すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

ミュージカル『デスノート』2015年 柿澤勇人ver 感想〜デスノートを知らない素人が観たデスミュ

録画したまま放置していた『デスノート The MUSICAL』を観ました。
浦井健治verも録画してたので、どっちにしようかなーと悩んだのですが、実はちゃんと見たことの無いかっきーを見てみたかったので、こちらを鑑賞。

 

デスノート The MUSICAL』

2015年4月3日 日生劇場にて収録

 

 

 

キャスト

浦井健治/柿澤勇人ダブルキャスト
小池徹平
唯月ふうか
前島亜美
濱田めぐみ
吉田鋼太郎
鹿賀丈史
ほか

 

スタッフ

音楽: フランク・ワイルドホーン
演出: 栗山民也
歌詞: ジャック・マーフィー
脚本: アイヴァン・メンチェル

 

作品紹介

ミュージカル『デスノート』2017年公式サイト
(↑2015年時のが見つけられなかったので、再演時の公式を貼っときます)

2003 年から集英社週刊少年ジャンプ」に連載された漫画『DEATHNOTE』(原作 大場つぐみ 漫画 小畑健) 、ストーリーは成績優秀な高校生・夜神月(やがみライト)が、ある日、一冊のノートを拾うところから始まる。ノートには、「このノートに名 前を書かれた人間は 40 秒で死ぬ」とあった。ライトは、テレビで幼稚園に立 てこもる誘拐犯の名前をデスノートに書いてみる。すると、誘拐犯は突然、心臓発作で息絶えた。
「自分こそが神に選ばれ、犯罪者のいない世界を創る“新世界の神”だ」と、ライトはデスノートを使い、犯罪 者の粛清を始めていく。インターネット上ではその 犯人を「キラ」と呼び、称賛しはじめる。警察は犯人の手掛かりさえつかめないでいた。そこへ、これまであらゆる難事件を解決してきた謎の名探偵 L(エル)が事件を解決すべく、捜査を開始。目の離せない頭脳戦が繰り広げられる。

前代未聞の斬新なテーマに黄金のトリオがタッグを組み挑む ─ フランク・ワイルドホーン作曲、ジャックマーフィー作詞、アイヴァン・メンチェルく脚本でミュジカル化、演出の栗山民也が刺激な舞台に仕上げた。

作品の感想

※オチに触れてます。

 

全体的に

単刀直入に、面白かったです。
とりあえず流しとこ〜と思って再生したのに、すぐに真剣に観始めてしまいました。
そして数日後に、2回目を観ました。2回目もかっきーverです。かっきーの月が色々ツボだったもんで……。
また浦井くんも観ます。観たらまた感想書きます。

私、『デスノート』という作品に関しては全くの素人です。
原作は未読、映画もテレビドラマもアニメも、あらゆるメディアが未見。
ただ、私は窪田正孝のファンですので、彼が主演したテレビドラマは観ようとしました。1話で挫折しました(笑)つまんなかった……。

そんな『デスノート』素人の私。
有名な作品だから、設定自体は知っています。
この設定から生まれるストーリーラインとしては、特別に意外性はなかったような感じ。原作は知らないから、このミュージカルに関してだけ、ですが。あーまあそういう展開だよね、というか。
あと端々に強引さも目につく。当然舞台化においてかなり端折ってると思うので、原作はもっと丁寧に色々あるのでしょうが。

ツッコミどころ

ですのでツッコミどころが複数。我慢できないので書いちゃう。特に印象的だった部分を。

  • Lの推理が強引というか、飛んでる。ように感じる。頭脳戦的な楽しみ方は出来ない。
  • ミサの月に向けたメッセージがドストレートすぎる。「16時に渋谷のスクランブル交差点」って。そこに刑事とか張っとけよ。なんで月を尾行してる一人だけなんだよ。そしてそんな超繁華街でノート触りあって死神見て、なんて会話してるんですかこの2人は。
  • 隠しカメラと隠しマイクを自宅に仕掛けてて、証拠がゼロなわけなくない!?あんだけ自室ではノートも広げて、死神と喋ってる(傍から見たら独り言)のに!もうその時点で捕まえられるでしょう!!!
  • Lと月の初対面、「私がLです」って言われてすぐ信じちゃう月。ピュアか。
  • ラストのLの死。月は「Lに襲われて正当防衛で殺したことにする」ということを言っていたかと思うんですが、あの死に方じゃダメじゃない?でもLが自分で自分の頭を撃って死んだということは、月がそもそも、そうノートに書いていたということになりますよね。なんでだ……襲ってきた人が自殺してたらどう見ても正当防衛には見えない……。

でもツッコミどころも許してしまう、ほかの全ての要素の素晴らしさ。

ただツッコミどころは満載でも、とてもとても惹き込まれたんです。
演出も良し、キャストも良し、そして音楽!
というか前から思ってましたけど、日本オリジナルミュージカルで「音楽:フランク・ワイルドホーン」ってどういうこと!!??すごいな!!!
全体的に、スタッフもキャストも、かなり本気の布陣。ガチのやつ。ガチでエンタメ作り上げてきた。非常にレベルが高いです。

キャストは本当に歌える、演技出来るの最強メンツ。
音楽は最高にカッコイイわ切ないわ哀愁漂うわ。アイドルソングは「ワイルドホーンがアイドルソングを……!」と軽く衝撃だったけど、普通に良くてカラオケで歌いたい。
曲としては対決系のものが特に好きです。

あとは演出が良い……。脚本も良い。
冒頭の始まり方にまず少し驚き。サクッとテーマに切り込む感じ。無駄はない、すごいスピード感。
一番好きなのは新宿駅のシーン。あそこの音楽、歌声の高まり、叫び、月の狂気、走り抜ける新幹線の音……!ゾクゾクしました。

鮮やかな展開と音楽で、2時間半、とても楽しめました。

オチは?

オチはどうなるのかと思ったけど、二人とも死ぬんですね。
これが一番綺麗というか、スッキリであろう終わり方だとは思いますが、それにしても虚しさの残る作品…。
(軽くググってみたんですが、原作とは違うんですかね?)

月について

月は優等生で頭が良いけど、それ故にか、ひたすら自分の意思だけを正しいと信じてるんですよね。
冒頭の『正義はどこに』がけっこう凄いと思います。ここで観客は、月がどういう主張を持った少年なのか分かる。

ところでこの歌詞を改めて読んでいたら、ラスト付近の月のパートが

この心を満たす何かを きっと正義と呼ぶのだ それが答えだ

じゃないですか。なんか今ゾッとしました。
月の心を満たしたもの……。

デスノートを手にした彼はもはやサイコパス。自分のことを正義だと信じて疑わない。
ちなみに「サイコパス」をWikipediaで見ると以下のようになってます。

/サイコパス=精神病質/

犯罪心理学者のロバート・D・ヘアは以下のように定義している。

良心が異常に欠如している
他者に冷淡で共感しない
慢性的に平然と嘘をつく
行動に対する責任が全く取れない
罪悪感が皆無
自尊心が過大で自己中心的
口が達者で表面は魅力的

めっちゃ当てはまるよ月……。
とは言えこうなったのはデスノートのせいではあるんですが。しかしデスノートを手にせずとも、優秀な彼がいずれ何かしらの大きな権力を得ていたら、こんなに極端ではなくとも、結局は似たようなことになっていたのでは、というようにも思います。月はそういう性質だった、ってことかな、と。
だってデスノートを手にしたのはこれまでにも何人もいたわけで、他の人はこんなことになってないんでしょう?

「普通の少年がこうなる」「誰でもこうなる」ということの恐ろしさではあるけれど、個人的にはやっぱりこうなるにも「素質」がいると思うんですよね。で、月はしっかりこの素質を持ってしまっていたと。
「普通」の中にも色々な「素質」がある。

自らの正義を振りかざし、神になったつもりで犯罪者を殺しまくる。
個人的に恨みのある人を殺すとか、そういった事よりもタチが悪いなと思います。
自分を神だと思ってるから。自分の正義が正しいと。

しかし最初は、それでも皆の「正義のため」だったのが、結局どんどんと「自分のため」になってるので、本当に人間って弱いなと。

デスノート』の歌詞に

犠牲は覚悟だ 輝く世界を この手で守るためなら 痛みも越えよう 出来るのは僕一人だ

とあるじゃないですか。
最初にこれを歌っている時は、「犠牲」とは「自分の精神と魂」だったんですよね。人を殺すことは辛いけど、自分がそれを耐えて、良い世界を作るんだ、という。
ただあの新宿駅のターン。あそこで月は一線を超えますが、ここで歌われる「犠牲」は、明らかに他人の命になってるんですよね。それも罪のない人の。あの場面だとまさに相手のFBI捜査官。「犠牲はお前だ」ということ。

「力」を得たと勘違いして、人を殺し、自らも破滅に向かって突き進む。
人間って悲しい。

しかし自分に自信がある人ほど、自分は正しいという思考に陥りがちなんでしょうね……。

月役は演じる役者によってかなり印象が変わりそうだなという感じです。これは色んな人のバージョンを観てみたくなります。
が、かっきーの月を生で観たかった……!!!(よりによって次はオール新キャスト)

リュークのりんご

ところでリュークのりんごは結局「心臓」の象徴だったんでしょうか。
ラストのりんごは、演出的にはどう見ても月の心臓を抉りとってるように見えますが。
でもそれまでに食べてたのは(たぶん)普通のりんご。普段は、そのただのりんごで我慢しているのか。
心臓がリュークの好物だったのか。

群像劇として

一回目は興味深く、またこんなに面白いと予想してなかったので(笑)、「なにこれ面白いー!!」とテンション高めに観ていたのですが、二回目に観た時はよりじっくり観ることができました。
月とLの話も良いんですが、周囲の人達が切なくて切なくて、すごく刺さりました。父に妹、ミサにレム、刑事たち……。
群像劇として良い作品だなと思いました。主役二人だけでなく、皆キャラクターが引き立っていて、とても感情を揺り動かされる。
次観た時にはいよいよ泣いちゃいそう。

キャストの感想

柿澤勇人 as 夜神月

お初のかっきー。
グリブラとかで歌は聴いてました。上手いし好みの声だしルックスは可愛いし(笑)
いずれ観てみたいなーと思いつつ機会がないままここまできて、今回やっと見れた。

上手い人でした。
歌が上手いのは分かってるけど、演技も良かった。
まず見た目から好青年風、優等生風。自分に自信がありそうな、自分は正しいと思ってるんだなー感が冒頭から伝わる。(ここは冒頭の楽曲も演出もまた上手いな、と)
でもまあ「普通」の「優秀」な少年。
そこから彼がやばくなっていくのは、観客としては予定調和。一部で「ヒーロー」と思われた彼は、ただの「危険人物」になっていく。

雰囲気がどんどん暗く、危なく変わっていくのがとても良かった。表情もこわい。歌に演技乗せるのも最高に上手い。
『秘密と嘘』と、新宿駅の『デスノート(リプライズ)』と、『正義はどこに(リプライズ)』ら辺がすごく好き。あの歌い方とか聴いてるとすごくゾクゾクする。

ただ「狂気」というのとは違うのかな〜という印象。これは別に悪いとかではなくて。いや、狂気とはなんぞや……。後半明らかにやばいことになっていってはいるんですけど、それでも彼は「正気」を保っている。もともと持っていた彼の悪い部分が出てきて、どんどん優等生の皮が剥がれていくけど、狂ってはいない。そういう感じ。

この印象は、かっきーだからなのか、そもそもこういう設定なのかが気になるところです。(やはり原作読まないとダメかな)

あとラストにLを殺すシーンの、泣いてるような笑ってるような悲しんでるような、あの演技良かったな。もうぐっしゃぐしゃで。とても印象的。

というか本当に声が良いなー好きだなー(笑)
CD買おうかしら、って悩んだ末に買ってしまった。(ついでに今度スリルミーも買おうかしら……)

小池徹平 as L

小池徹平もお初。
『1789』のCD(加藤和樹ver)でチラッと聴いたことはある程度。
あとFNSでの『キンキーブーツ』とか。(ちょうど今週に初キンキーブーツです!楽しみです!)
歌自体はそこまで上手くないなーという印象。

で、実際今回ちゃんと聴いてみたら、意外と良い!伸びもあるし、すこーんとした通りの良い歌声。
ただこのキャストは全体的に歌がかなり上手かったので、比較してしまうとやや残念な感じ。ちょっと細いというか、平たい感じで物足りなさはありました。好みもあるかな。

いやでも上手いわ。というか、個人的にそこまで好みではない歌をカバーしまくってきた演技の良さ。カバー以上。
まあ私は上で述べた通りデスノート素人なので、このLが原作通りかとか、そんなことは分かんないんですが、とても良かったです。
小池徹平ってどうしても見た目で、可愛らしさが際立ってしまうんですよね。で、これもそんな彼自身の可愛らしさが抜け切ってはなかったんですが、独特のオーラがとても良かった。
もうそのままそこにいる、って感じ。上手いんやん……。

唯月ふうか as 弥海砂

ふうかちゃん超可愛かった!!
この可愛さは正義!!(笑)
歌もセリフも、声自体がかなり可愛らしいタイプで、本来は私が苦手な声なんじゃないかな、と自分で思います。
が、苦手とは思わなかった……!セリフの声は少し苦手かも?いやでも歌声はむしろ好き!すごい上手い、真っ直ぐで伸びが良い。

ピュアで真っ直ぐな海砂が可哀想で。
実際ここまで月のこと好きになる、というか崇拝するか?とも思ったけど、そこは親を他人に殺されたことのある人しか言えないかな……。
ただ月が同世代じゃなくておじさんとかだったらどうしたんだろう、というどうでもいいことを割と真剣に考えました。恋の対象にはならなくても、崇拝はしたかな、やっぱり。

キラキラで純粋な真っ直ぐさと、闇を抱えた暗さ悲しみが、とっても上手くて、めちゃめちゃ良かったですふうかちゃん。
あと可愛い。正義。
ライブシーンがマジでアイドル。

濱田めぐみ as レム

濱田さんの歌ー!!最高ー!!!
しっとりとして深みがあって、ふうかちゃんも上手いけど、ふうかちゃんに比べてすごく大人の女性の良い声って感じです。

レムすごい惹かれる役ですよね。

吉田鋼太郎 as リューク

皆すごい良かったんだけど、トータルで一番良かったのは吉田さんでは、と思います。
素晴らしすぎた。
単に歌唱力自体は他キャストに負ける所もありますが、この演技があまりに上手すぎて、吉田さんの場合は完璧に歌にもマッチしてる感じ。
あとお茶目で可愛いね、リューク。原作でもこんなのですか?

ラストの声色変わって冷たくなるところ、すごく良いです……上手すぎです……。

鹿賀丈史 as 夜神総一郎

鹿賀さんはですね、歌の滑舌がいつも気になるんですよ。年取ったからよね。
この方も演技はすごく良いので、いつも歌の時だけ身構える私。
でも滑舌はアレなのに、歌でバンバン父親の気持ち伝わってきて、本当に凄いな……と。

アンサンブル

アンサンブルがまた全体的に上手かったんだけど、小此木まりと木内健人いて個人的にテンション上がりました!
あと警察の人たちがすごくすごく良かった……泣ける……。

終わり

二回見ても飽き足らない感じで、これはもうハマってしまったのでは?感があります私。

ずっと頭の中で曲が流れてるし、色々考えてしまう。テーマがテーマですし。
ハッキリ言ってしんどい話ではあるけど、完璧なエンタメに落とし込んでいて、すごく良い出来のミュージカルでした。

2017年版も観たいので、WOWOWさんに再放送リクエスト出しました。(そっちは録画してなかった)

それから来年の再再演、行きましょうかね。かっきー見たかったな……でも楽しみ。