しかったけど、内藤マリウスがかなり気に入ったので、次も期待してます!(出てね)

あとは昆ちゃんエポニーヌがどうか……今回一回しか観れなかったので、是非続投を。

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2000年フランス製作ドラマ『レ・ミゼラブル』(ジェラール・ドパルデュー主演)完全版 感想

 

東宝ミュージカルの『レ・ミゼラブル』を観劇した勢いで、こちらのDVDを購入。

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2000年の、本国フランスで製作された、ドラマ『レ・ミゼラブル』です。

短縮版(3時間)は観たことありましたが、完全版は初めて。
短縮版が個人的にあまりにつまらなかったのですが、完全版の評価が非常に高いので、観てみたくなったのです。

全四話、6時間越え。
観終えたので、感想。

 

 

 

スタッフ

製作: ジャン=ピエール・ゲラン
監督: ジョゼ・ダヤン
原作: ヴィクトル・ユーゴー
脚本: ディディエ・ドゥコワン
撮影: ウィリー・スタッセン
音楽: ジャン=クロード・プティ

出演

バルジャン: ジェラール・ドパルデュー
ジャベール: ジョン・マルコヴィッチ
ファンティーヌ: シャルロット・ゲンスブール
テナルディエ: クリスチャン・クラヴィエ
コゼット: ヴィルジニー・ルドワイヤン
修道院長: ジャンヌ・モロー
マダム・テナルディエ: ヴェロニカ・フェレ
マリウス: エンリコ・ロー・ヴェルソ
エポニーヌ: アーシア・アルジェント
アゼルマ: ソフィー・ミルロ
フォーシュルバン: ヴァティム・グロウナ
アンジョルラス: ステフェン・ウィンク
クールフェラック: クリストファー・トンプソン
ミリエル司教: オットー・ザンダー
ガブローシュ: ジェローム・アードレ
ジルノルマン: ミシェル・デュショソワ

感想

※ネタバレあり

ほぼキャラクター感想になりました。

第一話を観た時は、面白い!と思いました。
短縮版のつまらないイメージが強かったので、完全版は面白いじゃないか!と喜ぶ。

が、第二話、第三話……と進むうちに、なんとなく残念な気持ちに。
つまらなくはない……のですが。好きじゃない。
基本はかなり原作通りだったと思いますが。
しかし謎の改変もあり。
更に一部キャストが個人的に微妙だったのが、イマイチな気持ちに拍車をかけていたと思います。

微妙なところ

ジャベール

まず、ジョン・マルコヴィッチのジャベール。
演技は上手いですよね。でもどーも、あのねちっこさが無理!
ジャベールあんなに蛇のような感じだったかしら……?
悪くはなかったのですが、好きになれないジャベールでした。

自殺は入水は入水でも、橋から飛び降りるのではなく、岸から歩いていく形。あの決然とした表情で死に向かうシーンは良かった。

死の前のシーン、「その強盗を見逃す罪と、捕らえる罪の間で」という台詞はぐっときました。
ジャベールにとってはもうすでにどちらを選んでも、自分は罪を犯すということになるんですね。
彼が死を選ぶ理由がわかりやすく表現されていたかと思います。

マリウス

それからもう1人、ダメだったのがマリウス……。というか一番ダメ。
私は元々嫌いです、マリウス。ミュージカル版ではかなり緩和されてますが。
それがこのドラマではまあ!言葉は汚いですが、クソ野郎ですね本当に!!
原作通りと言うべきか。

コゼットと革命の間での変わり身が激しすぎてついていけない。
それにミュージカルではまだ、コゼットか革命か、と悩んでる様子が伝わりますが、これは違って、コゼットのことしか頭にないんですね。
コゼットと出会ったから、革命は参加しない。
それはそれでいいと思いますよ。そう決めたのなら。
しかしコゼットがいなくなった、だから革命に参加する、と戻ってくるシーンが、仲間のためにではなくいかにも「やけっぱち」すぎて腹が立つ。
お前もう帰れ!!って思った。

あとはバルジャンに対しての態度……。
結婚後のバルジャンとマリウスの会話。バルジャンを追い払うマリウス。原作でもマリウス最低ポイントはここですが。
コゼットにはバルジャンが去ったことについて嘘をつき続けます。
私がコゼットの立場なら、このマリウスの嘘が発覚した時点で幻滅するレベルですよ、まじで。
このドラマのコゼットも、けっこうキレてるように見えたけど。
しかしこのドラマ、ここでバルジャンの方に謎の改変加わってまして。これがちょっと…。それは後ほど後述します。

それからこれは身も蓋もない意見ですが、マリウス役の俳優さんの顔が苦手すぎる!!
私好みじゃない程度ならいいんですが、かなり嫌いなタイプのルックスでして。
見てるの割と辛かったよ。

アンジョルラス達学生

あとは学生達の扱いが雑すぎなのも気に入らない。
彼らの死の場面はなし、マリウスが仲間の死に対して苦しんでる、悲しんでる描写もなし。
(おかげでマリウスめ……!なポイントがひとつ増える)

まああの長い作品を映像化する上で、どこかは省くしかないんですがね……。
このドラマではそれは学生達だったということで。

謎ポイント

基本はかなり原作に忠実だったと思います。
思いますっていうのは、もう原作の記憶があやふやだからですが。
このドラマを観ていて、「そういえばこんな場面あったなー」と思い出すことがいくつもあったので、多分なかなか忠実。

にも関わらず、私が気になって仕方がないポイントが以下二つ。

ガブローシュの存在

今作でのガブローシュは、かなり早い段階で登場します。
バルジャンがまだ幼いコゼットを連れている時、ガブローシュが彼らに寝床を提供してあげるのです。
さすがガブローシュ!男前!とガブローシュ贔屓な私は思いつつ、これだとコゼットより年上設定だけどどうなるん……?とも思った。
それがまさかの!
6年後かな?コゼットも大人になり、マリウスも登場する。そこに再度現れる、なんら変わらず少年のままのガブローシュ。

………このドラマのガブローシュは、妖精さんかな???

なんでこんなわかりやすく辻褄の合わないことになってるんですか。
製作段階で誰か疑問に思ったでしょ絶対。

バルジャンのコゼットに対する愛情

さっきマリウスについて述べた時にちらっと書いた改変です。

結婚後のマリウスとバルジャンの会話で全てを打ち明けたあと、バルジャンはマリウスに、コゼットへの愛情は「男として」だと言います。

なんでだよ!!!???

え、これなんで!?原作そうだった!?違うよね???

この発言があって、マリウスはよりバルジャンを遠ざけるわけですが。
(だからと言って、虐待してたわけでもないバルジャンをコゼットから引き離す権利はお前にないけどな!!!)

この改変は辞めて欲しかった……。なんとなく、これは感覚的な、気持ち的な問題ですが。

良かったところ

何人かがイメージぴったりのキャスティング!!

エポニーヌ

エポニーヌとガブローシュが一番好きな私は、ここがいかにイメージ通りかは重要ポイントで。
このエポニーヌはとてもぴったり。

荒れてて、汚れてて、気が強くて。悪党の娘!という感がバリバリの汚さ(中身も外見も)なんだけど、その中に垣間見える純さと真っ直ぐさが、まさにエポニーヌ!

エポニーヌはやっぱり、一途で可哀想なだけじゃ、違うんです。汚くないと。それがエポニーヌ。彼女の生きた世界。
(しかしこの役者さん、身綺麗にしたらけっこう美人さんでは?)

しかし子供時代エポニーヌは、コゼットに対してかなりの残酷さ。
あの親であの空間にいればそうなるわな。

テナルディエ夫妻

ミュージカルではコミカル感強めに描かれますが、このドラマでの悪党っぷりが最高。
この2人を演じた役者さんが、また美男美女なんです。美人と男前。
いやらしさが際立つ。
ミュージカルでのテナルディエ夫妻の(観客による)愛され感が、私は嫌いなんですよね。この2人は徹底的に「悪」でいて欲しい。貧しさ故の、悪に成り下がって、もうそこからやり直せない存在。

ファンティー

ファンティーヌもなかなか好み。
可憐な見た目に対して、実は割とたくましい。
娘のためにとても懸命な若い若い母親像が良かったです。

バルジャン

さて主役、ジャン・バルジャン
ぴったり!というのとは違いますが。
ジェラール・ドパルデューがとにかく上手い。
特に冒頭の荒々しさ。悪人のように感じる。
その荒々しさは、生まれ変わった後も時折顔を見せ、彼は善人になったけれども、「完璧な人」ではないんだと思って、そこが愛おしい。

ただ体格が良すぎるんで、後々は良いけど、囚人時代はもう少し痩せてて欲しかったかも。

コゼット

猛烈に可愛い!最高に可愛い!
父親(バルジャン)を愛し抜き、凛とした強さも備えてる。
お人形さん感が強くなく、私好みのコゼット。

ジルノルマン

地味に良い。
頭固くて分からず屋感強いながらも、孫への愛情溢れんばかりに見えたところがとても良い。
上手い。

ガブローシュ

謎ポイントを除けば良かった。何より子役がかわいい(笑)
このドラマでも、テナルディエ夫妻の息子(エポニーヌの弟)設定はないっぽいですね。

が、テナルディエの脱獄に手を貸すシーンはあり。

テナルディエの脱獄を助けるようにエポニーヌに頼まれたガブローシュ、エポニーヌにキスを要求します。
「キスして」と言うガブローシュに、エポニーヌはませたガキだと言いますが、ガブローシュはこう答えます。
「女のキスじゃないよ、ママのキス」
おでこにキスして欲しい、と。

たくましい浮浪児の孤独な一面が垣間見えて、かなりぐっときた場面。

それからこのガブローシュの男前ポイント!!
何かとマリウスの手助けをしてるガブローシュ。
マリウスが「危険だぞ」と忠告する場面があるのですが、それに答えるガブローシュ「守ってあげる」
なにそれ!!!かっこいい!!!!

原作よりちょっと見た目年齢上だなーと思いますが、飄々としていて、たくましく愛らしいガブローシュで良し。

まとめ

トータル的には、イマイチです。

ほぼ人物の感想しか書いてませんが、特に感動もしなかったし、観終わって「もうDVD売ろうかな……」とか思ってしまったんで、私にはかなり微妙だったのだな、と。

原作に忠実なのにね?

多分なんですけど、これも感覚なんですけど、原作をなぞってはいるけど、原作の魂は伝わらないな…と思うドラマでした。

世間的にはかなり高評価なので、興味のある方は観てみてください。

 

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小野不由美『屍鬼』第一巻 感想

私の中では『十二国記』と並んでメジャーな小野不由美作品で、以前から気になってはいたのですが、この度ようやく手をつけました。(ちなみに十二国記も読んでません)

読むきっかけ

今回読もうとしたきっかけは、先日『残穢』を読んだからです。

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これも今更感がありますが。

これがまた面白かった。ほぼ一気読み。

一人きりで静かな時に読むと怖い。ゾクゾクする。でも確かに怖かったけど、ホラーなのにやけに論理的で、理屈っぽく、筋道がしっかりしているところが面白かった。ややくどく感じないこともなかったんですが、私好み。

民放じゃなくて、NHKのドキュメンタリーっぽい感じ。実在の人物が登場するので、そういった意味でも「ノンフィクションかな?」と錯覚させる。

この『残穢』に満足したので、では同じ小野不由美の作品を、ホラーを読もう!と思って、長ーい『屍鬼』に手を出しました。

屍鬼』とは?

第52回日本推理作家協会賞長編部門候補作。 上下巻合わせて1000ページを超えるボリュームを誇り、登場人物はメインとなる人物たちの周りや家族なども事細かに登場し、150人を超える。

スティーヴン・キングの「呪われた町」へのオマージュであると後書きで触れている。

ちなみに、京極夏彦は連作小説集『どすこい』内で、本作のパロディとして『脂鬼』を発表している。

Wikipedia

屍鬼』第一巻あらすじ

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた――。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

新潮文庫

感想

※ネタバレはなしでいきます。

読み初めから「これは当たり」という感触。

まだ第一巻、序盤に当たる。丁寧に丁寧に、村の地理的条件、歴史的背景、多数の登場人物を描き出している。この丁寧さはミステリー作家っぽい。(ミステリー作家なんだが)

これはホラーサスペンスって感じかな。

作品世界の設定も骨太だし、何よりこのかなり多い登場人物!これだけみっちり描かれたら、決して平穏ではないはずの彼らの行く末が心配で仕方がない。
(しかし、海外ミステリみたいに、人物一覧表が欲しいと思った)

この丁寧な作品の組み立て方が後々かなり効いてくるんだろうと思って、これからの展開にとてもドキドキする。

レビューで何人も「序盤が動きがないから挫折しそう、退屈、長い」などと見かけたが、決してそんなことはない!この時点でかなり面白い。興味深さもあるし、何よりこれだけしっかり世界を描かれていると、引きつける力が強い。

私は決して都会暮らしではないが、もちろんこんな村には住んだことがない。

ああ、超ド級の田舎の暮らし、人間関係はきっと本当にこんなのなんだろう、と思いつつ読む。リアルさ。
個人的には他人の干渉が嫌いなので、絶対住みたくない。現代っ子なんです。

この狭く、人口も少なく、密接でかつ排他的な村社会。ここにこれからどんな恐怖が訪れるのか。

が、 私は読書前にレビューをあたっていたところ、軽くネタバレに遭遇してしまいまして。ネタバレというほどではないかもですが、少なくともこの第一巻だけではわかっていないこと。
多分この作品は何も情報を入れずに読む方が良かった。やや心構えをしてしまっている自分がいるから。

とはいえ、この丁寧に描かれた世界にじわじわと迫ってくる恐怖と、その得体の知れなさは逸品。その恐怖は「死」であるのだけれど、納得出来なくもないのに不条理さ不可解さを含んでいる。得体のしれないことって怖い。

この作品はいわゆる群像劇にあたると思うが、強いて言うなら主役は若僧侶と医者だろう。幼馴染の2人。単に私がこの2人が好きなだけかも?

この2人に注目しつつ、さっそく第二巻に手をつけます。

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