すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

ミュージカル『エリザベート』東宝2016年版(蘭乃はな&井上芳雄ver) 感想

念願のエリザベート
なんとかチケットを取れた一回。観てきました。

 

 

2016年9月19日月曜日 昼公演
@梅田芸術劇場

S席2階1列2番。下手側見切れあり。

梅田芸術劇場 ミュージカル『エリザベート』

 

 

 

 

 

キャスト

エリザベート: 蘭乃はな
トート: 井上芳雄
ルキーニ: 成河
フランツ・ヨーゼフ: 田代万里生
ルドルフ: 古川雄大
ゾフィー: 涼風真世
少年ルドルフ: 大内天

内容感想

まず最初に。
私にとってのいわば「原作」というか、基礎にあたるのはウィーン版2005年公演DVDです。

よってこの公演を基準として、いろいろ見比べてしまっているので、どうかご容赦を。

以下ネタバレあり

ウィーン版への思い入れが強すぎて、かなーり不安があった東宝版。

結論としては、そういう不安はそこそこ払拭してくれて、思ったよりも良かった。

トートとエリザベートの恋愛物語みたいになってるのではないかという心配が一番大きかったのですが、そんなことはなかったです。
恋愛物語には見えなかった。それは本当に良かった。本当に安心した。
東宝の広報部さんは恋愛物語みたいな紹介の仕方をいい加減やめてもらいたい。

でもウィーン版で感じた、エリザベートとトートの表裏一体感ですが、それはあまり感じなかったかな……。意識したら、ああ……そうかも?という感じ。

まあ基本的にちゃんとウィーン版の通りに進んで行くし、なかなか良かったです。

でも正直、ウィーン版で受けた衝撃はなかった。
まああれは個人的に「雷に打たれたような」「人生観に影響を与える」レベルの衝撃だったので、そんなのを期待していたわけではないんだけど。
多分先に東宝版を観ていたら、私にとってこんなに深く心に残る作品にはなっていなかったと思います。「ふーん」って感じ。
良いけど、まあそんなにツボではないかな、という。

あと、これは演出の違いなんですかね。ウィーン版で感じた洗練さや格好良さはなくて。
悪いわけではもちろんないけど、ウィーン版とはまた違うジャンルだな、という感じ。

同じストーリー展開なのに、なんでだろう。
なんでウィーン版を観たときあんなにショックだったんだろう。
もうこれは感覚なので、言葉では表せない。
でもウィーン版エリザベートという作品が、私の人生に多大なる痕跡を残したというのは間違いないので。
どうしてもウィーン版贔屓になってしまいます。日本版ファンの方、許してください。

あと少し、なんとなく印象に残ったところをメモ。

まずトートの登場シーンでいきなり吹きそうになりました、ごめんなさい(笑)
上から降ろされるのはいいんだけどね、あのバックの巨大な羽がね。

『愛と死の輪舞』、この曲は2005年のウィーン版にはないじゃないですか。
同じ場面に当たる2005年ウィーン版の曲の歌詞が、ものすごーく好きなんですよ。何回も言ってるけど。トートは歌わず、エリザベートのソロ。

分かってる あなたはトート(死)
皆あなたを恐れてる
でも私はあなたを想って

私を理解してくれるのはあなただけ

このように、エリザベートのトートに対する想いが歌われている歌詞。
特にこの「自分のことを理解してくれるのは死だけである」というニュアンスは、『愛と死の輪舞』でもいれといて欲しかった……と強く思うわけです。
(CDで聴いて前から思ってたけど)

『最後のダンス』は大迫力。
本当に生の芳雄さんの歌声は衝撃的でした
ここ大拍手だったな。

『私だけに』、歌いだす前に「私を見捨てるのね……」とフランツに言うんだけど、ここはウィーン版のように、一人でポツンと呟いといて欲しかった。
東宝版だとフランツが聞いてるのね。そして、シシィ、と近寄ってきて、シシィが「一人にしてください」と言う。
んー、なんか上手く言えないけど、受けるニュアンスが変わるかなー。

日本版の演出で良いなこれ、と思ったのは『私だけに』でシシィが歌うあの高い台のセット。上手く言えない(笑)
あの台の上の板が上がるんですよね。『私だけに』でそこからシシィが滑り落ちる。
この同じセットが後にルドルフの棺に。そしてエリザベート自身の墓に。あの使い回し方がとても印象的だった。
文章下手すぎて観た人にしかわからない感じですけど(笑)

『私が踊る時』のウィーン版ダンスめっちゃ好きなんですよね。
ドキドキする。
日本版でもあんなの見たかったな(笑)

アンサンブルがやたらと上手かったです。
だから『カフェにて』や『ミルク』『憎しみ』『悪夢』など、すごくカッコいいし迫力あった。
脇まで実力派を揃えたんだなと感じました。

子ルドルフの『ママ、何処なの?』ですが、このシーンでトートがルドルフに拳銃を向けているのもかなり印象的でしたね。

ルドルフとトートといえば、『闇が広がる』のラストがハグだったことと、『マイヤーリンク』で死のキスから自殺までにややタイムラグがあったのがちょっと違和感というか、へぇーって感じ。
あとキスはルドルフからいくんだなーとこれは新鮮。

なんかルドルフやや出番多かったですね。良いと思います。

あ、それからルドルフを亡くしたエリザベートがトートに連れてってというシーン。
トートの返事が「まだ俺を愛していない」で、あーこれ違うなと。
そういう拒否の仕方なのか、と。

全体的に歌も、あーこれウィーン版になかったなーとかいうのもちょいちょいあって、ああなるほどそう歌うのか、みたいな。
そういう違いは楽しめました。

でもエリザベートに限らないのですが、翻訳ミュージカルはどうしても限界を感じますね。
歌詞の情報量が日本語になると圧倒的に少ない。
仕方ないことなので、これは受け入れて楽しむしかないですね。

キャスト感想

蘭乃はな

正直最初は「え、やばい……」となった。悪い意味で。
演技は悪くないんだけど、歌うと途端にお嬢さんっぽい。それが浮いて聞こえる。シシィとしてしっくりこない。
ちょっと子どもっぽすぎる気もした。けど、それは最初の方はこんなもんなんかなー。

が、後になるほどだんだん良くなる。
「あ、いいかも」と最初に思ったのは、ゾフィーとのやり取りのシーン。初夜明けて、『皇后の務め』ね。
『私だけに』はラストあたりは良かった。
そして『私だけに(リプライズ)』の凜とした感じ。

あの場面のシシィは、まさにシシィから「エリザベート」に変身した瞬間というか、彼女が一人で生きる決意を固めてそれが神々しくもあり、またフランツとの距離が急速に遠ざかったのも感じてそれは切ない。名シーンです。

で、第二幕からはかなり好印象。『魂の自由』良かったなー。
この曲に限らず、哀しみをさらけ出す歌い方が良くて印象的でした。

基本的に、どうしても好きな歌声じゃないんです。特に高音部。
だから好みとしては、別の人がいい……となるんですけど、でも最終的な印象としてはなかなか良かったと思います。

井上芳雄

お目当て。
芳雄さんはですね……トートってキャラじゃないと思うんですよ、個人的に。
等身大の男性、というのが一番しっくりくる。というか好み(笑)

トートというのは自分の中でのイメージが強いキャラクターでもあるし、正直芳雄さんのトートにはあまり期待せずにいきました。

とにかく文句をひとつつけたい。
ビジュアルが嫌(笑)観る前から分かってたけど!
宝塚っぽいよねー宝塚じゃないのに。
ウィーン版の男前、ワイルドさが好きなので、日本版もああいう美しい系よりは男前系にして欲しいです。完全に個人の好みですが(笑)
男前芳雄さんトートなら惚れて帰ってたかも……(笑)

で、まあ本題の演技と歌。

歌は………上手いのは分かってた。分かってたけど………生だとこんなに凄いんだ………。
凄すぎて唖然としつつ笑いそうになるレベルでした。尋常じゃない上手さ
もちろんブレもないし、とにかく隙がない。
またトート役だから、感情を思いっきり歌に乗せるような歌い方じゃないじゃないですか。柔らかさ温かさもあるんだけど、基本的には硬質な感じというか。
そんな歌い方と、尋常じゃない上手さレベルによって、「人間じゃない」感はより醸し出されていました(笑)

演技はどうだろう。
悪くないと思います、あまり好みじゃないけど。
手の動きがまた宝塚っぽい。イメージ。
トートの芳雄さんはどことなく不気味さを漂わせていて、そのくせエロいような、でも気持ち悪いような………独特さ。なのにカッコいいという。よく意味がわからない(笑)
ネチっこい感じもするのに、そのくせサラッとさっぱり纏わり付かないような感じもあって。
んー、なんか相反する要素を両方醸し出してる。

思ったよりちゃんと人間っぽくなくて良かったです。
割と冷たい感じかな。
でもラストのエリザベートと結ばれるあたりはやっぱり嬉しそうですね。ここはトートの胸キュンシーンですもんね(笑)

田代万里生

噂のまりおさんやな!(笑)

なにこの人めっちゃ上手い。
最初の方はフランツ可愛すぎじゃない!?となった(笑)
年齢を重ねて変化する歌声がお見事。若い時のイケメンボイスも、年取ってからのより深みのある歌声も最高です。
演技も上手かったし、個人的にかなり気に入った。

成河

この方のルキーニがやたら評判が良いのを目にしていたので、実はかなり楽しみにしていました。
そして実際、すんごく良かったです。
歌も上手いし美声だし、ルキーニのエキセントリックでややトチ狂った演技が素晴らしい。

今回の私的収穫は田代万里生さんと成河さんですね。

古川雄大

なんか最近よく見るなーって感じになってる彼。

台詞回しは良い。意外と言ったら失礼かもだけど、びっくりした。
でも歌声は個人的に違うかな……。上手いんですけど、優しすぎる。柔らかすぎる。
心地よい歌声ですけど、私はもっとルドルフも芯に力が欲しい。
だから歌はちょっと物足りなかったかな。
でも演技はなかなか良かった。

まとめ

と、まあざくっとこんな個人的印象でした。

思ったより良かったけど、何回もリピはしないかな。
一期間の公演に一回でいいかな、と。

個人的な希望として、ブーイング受けるかもしれないんですが、宝塚女優以外のシシィが見たいです。
それから違う演出家でも見たいです。
いつか実現するかな。

あと、トートを男前なビジュアルにしてくれたら喜んで観に行くかも(笑)なんちゃって。