すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

ミュージカル『エリザベート』の魅力に陥落。2005年ウィーン公演DVD感想

ちょっと前からウィーンミュージカル『エリザベート』にハマりました。
Apple Musicで様々な録音を聴きまくり、動画もちょこちょこ見て、本編をちゃんと見る前からどんどん深みに。

ちなみにその過程で、マーク・ザイベルト(Mark Seibert)さんに夢中になりました。すべてが私の惚れる要素・・・!
一人のミュージカル俳優にこんなにどっぷりハマったのはトニー・ヴィンセント(Tony Vincent)以来です(あ、あと子役でアダム・サールズ(Adam Searles)がいた)。トニーは近年の声があまり好きでなくて残念な思いをしていたのですが・・・。
マークさんの歌声にトキメキが止まりません。

が、とりあえず今回は彼の話は置いておいて、本題はエリザベート』2005年公演DVDの感想です。
これがとんでもなく素晴らしかった・・・!!!

もう興奮が冷めません。いつも以上に殴り書きです。もう文章ひどい(笑)
話の内容にバンバン触れてます。ご容赦を。

あ、その前にちょっと東宝さんに文句言いたいんですが、字幕がところどころおかしかったです。
入り込んで観てるのに、間抜けだからやめてください・・・。

内容の感想

とにかく、素晴らしいの一言
キャストも楽曲も内容も演出も、すべてに魅了され、もうこの世界から逃れられない。
かっこよくて怖くて美しくて哀しくて・・・。

ダンスに演出。すごい、怖い。かっこいい・・・。

ミュージカルがあまり好きでない母(私の付き合いでちょこちょこ一緒に見る)が絶賛していたのも、個人的にビックリしつつも納得の作品。

エリザベートとトート(死)の愛の物語」と作品紹介で見ていました。
が、これ違う・・・!
愛の物語・・・と言えないこともないですが・・・。私の感覚ではまた違う。
思った以上にエリザベートの、一人の女性の物語。トートはあくまでも脇役。重要だけど。

愛という点に関して言えば、エリザベートとフランツ・ヨーゼフの間には確かに愛が存在していたなと。
しかし、トートとの関係はまた違うような。トートはエリザベートを愛していたと思いますが、エリザベートがトートに向ける感情はまた違う気がする。
トートに惹かれ、離れられず、人生の節々で存在を意識し続け、心の奥底で彼を求めている。
エリザベートにとってトートとは、最後の手段、救いの場、安らぎの存在であったと思う。それも一種の愛と言ってもいいかもしれませんが・・・難しいですね。

トートの存在はいくらでも解釈できますよね。考察がはかどりそう。

エリザベートとトートの全編通しての駆け引きはすごくドキドキ。

あと思った以上に歴史的だし政治色も強かった。

キャラクター(キャスト)の感想

エリザベート:マヤ・ハクフォート

エリザベートは少し我儘なような、自分本位のような。でも気持ちはよく分かる。
綺麗に着飾り、自分の美貌を武器にしようと決意し、もう夫に頼らない。第一幕のラストで、今までの純真な少女は消え去ってしまったと感じた。
強く生きたエリザベートも、結局幸せに、自由にはなれなかった。
結局エリザベートにとって人生は苦痛でしかなく、ラストは死によってようやく自由を手に入れた。やはりトートは救いだったのか。彼の腕の中で、ようやく彼女は安らぎを手に入れた。

マヤさんが本当に素晴らしい。歌も演技も最高峰。というか上手すぎて・・・(笑)
最初に観たのがここまで完成度の高い人になってしまって、私はこれからが不安だよ・・・(笑)
エリザベートの変化によって雰囲気も歌声もガラッと変わっていって、彼女の変わりようがよくわかる。なんてすごい。

トート:マテ・カマラス

トートはなんとおいしいキャラでしょう。
冷酷・・・というのとは違う気がするけど。どこか恐ろしく、妖しく、ミステリアスで、見る者を魅了する。
たいていの人は見ると夢中になると思う。トートに。死の存在に。

なぜか先にマーク・ザイベルトにハマっていた私。
これも本編を見る前にちょこちょこ好きな曲をピックアップして見ていたんですが、マテさんの第一印象は、マークさんに比べ「エキセントリック」。なんかもういろんな意味ですごい。マークさんのトートが紳士的に感じた(笑)
で、ちょっとドキドキしながら全編観たら、なんとまあもう完全にマテさんの虜に。
これは何とも魅力的。妖しさと色気がすごくて、歌声もワイルドでありながらも優しく美しい。しかし怖い。しかし惚れる。
ラスト、エリザベートに抱きしめられた時のトートの反応!あれ反則ですよ(笑)急に純情な青年になっちゃって。エリザベートが本当に愛しかった、やっと手に入れられたのが信じられない、そんな表情を見ていると、またこっちもトートが愛しくて愛しくて。

とりあえず一言言う。このDVDを見てマテ・カマラスに惚れない女性はいない。(多分)

ところでルドルフの死のシーン、何故女装なんですかね。
(追記: マリー・ヴェッツェラになっているからだそうです。)

ルキーニ:セルカン・カヤ

エリザベート殺害の犯人。いわゆる狂言回し。
彼がひたすら観客に説明してくれるわけですが、また彼の語り草が皮肉っぽいというかシニカルというか・・・それが良い。
ルキーニの曲はどれもやたらかっこいい。
またこの人も上手いんだ。

皇帝フランツ・ヨーゼフ:アンドレ・バウアー

フランツ・ヨーゼフは、エリザベートを非常に愛しているのが伝わってきて、気の毒といえば気の毒。まさに、彼が皇帝でさえなければ、すべて上手くいっただろうに・・・。
愛し合っている者同士が一緒になったからと言って、必ずしも幸せになれるのではない。愛がすべての障害を乗り越えられるなんていうのは、単なる幻想だ。
そんなに好きなキャラクターではないけど、悪い人ではないんだな。

皇太子ルドルフ:フリッツ・シュミット

一番同情したのはルドルフ。
彼は思ったより出番が少ないんですね。しかしばっちり観客の同情心を持っていく。
子どもの時から非常に優しい。
子役のソロ曲から目がウルウル。
ルドルフを見捨てたことが、エリザベートの最大の過ちか。息子だもの、何があっても守ってやらないと。

フリッツさんめっちゃお坊ちゃんって感じで、あと良い人オーラがすごくて良かったです。でも歌声は凛としてるんだな。

楽曲の感想

本編を観る前から散々聴いてましたけど。
楽曲素敵!

Am Ufer des Starnberger Sees

今はここは、日本版から逆輸入の『愛と死の輪舞』になっているんですかね。

もうこの曲から胸が張り裂けそう。
エリザベートとトートの出会い。
エリザベートはすでにトートを求めている。(というかこの時素直に求めてたんだからもう連れて行っちゃえばよかったのに・・・と思ってた(笑)
死しか自分のことを理解できない、と思っているエリザベートの心がなんとも哀しかったり。

Der letzte Tanz。

トートのエキセントリックさが炸裂している 。

この曲を聴いたとき、パッと思い出したのが『ジーザス・クライスト・スーパースター』。
似てるってこともないと思うんですが・・・。印象としては近いかなと。
エリザベート』もこの曲をはじめ、ロック調のものがけっこうありますよね。超かっこいい。

Ich gehor nur mir

そもそも『エリザベート』に興味を抱いたきっかけが、新妻聖子さんのアルバムでこの曲を聴いたからだったんですよ。彼女の歌も素晴らしかった。

しかしマヤさんの歌うこの曲。至高。
泣きました。
最後の最後の大盛り上がりの箇所。

喜びを共にし 悲しみも分かち合いたい 
でも私の人生を求めないで それは私だけのものだから

エリザベートという女性をそのまま表した一曲。
すごく感動。

Ich gehor nur mir (Reprise)。

エリザベートがある意味生まれ変わった瞬間。
より強く。それが哀しい。

Marktplatz in Wien (Milch)、Kitsch

ルキーニのこの曲は本当にかっこいい!!
この時はMilchってタイトルじゃないんだな。

Wenn ich tanzen will

大好き。初演時にはなかった1曲。
エリザベートとトートの駆け引きに魅了。
ヘビロテ曲です。

Mama,wo bist du?

子どもルドルフすごく可哀想。

僕もこの世界のように強く怖くなれる でも優しくなりたくなる

に私の涙腺が刺激される。
ルドルフにとってはこの世界はすでに怖いものだったのね。
ルドルフに優しく歌いかけ、抱き上げるトートを見ていると、ああこの子はこの時からすでに死ぬ運命だったんだと思った。
いずれは皆死ぬけど…。
このトートの歌声が美しすぎて、私こんな声で歌われたらついて行ってしまうよ。

Elisabeths Gymnastikzimmer in Schonbrunn

ここのエリザベートのソロかっこよすぎやしませんか!?
夫に裏切られ、もう自殺すると言いつつも、トートに誘われると非常に強い返答でまだ生きる意志を示す。

Die Schatten werden langer

これもヘビロテ曲。
死に近寄っていくルドルフ。それでもこの時はまだ抗えたのに。

Wenn ich dein Spiegel war

ルドルフにはどうも涙腺が緩む私。
母が、父が彼を救ってやらないといけなかったのに!

Kapuzinergruft

ルドルフの死によってようやく自分の過ちに気づいたエリザベート。息子を見捨てるべきではなかったのに。
あまりの苦しみに、ついにトートに連れて行ってくれと懇願するも、今度はそれをはねつけるトート。
この部分のトートの表情の変化は印象的。
トートは死であるのに、彼が愛したエリザベートは生きることを求める女性だった。

Eine Terasse bei Cap Martin

亡き父と語るエリザベート。彼女の人生がどんなに苦痛に満ちたものだったか、少女の時の彼女がどんなに純真だったか、それを改めて突き付けられる。

An Deck der sinkenden Welt

トートの高笑いが怖い。ついにエリザベートに死が訪れようとしている。
それはトートからルキーニに託される。

Epilog

エリザベートの死。そして自由。解放。
トートは求め続けたエリザベートをようやく手に入れる。彼女の方から胸に飛び込んでくる。
さっきも言ったけど、ここのトートの反応がなんとも・・・。信じられない、って顔をして。エリザベートのことが愛しくてたまらない、それを体中から表現していて、非常に・・・なんというか、きゅんとしました(笑)

「二人の人生に意味を探しても無駄」
「私は私だけのものだから」「お前は俺だけのものだから」

結局エリザベートは、ずっと死と共にあったんだなあ。

死して得られる自由か・・・『レ・ミゼラブル』とかもそうですけど、ある意味で死が肯定的で、救いなんですよね。でも皆、とにかく必死に生きている。

エリザベートとトートのキスによりエリザベートは死、解放され、それはハッピーエンドでもあるわけですけど、そのあとにルキーニの首つりがあってから物語が終わるというのがなんとも言えない後味を残してくる。

終わりに

すっかりはまってしまいまして、ちょうど今年東宝の舞台もあるし、観に行こうと思っています。
が、不安だなあ・・・。これが素晴らしすぎて。
どっかのレビューで、「ウィーン版と東宝版と宝塚版はすべて別物」と見かけたので、別物と思って観るようにしよう。
井上芳雄のバージョンが観たいなあ。

実際観に行きました。↓

いつかウィーンへ観に行きたい。

一部CDの紹介

おまけ

日本でも人気、ルカス・ペルマンのルドルフ。

ウィーン版で初めて歌われた『愛と死の輪舞』。

以下はトレーラーです。マークさんのトートです。

みなさん興味を持ったらぜひ様々なウィーン版、聴いて、観てみてくださいね。

そして東宝版を観ました。