る・ひまわり製作 舞台『マクベス』感想
今回は、これもとりあえず買ったまま放置してた『マクベス』。
正直『マクベス』を矢崎さんってどうよ?と思って置いてました。もっとベテランがやるものでは。
とは言え私は『マクベス』という作品自体未体験。舞台も映画も観たことなければ戯曲も読んだことがないです。(戯曲はKindleで積読状態だし、映画もオーソン・ウェルズのDVDがうちにはあるのだが)
意外とシェイクスピア作品で触れたことないもの多いんですよね……。教養がないわけではないと自分で思ってるのに、こういう所でボロが出てくる。反省。
というわけで、今作が私の『マクベス』とのファーストコンタクトとなります。
感想
古典作品なのでネタバレ云々はもう気にしない。
矢崎さんみたいなすごく若い人主演で、製作がるひまで……って、もう少しなんというか……ライトにした作品かと思ってたんですが、まあ『マクベス』ファーストコンタクトの人間が言うのもあれですけど、台詞とかまんまっぽいですね。
なんせ河合祥一郎さんの翻訳使ってますもんね。私が積読にしてるのもこの人翻訳の角川のものです。
話もまんまみたいで。(一緒に観ていた母談)
で、こういった台詞回しこそがシェイクスピアの醍醐味のひとつなんでしょうから、もちろんちゃんとした訳をそのまま使ったお芝居っていうのは良いものですが、私みたいな慣れてない人間は最初若干苦労する(笑)台詞がスムーズに頭に入ってこないもので。
まあそれもすぐ慣れたのですが。
物語自体は、無常感が半端なかったです。面白かったんですけれども。
マクベスが罪を犯して手に入れた王という地位で、彼が楽しんでる、充実しているといった描写がないんですよね。
あるのは苦悩と、どんどん狂っていく様のみ。
じゃあ彼は何を手に入れたのか?得たものはあったのか?失ったものばかりじゃないか?
一番の座を手に入れようと悪に手を染め、地位は確かに手に入れたが、それと引き換えに失ったものの多いこと。全てかもしれない。地位以外の、全て。
特に矢崎さんが演じてるから、最初はただの好青年に見えるわけですよ。そんな彼が、破滅の道へまっしぐら……。無常。
というか魔女に振り回されて、利用されただけみたい。
なるほどこれは悲劇だなぁ……。
マクベス夫人はこれはもしかしたら悪女なのだろうか?と思いつつ、今作を観た限りではそういった印象は受けなかった。
確かにマクベスを導いた、悪く言えば唆したのは彼女だけれど、自分が「王の妻」になりたい、自分も地位を手に入れたい、とかまあ他の理由でも、とにかく「欲」のためという風には思わなかった。ただマクベスを愛してるから、マクベスに偉くなって欲しいから、という、マクベスのため、「愛」故の行動の様に見えた。
ただ逆にそれが辛いかも。
悪女ならば「全部こいつのせいだ!」と思えるのだけれど、愛を感じてしまう以上、「愛」は人を良き運命だけでなく、悪き運命にも導くものだと嫌でも考えてしまう。「愛」が良き人生にするとは限らないのか……。良くも悪くも、人を大きく変える、影響を与えるのが愛なんだなぁ、と。
いやー観終わった後本当に無常感に苛まされました。
それがシェイクスピアの狙いなんでしょうね。
積読状態の原作戯曲をまた読もうかなと思います。
今作で一番良かったのは、マクベス夫人役の馬渕英里何さん。すごい良かった上手かった。
強くてたくましくて、行きたい道に真っ直ぐで、一見悪女みたいで、でもマクベスへの愛があったなぁ。
最初矢崎さんと並んだの見た時は正直姉弟みたいに見えたけど(笑)後からちゃんと夫婦に見えるようになったよ(笑)
矢崎さんはねぇ。思ったよりは随分良かったけど、なんとなくすごく一生懸命感が伝わってきたな。
この舞台にかける思いが大きかったんでしょうか。シェイクスピアだしね。
あー頑張ってるなぁ、頑張ったなぁ、という視点で観てしまった。
もう後10年後とか20年後とかにまたシェイクスピア劇観てみたいですね。
松村雄基さんも良かったですね。若手ばかりの舞台をさすがの存在感でしめてくれました。
- 作者: シェイクスピア,金子國義,河合祥一郎
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/01/24
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