すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

少年社中『贋作・好色一代男』感想

ジャージー・ボーイズ』インコンサートからのJBロスかつ矢崎さんロスがひどいので、DVDを買ったまま開けずに置いていたこの作品を観ました。
買ったまま置いていたというのは、あまり趣味じゃないのではないかと思われたからです。(でも買ってる(笑))
それは内容ではなく、劇団自体、かな。
ブログに書いてないですが、同じ少年社中で矢崎さん再び客演『モマの火星探検記』を観ました。生ではなく、映画館上映で。(舞台挨拶付きだった)
これがね~。好みじゃなかったんですよ・・・。内容自体もそんなに好みじゃない、嫌いではないけどどうも私のツボを外してくる。でもそれよりも。演出が何よりもダメ・・・。劇団員の演技も。
あーこの劇団合わないなあと思ってたわけですよ。
でも観ました、『贋作・好色一代男』。なので感想を。

『贋作・好色一代男


 2014/2/4~11紀伊国屋ホール



 

 

内容紹介

日本文学史上最強の色男「世之介」ここに見参! 豪華絢爛な時代絵巻が今ここに蘇る! 晩年を迎えた世之介は、仲間と共に船に乗り、海の向こう側にあるという 伝説の楽園「女護が島」を目指す。 だが、船は嵐に巻き込まれ難破…。意識は闇の中へ…。 世之介は、稀代の「粋人」と言われた自分の一生を振り返る。 愛に溺れ、愛に生きる。そんな彼の人生は幸せだったのか?それとも…?
紀伊国屋書店webストア 商品説明より)

少年社中/贋作・好色一代男 - 紀伊國屋書店ウェブストア


 

スタッフ

脚本・演出:毛利亘宏

キャスト

矢崎広、堀池直毅、大竹えり、井俣太良唐橋充、あづみれいか、杉山未央、柏木佑介、大野朱美、佐野まゆ香、岩田有民、加藤良子、天羽尚吾、竹内尚文、山川ありそ、小野川晶、椎名鯛造、長谷川太郎、藤巻勇気、ザンヨウコ、甘浦裕介、鈴木拡樹、内山智絵、吉田千紘






感想

いや~。やっぱりこの劇団、合わないわ。
今回もしかしたら印象変わるかもと思いましたが、ダメでした。やっぱり苦手ですこの劇団。

セリフの大合唱とか。順番に言ってくやつとか。歌とか踊りとか。コミカルさとか。
とにかく演出の仕方が全体的に私の趣味に合わなすぎる。
あと演技もね……。そういう演技指導になってるんだと思いますが、まー合わない。

あー無理だ……と思いながら観ていました。個人の意見なのでファンの方はお気になさらず。





 




矢崎さんはとても良かったですけど、今回思ったのが、この人あまり……なんていうんだろ、色気は一応あるんだけど、まとわりつくような?熱さのような?そんなねっとりした色気はないんだなと思いました。
爽やかなんですよね、すごく。
色狂いなのに普通に好青年に見える。まあそこが良いんでしょうけど。
これは矢崎さん本人の雰囲気と、あと演出でしょうか。この作品はあまりそういうエロさを出さないように作ってる印象でしたので。
コメディ部分も多いし、セリフはエロいようでエロさを感じない。絡みもねっとりしてない。

あらすじを読んで、「あーこれは矢崎さん、女性との(男性とも?)絡み多いんだろうなー」ってちょっと楽しみにしてたんですけど(笑)、いや少ないな!?
なくはないんですけど、全然エロくないな!何この爽やかな人!
まあ舞台だし濡れ場はともかく、キスシーンとかもっと多いと思ってましたけどねー。キスシーンも爽やかすぎる……なんだこの人……小中学生向け少女漫画のイケメンか……。

あと私、矢崎さんはいわゆる「カッコイイ系」の演技は似合わないと思ってる派で(なんだその派閥)、これもどうかなーと観る前は思ってたんですが、そもそもこれはカッコイイ系じゃなかった(笑)
いや、かっこいいんですが、飄々さとか人懐こさとかの方が目立って。こんな設定なのに好青年風だしね。
なのでこの役は合ってたと思います。
当て書きらしいですね。それでか。

まあ今回の矢崎さんの何が良いかって、前半の愛想良くてニコニコ笑顔振りまいてるのもめっちゃ可愛いんですけど、後半からの悲しみをたたえた表情ですよね。
私矢崎さんの辛い、苦しい、悲しい、って演技好きなんです。(笑)
目の表情ひとつで悲しみがひしひしと伝わってくるんですよねー……。
この場面の!とか言いたいんですけど、内容に触れるので後述します。

あーあと今回の矢崎さんのビジュアル。最高ですね(笑)すごくお似合いです。
基本ずっとはだけてるせいで、逆に裸(上半身だけですが)に価値はないし(笑)、エロさもないですが、もーかっこいい。
あの艶やかな衣装にヘアスタイルに……。
この姿だけでも眼福かも(笑)





物語自体は割と面白かったです。

というわけで、ここから内容に触れています。ネタバレ注意。






元の井原西鶴の『好色一代男』は全然知らないです。



まあ今作では、結局色狂いの世之介は、「人を幸せにしたい」そして「人に嫌われたくない」という思いで突っ走ってたわけですが。
このオチ自体はストーリーとしては珍しくもないな、と思ったんですけど(元の井原西鶴の設定がどうなのかは知らないけど)、まー矢崎さんの演技が良いのね。
前半の飄々っぷりから、後半の絶望と悲しみへ。
「嫌われたくねぇ」と本音をぶちまける世之介が愛おしくて。
要はどんな人にも愛されたくて、人を幸せにしたいのももちろん本音だろうけど、自分が嫌われて傷つくのが怖い、一種弱い人間なのかな、と思いました。弱いと言ってもこれはたいていの人が抱く思いであって。こういう人を弱いと言うよりは、むしろ「人に嫌われても平気」と思える人が強い、と言うべきなのかな。
で、それが世之介の場合は様々な人間との情事に繋がってるんですよね。
(ところでこれもSEX依存症と言うのじゃなかろーか)
人に嫌われるのが怖いから、身体の繋がりを持とうとする……。

世之介は情事にふける一方で、それ以外にも人のために様々なことをするわけですが、それが思いがけない結果を招いていく。
人を幸せにしたかったはずなのに、不幸にしてしまったかもしれない。
その思いを、最後世之介と関わった人が打ち消してくれるわけですが。

最後の、自分の人生を追った芝居を見ている世之介の表情がすごくグッときました。
黙って、静かに見つめている。その瞳がなんというか……やっぱり哀しげというか。哀しげとは違う印象な気もするんだけど、言葉が見つからないのでこれでいきます。
あの顔すごく好きだったな……。どこか投げやりな感じもする。






散々演出が嫌いだって言いましたけど、良かったのはやっぱり全体の艶やかさかな。
華があってとても目の保養でした。
それから人数が多い割に混乱せず、それぞれの人物がはっきりしていたのが良かった。





ところでこの作品、最初の段階で、あーこれは死にかけ(もしくは死んだ?)なんだなっていうのがほとんどの観客に分かると思うんですが、これは分かってしまって良い……んですよね?
中盤あたりで、「この船はただの船じゃない、三途の川の渡し船だ」と堂々と言われますけど、いや分かってたし、って感じになったんですけど(笑)
でも冒頭のあれは明らかに客に分からせる演出ですし、なのに中盤で種明かしみたいに言われても……というのが正直な感想です。







まあ感動系の物語でしたね。
物語としては『モマの火星探検記』よりは好きです。
こういうオチにいくだろうなーって方向にいきすぎて、目新しさとか意外性はありませんでしたが。わかりやすく感動の方向だし。


でも多分、この劇団はもう観ないかと思われます……合わなくてしんどいから。
矢崎さんがまた客演しても?うーん、考えます(笑)





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