すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

堀北真希&山本耕史 舞台『嵐が丘』感想。小説イメージを壊さない素晴らしい主演&演出

 

原作があまりにも好きで、録画はしていたもののなかなか観られなかった舞台『嵐が丘』。

予想に反して、とても良かった。驚き。

 

2015年

 

 

 

 

スタッフ・キャスト

原作: エミリー・ブロンテ
翻訳・脚本・演出: G2
出演: 堀北真希山本耕史高橋和也伊礼彼方矢崎広小林勝也ソニン戸田恵子

 

 

内容紹介

主役で屋敷に住むアーンショウ家の娘・キャサリンを演じるのは堀北真希。奔放に育ち、愛だけに生きるという、自らのパーソナリティーにはない女性像に挑む。堀北は「今は愛だけに生きるなんて難しい時代でしょうから、その生き方を観て、忘れていた何かを感じていただければ」と語る。そんなキャサリンの結ばれることのない恋の相手を山本耕史、キャサリンの悲しみの歴史をすべて知る家政婦を戸田恵子が演じる。
【ストーリー】「嵐が丘」という名の屋敷の主人ヒースクリフ山本耕史)を訪ねたロックウッドは、昔の住人キャサリン堀北真希)の亡霊に遭遇。家政婦のネリー(戸田恵子)は悲しい過去を語り始める。
30年前、屋敷に住むアーンショウ家の主人が身寄りのない少年を連れ帰り、ヒースクリフと名付けかわいがる。娘のキャサリンは仲良しになったが、息子のヒンドリーは父の愛を奪われたと感じた。数年後家長となったヒンドリー(高橋和也)はヒースクリフを下男の身分に落としつらく当たる。一方キャサリンヒースクリフの間には愛が芽生えていた。
そんな中、交流を持ったリントン家の息子エドガー(伊礼彼方)からプロポーズされたキャサリンは、ヒースクリフへの愛は変わらぬも結婚してしまう。ヒースクリフ嵐が丘を飛び出し行方不明に。数年後出世して戻ってきたヒースクリフエドガーの妹イザベラ(ソニン)を誘惑し、波乱の日々が幕を開ける。

WOWWOW

感想

※作品内容のネタバレ、舞台作品としてのネタバレ含みます。

原作は名作として名高いですが、本当に素晴らしい作品。

映画として、こちらも名作と言われているローレンス・オリヴィエ主演の『嵐が丘』も観たのですが、これは正直イマイチでした。
ヘアトンやキャシーなど次世代は出さずに、キャサリンヒースクリフだけの物語にまとめていて、それはそれで別にいいとは思うんですが………どうにも綺麗にまとまりすぎている印象。ふっつーの恋愛ものって感じ。
好みじゃなかったです。
オリヴィエがあまりに美形すぎるのも良くなかったかも。

さて、この舞台『嵐が丘』。
興味はあったし、矢崎さんも出てますし(笑)
観たいと思いつつも、やっぱり原作が好きで……。

なのに、これは良かった。
始まった瞬間からグッと引き込まれて、最後まで目が離せない。

演出もとても良い。音楽も美しい。
「文学作品を観ている」と感じる上品さ、なのに取っ付きにくいわけではなく親しみ深さを感じる

流れはちゃんと原作通り。

ラストに突っ込んできたキャサリンヒースクリフの最後の逢瀬。ここに入れてきたのはとても良かった。感動した。

正直、泣きました。心震えた。

キャストも素晴らしい。

驚いたのはやっぱり主演の2人。

堀北真希ってちゃんと見るの初めてだったんです。私ドラマもあまり観ないので。
でも演技派とかいうイメージはないし、とにかく清純派の女優さんって感じ。
本人のインタビューで「映像だと自分にキャサリンのような役はこない」と言っていたし、イメージは間違っていないかと。

なのに、堀北さんのキャサリン、私の持っていたキャサリンのイメージにかなり近かった。びっくりした。
しかも良い演技。
ぱっと見の綺麗さ愛らしさ、大人しさ。口を開くと一転して手に負えない女性。言葉や表情の端々から感じる冷たさ。
傲慢で自信たっぷり。見下したような冷酷な目つき。すごく良かった。

山本耕史もあまり見てないのですが、『平清盛』の悪役のイメージ。もうあれは凄い(笑)

で、このヒースクリフ役。これもけっこうイメージと近い。
サラッとしてない、なんというか執念深い感じというか、ネチっこい感じが、すごくヒースクリフっぽい。

上手いんですよね山本さんは。そんなに好きな演技ではないけど、上手い。

ただちょっと原作と違う感じがしたのは、この舞台の方がヒースクリフがより「可哀想」に感じたこと。
もともと原作でも哀れな人ですけど。
これは山本さんの演技によるところが大きいかと。ところどころ、ものすごく哀しげな、打ちひしがれた、絶望的な表情を見せるんですよね。それがまた上手くて。
あと、舞台ではヒースクリフの「復讐」を原作ほどには押し出してない感じがあったかな。演出的というか物語的に。原作は「復讐」をものすごく強調してた記憶。
原作のヒースクリフの方が、強烈な冷酷な印象を受けました。

原作での名シーン、名セリフというのはいくつもあるわけですが、この舞台作品でもちゃんとそんな数々の名セリフが。(もちろん全てが原作通りにあったわけではないですが)
いちいち感動してしまう。

以下は古典新訳文庫からの引用です。

ネリー、あたしはヒースクリフなのよ

あなたを抱きしめていたいわ 」彼女は悲痛な声でつづけました 。 「あたしたちがどちらも死んでしまうまで !あなたがどんなに苦しんだって知らない 。あなたの苦しみなんか 、どうだっていいわ 。

ただ 、おれを 、お前がいないこの谷に放り出すのはやめてくれ !おお 、神よ !こんなことが言葉になるものか !おれは命なしでは生きていけない !魂なしでは 、生きていけない !

ああ、なんて心を揺さぶってくるんだろう。

子ども時代のシーン、子役を演技しながら成人のキャストが話す演出、あれ良かった。
子役と成人キャストがリンクして。子ども時代と大人になってからの姿がリンクして。

他のキャストも良いんですよねーこれが。
当然ながら戸田恵子さんものすごく上手い。語り部なんで出ずっぱり。
あと高橋和也さん。伊礼彼方さん。この辺良かった。

ところでこの舞台のキャスト陣、「歌い出しそうなメンバーやな」と思っていたら、始まった途端戸田さんが歌い出したんで、軽く焦った(笑)

ソニンさんの演技はやっぱり正直好きじゃないんですよね……。いかにも舞台的なオーバーな感じがして、見てて落ち着かない。下手だとは思わないんですが……。
あとメイク凄かったけど!どうしたの!?

矢崎広さんはね。矢崎さん好き、原作でもヘアトン一番好き、という「W好き」の状態だったんですが(笑)
まあ普通に良かったと思います。そこそこヘアトンっぽかった。

ヘアトンとキャシーの次世代も描いてくれたのは良かったのですが、やっぱり尺の関係か、そこまで詳しくは描かれてないんですよね。
キャシーはヘアトンにすごい酷い仕打ちをしていたり、ヘアトンはいじらしく一生懸命勉強していたりといったこと、ちゃんと舞台で表されてはいるのですが、それは言葉で説明されるだけ。で、こういうことがあったけど2人は仲直り。と、和解のシーンはバッチリ描かれる。それは良いんですけど、そのせいなのか、「ちょっと仲悪かっただけ」みたいに感じるというか(笑)もっと関係は酷かったと思うんですけど、たいしたことなかったように感じました。それが物足りない!!
ヘアトン贔屓なのでヘアトンのいじらしさをもっと感じさせて欲しかった!!というのはあります(笑)あんなにキャシーに酷いことを言われてもね……!ヘアトンは良い子なんですよ!
しかもヘアトンって、ヒースクリフに教育も受けさせてもらえず、酷い仕打ちを受けてきたのに、彼に親愛の情を抱いているんですよね……。舞台でもヒースクリフの死に泣き崩れていて、それは良かった。
まあ原作だとヒースクリフの方も割とヘアトンに情があるんですよね。

あまりに予想外に良い舞台だったので、この演出家の方を覚えておこうと思いました。G2さん。なにか観に行きたい。
というかまた堀北真希山本耕史で再演してほしい。(無理かな……)。

堀北さんも好きになっちゃいました。

というわけで、私にとってはかなり良い舞台化作品でした。