すきなくらし

映画、ドラマ、小説、舞台等の感想記録と、たまに雑記

女性を描いた『八日目の蝉』

『八日目の蝉』

大変気に入った『ソロモンの偽証』の監督なので、鑑賞することに。


八日目の蝉 通常版 [DVD]

八日目の蝉 通常版 [DVD]


2011年、日本
監督: 成島出
脚本: 奥寺佐渡
原作: 角田光代
出演: 永作博美井上真央小池栄子森口瑤子田中哲司、渡邊このみ、吉本菜穂子市川実和子余貴美子平田満風吹ジュン劇団ひとり、田中 泯





これは良い映画でした。
好みとしては『ソロモンの偽証』ですが、これもとても良い。
ただ、観る前から分かってはいたけど、非常に重い話なので、もう語るのもしんどいし、言葉で感情を表せないです。



誘拐犯の、誘拐された少女の、少女の母親の、少女とカルトの中で育った女性の、登場人物それぞれの感情が、映画を観ていて心にとめどなく雪崩れ込んでくる。とても処理出来ない。
どの感情もつらく哀しい。しかしそれだけではない。

誰も彼も不幸で可哀想で、でも誘拐中は確かに母と娘は幸せだった。

辛さしか感じられないのは、本当の母親ですね。
ちょっと酷い描かれ方もしていたけれど、やっぱり一番可哀想だったように思います。

この哀しさ溢れる中で、ラストでは少女が当時の感情を認め、希望が見える終わり方なのが良かったです。
少女も成長し女性になり、そして今度は"母"になる。

タイトルの『八日目の蝉』は、劇中で数回語られます。
「八日目の蝉は、皆が死んでしまっていて、一人ぼっちだから可哀想」
という話をしていた前半。
「八日目の蝉は、皆が見れなかったものを見れる。それはもしかしたらとても綺麗なものかもしれない。だから幸せ」
という話になった後半。
考えがこういう風に変化した登場人物の心情をいろいろ思い、胸に響きました。





この原作は未読ですが、角田光代さんの作品は数冊読んでいます。
角田さんは"人間"は人間でも、特に"女性"を描く作家さんですよね。それが非常にリアルで生々しく、読んでいて苦々しいときもあるくらい。

この『八日目の蝉』も女性の生き方の物語ですね。
母とは何か。娘とは何か。どんな風に母になるのか。
私もまだまだヒヨッコですが一応"女性"の端くれ、映画を観ながらついついこれからの自分に思いを馳せたりしてしまいました。
原作もまた読んでみたいと思います。

八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)






『ソロモンの偽証』と監督が同じということですが、この監督は顔のアップが多いですね。『ソロモンの偽証』の時も、顔のアップが印象的だと思いましたし、今回『八日目の蝉』を観ている時も同じことを思いました。
表情を重視しているんですね。どちらの作品も、もちろん台詞とか他にも印象的なものはいろいろあるんですけど、やっぱり脳裏に焼きついていてパッと浮かぶのは、それぞれアップで撮られた、数々の表情。

永作博美さん、素晴らしかったです。やっぱりこの人上手いですね。
哀しさと幸福さとの対比が胸を締め付けました。
井上真央さんも良かったです。
この2人の表情の演技が、物語をリアルに、色濃くしました。

そして何気に豪華キャストですね。脇がしっかりしていて、良いキャスティングでした。