ミュージカル『エリザベート』トートとエリザベートの関係について考察する
今年、2005年公演ウィーン版『エリザベート』のDVDを観て以来、すっかりこの作品の虜だ。
受けた衝撃は物凄かった。
9月に梅田芸術劇場にて、東宝版『エリザベート』を観劇する。
あまりにウィーン版が好きすぎて、正直言うとやや期待出来なくて、でもやっぱり楽しみで、とてもそわそわしている。
何が不安かと言うと、トートの存在のあり方と、エリザベートとの関係性について。
宝塚版はそもそも全然別物だと思ってるんだけど、東宝版もウィーン版とはかなり違うのではないかと勝手に思ってドキドキしている。チラシなどのあらすじから、公開されてる舞台映像から、そしてCDから受ける印象。
とりあえず日本版の観劇前に、ウィーン版を見て抱いている私の『エリザベート』という作品の、トートの存在、エリザベートとの関係性について簡単に語っておこうかと思う。
ざくざく書いてるので文章は纏まってないけど。
参照は2005年ウィーン公演DVD。(記事下リンクあり)
「死」であるトートは、エリザベートと表裏一体のものである。エリザベートは「生」の象徴のようであると感じるから。
しかし同時に、彼らは同一であるとも考える。何故ならエリザベートがトートを生み出したと思うから。
人が死について思う時、トートが現れる。
エリザベートの前に幾度もトートが現れるのは、エリザベートが無意識下でトートを求めているから。
ルドルフの場合でも同じだ。ルドルフがトートを求めていたから、トートは側にやってきた。
トートはエリザベートを愛してしまったからエリザベートを付け回すわけだけど、そもそもエリザベートがトートという一種の幻影を生み出し、まずエリザベートがトートを愛したのだから、トートがエリザベートを愛するのは必然だ。トートもエリザベート自身であるのだから。
トートは生身の存在ではなく、また「死神」でもなく、ただ「死」という概念である。二人の物語は禁断の恋物語ではなく、エリザベート自身の戦いと愛だ。
このDVDで、とても好きな歌詞がある。
エリザベートとトートの出会いだ。
エリザベートは歌う。
黒い王子よ どこへ?
何故ここにいてくれないの?
あなたの腕の中は居心地よかったわ
全てから解放されたいと強く思ったの
黒い鳥のように誇り高く孤独に
分かってる あなたはトート(死)
皆あなたを恐れてる
でも私はあなたを想って
夢を見 詩を書き 馬に乗り 風と疾走する
私を理解してくれるのはあなただけ
エリザベートが求め続けるのは「自由」だ。それも、生きている限りは決して手に入ることのない自由。それを手にするには死しかないと彼女はすでに知っている。
それなのにエリザベートは生気に溢れていると思う。彼女は死を愛し、死を求めながら生きる。
死だけが自分を救うと知りながら、生を手放すことはできない。
何度も無意識に死を求め、死はそれに応じてやってくるが、エリザベートの理性と意志は生にある。
決して生きることを諦めない。
周りを犠牲にし、強く、自由になろうとし、結局周りも自分も不幸にしてしまう。
生にしがみついて得たものはなんだったのか。
エリザベートは結局死によって救われる。
自由を得る。
エリザベートとトートは再びひとつになる。
とりあえず私が強く主張しておきたいのは
- トートは概念
- トートとエリザベートは表裏一体であり、また同一の存在
ということ。
私が今まで読んだ『エリザベート』の作品紹介で、一番私の考えと合っていたのはこれ。
『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界』の中の冊子。後半を抜粋する。
作家のクンツェ氏は、エリザベートが持つ死への願望を擬人化し"トート"という存在を生み出した。ストーリーはこの2つのキャラクターを中心に進んで行く。表裏一体とも言えるエリザベートとトートが、時には接近し、時には対立する。言い換えれば、"内なる自分との葛藤"をエーマに据えており、哲学的な観点を持つクンツェ氏らしい作品。
もう私が下手な文章でダラダラ書くより、最初からこれを紹介したら良かった。
そう、"内なる自分との葛藤"。
トートはエリザベートなんだ。
ウィーン版の世界観は凄い。
哲学的でもある。
考えれば考えるほどに深みにはまっていく。
日本版がどんな世界を作り出しているのか、ドキドキしながら楽しみにすることにする。
それから今回の話題とは逸れるけど、なんでこんなに『エリザベート』が心を打ったのかとずっと考えてる。
自分の自由を求めるあまり、「王妃失格」で「妻失格」で「母失格」。
自分本位で勝手な人間。
ただ自分の自由のことしか考えていない。
でもそれに、私は惹かれた。
自分もそうありたい、と言うと変かもしれない。私も勝手だ。
でもそれが本心なんだ。
ただ自分のために生きたい。
実際はそんなことできないと分かっているから。
それでも、まだ何の責任もないうちは、ただ自分の求めるように。
そんな生き方を、本当は求めているんだと、気づかされてしまったのかな。
以下は初めてDVDを観た時の感想。繰り返し見るごとに、最初より感じ方が(私なりに)深くなっていってるんだなー。
そして東宝版を観ました。