すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

舞台『宮本武蔵(完全版)』感想

2016年8月19日~29日 東京芸術劇場シアターイース
(DVDにて鑑賞)

 

 

 

 

 

内容紹介

伝説の剣豪として世に名を知らしめるも、その内面は臆病な男、宮本武蔵
色々と疲れの溜まった武蔵は、湯治のため山奥の宿を訪れる。そこには様々な面々と出会うこととなる。
私たちが考える理想の武蔵像からかけ離れた主人公、宮本武蔵は皆から偽物ではないかと疑われる。
証明のしようもないが、本物と認められたら命を狙われる、しかし偽物と思われても面白くない。
疑心暗鬼の中で、武蔵に恨みをもつ者、討ち取って名を上げたい者、さまざまな思惑が重なって、物語は思いもよらない方向へ。
最後までヒーローらしさも小次郎との決闘もなく、そのだらしなさが笑いを誘う現代会話劇。
“本当の宮本武蔵は、こんなんだったのではないか!?”
(公式サイトより)

musashi-stage.themedia.jp

スタッフ

作・演出:前田司郎

出演

山田裕貴
矢崎広
遠藤雄弥
金子岳憲
鮎川桃果
大山雅史
山村崇子
内田慈
志賀廣太郎

感想

あらすじ読んでもあまり惹かれなくて、キャスト的に(矢崎、遠藤の二人が)気にはなっていたけどしばらく放置していた一作。
読売演劇大賞最優秀作品賞、というのでも気にはなっていたんだけどね。

今回鑑賞のきっかけになったのは、強いて言うならば

  • 10日後くらいに矢崎さんの舞台(Photograph51)観に行く
  • 3月の『相棒』最終回ゲストに出てたゆうやん
  • 私が大好きな『警視庁捜査一課9係』の新シリーズ、先日スタートした『特捜9』に山田くんが新レギュラー

ということで。
矢崎さん待ち遠しいなーというのと、ゆうやん久しぶりに見たなーというのと。そして3つ目がきっかけとしては大きいです。

だって!私がシーズン1から欠かさず観ている『9係』に!新キャラですよ?渡瀬さんがいなくなり……(いまだに泣くんですけど)。寺尾聰が入り、山田裕貴が入り……。
名前は知ってたけど何も出演作見たことないし、どんな子が出るのか気になるじゃないですか!結果的に『特捜9』の放送を観たのが先になってしまったけど!(笑)
ちなみに『特捜9』での第一印象は、「私が苦手なタイプのルックス」でした(笑)

というわけで本題の感想行きます。

コメディなのかな?としばらく観る。けっこう笑える。

うわーそうきたかーという第一幕のラスト。
第一幕があのラストなのに、第二幕の進み方がまた軽く予想外。
笑いを交えつつも、展開する物語はかなり皮肉っぽい。いわばシニカル。
観終わったあと、「ひえー」ってなりました。ちょっとなんて言うんだろ……ビビったというか。

「私たちがヒーローとして見ている」宮本武蔵、そして彼だけでなく「剣豪」や「武士」というものそのものの存在を、かなり皮肉っていると思います。
現代の人間、映画や舞台が好きな人間として言えば、時代劇系はやっぱり殺陣の格好良さというものはとても惹かれます。でもつまりそれは、彼らは人を殺しているということで。

当たり前のようでちょこちょこ忘れがちなその事実を、思いっきり眼前に突きつけられた感じです。
剣豪として、武士として名を馳せたものは、それだけ多くの人間を殺している……。

いやー期待通りの面白い脚本でした。

役とキャストについて

山田裕貴 as 宮本武蔵

この宮本武蔵は、言っちゃえば卑怯者です。臆病で、でも純粋なのかもなぁ……と感じました。

武蔵だけでなく、「死」に怯える武士の姿は、日本の武士にやたら高い理想を持っている現代の人間としては期待外れだけれど、でもそれが真の姿、また自然な、人間の普通の姿なんだろうと思います。

山田くん、こないだの『特捜9』じゃまだよく分からなかったけれど、なかなか上手かったです。(やっぱりルックスは苦手だけど(笑))
人との関係を紡ぐことが苦手で、なんか子どもみたいで、死に怯え卑怯な手段に走る。まあ普通の若者。好演していました。
これは次回からの『特捜9』も楽しみですね(笑)

矢崎広 as 佐々木小次郎

矢崎さんの佐々木小次郎ですが、若干コメディ担当みたいになっています。
矢崎さんの軽やかな台詞回しや表情、動きが全体的に良くて、この人けっこうコメディ向きなのかも、と思いました。笑わされました。

誰とでもすぐ仲良くなって、人好きのする、明るい好青年………と、観ている間は思うんです。観ている間はね!
終わった後に冷静になって思う。「あれ、小次郎めっちゃ最低じゃね?」と。
仲良しに見せかけて、人好きのするように見せかけて、結局彼は自分の利しか考えていないんですよ。誰に対してもそんな感じ。他人は利用するためにある。
一緒に観ていた母が「詐欺師の手口だね」と言っていました。
特典映像で矢崎さん本人は「ビジネスライク」と言っていました。上手いこと言ったな(笑)

この佐々木小次郎のキャラクターと比べると余計に、宮本武蔵はかなり……純粋な気がするんですよね。

ところで矢崎さんはやっぱりこういう役が一番上手いと思います。「好青年」もしくは、今回みたいな「一見好青年」。
なんかいつも言っている気がするけど、私的にこの人は「カッコいい系」や「リーダーシップ取る系」「渋い系」は似合っていないというか、無理してる感があって、あまり好きじゃないです、今のところ。『黒いハンカチーフ』とか『ジャンヌ・ダルク』とかの役は私的にイマイチ。
ジャージー・ボーイズ』のボブ役は今回の小次郎役にかなり近いものがあると思います。一見すごく好青年、でも実はとてもしたたかで、計算高く、自分の利を追求する。あとは『スカーレット・ピンパーネル』のヘタレ好青年とか、『SAMURAI 7』のピュア全開のとか、いいですね。この辺の役めちゃめちゃ上手いです。
でも個人的にはヘタレやピュアよりも、したたかな方が観てて好き(笑)

あと和服似合う!超かっこよかった!(笑)ていうかやっぱり昔よりどんどんルックスが良くなってる気がするんですよね……(笑)

遠藤雄弥 as 亀一郎

こないだの『相棒』に出ていたのを観て、更に以前の『相棒』ゲスト出演の回を再鑑賞してました、この間。斎藤工がメインゲストの『ピエロ』。この回めちゃめちゃ面白いのでオススメ。

と、話が逸れていますが。
上記の『ピエロ』での役と、今回の亀一郎がまた近いかな。小次郎と違って、亀一郎はガチの好青年です。すごく良い子なんだろうなーというのが伝わってきます。素朴なところが好き(笑)
人殺せないタイプですよね!今作の良心の一人。

先日の『相棒』のヤクザ役は意外だったけどすごく上手くて、でもやっぱりゆうやんは素朴な好青年がハマるなーと思いました(笑)

金子岳憲 as 伊織

今作の良心のもう一人!伊織さん!
金子さんお初ですけど、またこの人がすごく良い味出してて、最初の方からもう気に入りました。上手い。

役としては、伊織の愛があまりに深すぎて、伊織パートだけすごく純粋な恋愛ものみたいでした。深いよ。
結局はこの愛が、武蔵を救えるんでしょうか。

他のキャストの方々も皆さん良かったです。うざい宿の女将とか、あとざっくらばんな千代とかが印象に残りました。
怪しい山伏の志賀廣太郎も(笑)