トム・フランクリン『ねじれた文字、ねじれた路』
ノスタルジックな作品が好きです。
そして、少年の物語が。
昨年ハマったカポーティの短編の数々。
スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』。
ロバート・マキャモンの『少年時代』。
ウィリアム・ケント・クルーガーの『ありふれた祈り』。
そんな小説を求めて辿り着いた一冊。トム・フランクリンの『ねじれた文字、ねじれた路』。
- 作者: トムフランクリン,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/11/08
- メディア: 文庫
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買ってしばらく積ん読していたものを、やっと読みました。
内容紹介(amazonより)
ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れる。それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。だが、町で起きた新たな失踪事件が、すべてを変えた。過去から目を背けて生きてきたふたりの運命は、いやおうなく絡まりあう―。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作家の感動ミステリ。
感想
全編通して黒人と白人の差別があった。
アメリカの抱える、暗く重い事実。
サイラスの気持ちは分からなくはないけれど、読者の気持ちはラリーに寄り添うだろう。
ラリーの人生を考えると、哀れでしかない。
現在と過去の2人について交互に語られていく。
少年時代の2人がいかに強い絆で結ばれていたのか、ということが語られているのかなーと思ったら、そうではなく。
強い友情があったかというとそうとも思えず、という印象。
最後の方に分かるが、その印象は間違ってはいなかった。
ほんのひと時、共に遊んだ少年。
また、2人にはさらなる隠された事実があったから。
全てにおいて対照的なラリーとサイラス。人種も、性格も、人間関係も、今の生活も。そして、家族関係も。
ほんの一場面、サイラスが父を求めていると感じられる場面があった。この場面が、どうにも心から離れない。
ラリーは間違いなく、少年時代、サイラスを友だちだと思っていた。
サイラスは真っ直ぐな人生を歩み、ラリーは犯罪者として一人ぼっちで虐げられた生活を送っている。
失われた長い年月。
そしてラリーの元に訪れる、ラリーにとって2人目の友だち。
彼もラリーも孤独だから、だから彼はラリーのところへやってきた。
孤独な者同士は、惹かれ合う。はみ出し者同士、友だちに飢えている。
初めての友だちからの贈り物に、私は涙が出た。
悲劇が悲劇を呼び、また人生を狂わせる人間が出る。
後味は悪くはないが、とても哀しい。暗い。
ただ、ラストは少しでも暖かな気持ちになれることは確かだろう。
語られない友情の物語が、ここから生まれるだろうと思うから。
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