すきなくらし

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ブラナーシアターライブ『ロミオとジュリエット』感想

ケネス・ブラナーによるブラナーシアターライブ第二弾、ロミオとジュリエットを観てきました。

btlivejapan

(以下作品情報は上記公式サイトより引用)
(2019/6追記:確認したところ、上記サイトが別のサイトになっていたので、リンクは外しました)

BTL概要

世界で活躍する俳優・監督のケネス・ブラナーが率いるケネス・ブラナー・シアター・ カンパニーによるロンドン、ギャリック劇場での上演舞台3作品を、世界の映画館でお楽しみ頂ける<ブラナ ー・シアター・ライブ> (BTLive) が日本に上陸!イギリスでハリウッド大作をしのいでオープニング興収1位を記録したジュディ・デンチ出演「冬物語」を始め、今シーズンは傑作3作品を日本の映画館でお楽しみ頂けます。

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イントロダクション

 ディズニーの実写映画「シンデレラ」で主人公シンデレラを演じたリリー・ジェームズと王子役リチャード・マッデンが、今度は舞台で現代に語り継がれる最も切ない恋人同士を熱演。演出はもちろん、実写「シンデレラ」で二人のケミストリーを最大に引き出した監督としての手腕も光るケネス・ブラナー。イギリスでは公演時、リリー・ジェームズのジュリエットは”完璧”と称賛を浴びた。トニー賞受賞俳優デレク・ジャコビがロミオの友人マキューシオを演じるなど、二人の脇を固める俳優陣も豪華。
​ロミジュリ至上、もっとも美しいラブストーリーが誕生した。

​スタッフ

作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:ケネス・ブラナー
演出・振付:ロブ・アシュフォード
収録版監督:ベン・キャノン
舞台・衣装デザイン:クリストファー・オラム 
照明:ハワード・ハドソン 
サウンドデザイン:クリストファー・シャット 
​作曲:パトリック・ドイル 

キャスト

ジュリエット:リリー・ジェームズ 
ロミオ:リチャード・マッデン   
マキューシオ:デレク・ジャコビ  
バルサザー:ニッキ・パテル     
ベンヴォーリオ:ジャック・コルグレイヴ・ハースト 
モンタギュー夫人:ゾエ・レイニー  
モンタギュー:クリス・ポーター   
キャピュレット:マイケル・ラウズ
キャピュレット夫人:マリサ・ベレンスン
ナース:ミーラ・シオール
パリス:トム・ハンソン
ティボルト:アンス・カビア
プリンス:テイラー・ジェームス
ロレンス:サミュエル・バレンタイン

感想

良い時代ですよね、本場の演劇が日本で観られるなんて。

特別ケネス・ブラナーが好きなわけではないのに、やはりイギリスの超名優ということで、期待に膨らみワクワクとして観に行きました。
とは言え、彼はこのロミジュリには出演しておらず、演出のみですが。
映画の監督としては、『スルース』マイティ・ソーしか観てないです。ソーはそんなにだけど、スルースは私はかなり面白くて興奮したのを覚えています。あの作品は2人芝居だし演劇的ですね。(元々舞台作品)

作品はすぐには始まらず、まずはティーンエイジャーへ様々な質問が向けられています。
ティーンで得すること、損すること、一目惚れを信じるか、愛とは………。
現代の若者たちの正直な気持ちが答えられています。
さらにその若者たちにより、ロミオとジュリエットのあらすじを1分で説明。
そしてブラナーの作品説明。
それを経て、いざ本編へ。

ちなみに幕間は、舞台となっているイタリアに関する一問一答形式の豆知識が文字で流されます。
そしてBTL第三弾『エンターテイナー』の宣伝。

このロミジュリは、演出のケネス・ブラナー、そしてジュリエットのリリー・ジェームズ、ロミオのリチャード・マッデンという、実写映画『シンデレラ』のトリオということで。(あ、デレク・ジャコビもシンデレラ出てる……)
観てないんだなーシンデレラ。
リリーもリチャードも、名前くらいしか知らない状況でした。(後でリチャードは、途中まで観てたゲーム・オブ・スローンズのロブだと知った)
どんなジュリエット、どんなロミオなのか全然わからなくてワクワク。

で、実際観てみると。
とにかくリリーのジュリエットはとても魅力的!!
登場人物の中では一番現代的だと感じたジュリエット。
生き生きとしていて、感情の起伏が激しく、その感情表現も激しい。喜怒哀楽でコロコロと表情が豊かに変わり、自分に正直で昂りやすく、素直なジュリエット。
一番有名なバルコニーのシーン。感情が高ぶる余りに一人「乾杯!!」とお酒を飲んで、ロミオに対する想いを独り言でぶちまけるという設定。そうきたか………!笑っちゃう。

この作品は、このバルコニーのシーンに限らず、とてもユーモアが多かった
笑いどころが多い。
ロミオとジュリエットといえば悲劇なので、これは新鮮だった。
笑えて泣けるロミジュリ

演出も洒落てる場面が多い。
特に音楽を使ってるシーンはカッコいい。オープニングなんて、音楽と俳優の動きにゾクゾクした。

そしてリチャードのロミオ。
彼も素敵だったけれど、リリー始め周りのキャストに比べると、若干ながら影が薄かったような気もする。周りのインパクトが大きい。ロミオはその中でも、普通の青年という感じ。
でも演技は良かった。キラキラと輝く、恋する瞳。全てが悪い方向へ変わっていったときの、絶望感。
そして個人的に印象深かったのが、マキューシオの長語りのシーン。 ロミオがメインではないにも関わらず。ロミオの表情がよく映し出されてたんですけど、ニコニコと面白がって聞いてる最初の朗らかさから、話の雲行きが変わるにつれ戸惑い、曇っていく表情。目の演技にとても惹かれました。

ロミオの友人マキューシオは、あまり見ることのない「老人」。
冒頭のブラナーの説明によると、かのオスカー・ワイルドからインスパイアされたとか。一文無し風の男、しかし酒を奢ると話で返してくれる愉快な男、イカした男………ワイルドの名が出た時、ゾクゾクっと興奮しました。ワイルド好きなので。
そんな愉快でイカしたワイルドから生まれたこのマキューシオ像、演じるのはこれまたシェイクスピア俳優として有名なデレク・ジャコビ
このマキューシオが凄い!ジャコビは一気に観客の注目をさらっていく。
老人だが気が若く、溌剌として、喋る喋る。まさに「愉快な」男。
若い友人たちを老人らしく教え諭すわけではなく、飄々と自由に好きなことをぶちまけながら若者と同化している。

もうね、このマキューシオとジュリエットに挟まれれば、そりゃあロミオも薄くなるよな……と思ってしまった。

個人的には、ジュリエットの父がかなりインパクトがあった。
第一幕の時点でグッと引きつけられた。上手い。発声、喋り方からして人を引きつける。
そして第二幕、ジュリエットに激昂するシーン。ここは一種の彼の見せ場。ど迫力で、すごく怖い。

ジュリエットは、この父の命令と押し付けから始まり、母に見捨てられ、さらには乳母にまで裏切られる。この一連の場面により、ロミオとジュリエットは「家族に殺された」という印象がとても強かった。今まで観た作品ではここまでは思わなかったと思う。
ジュリエットの絶望感、孤独感がヒシヒシと伝わってきて、辛かった。
ジュリエットたちが死に、嘆き悲しむ彼らを見ながらも、「あんたたちが殺したんだよ」とずっと思ってしまった。

乳母、そしてお笑い担当のお手伝いさんもかなり印象的だったし、ベンヴォーリオはなんか可愛いし、ティボルトもビリビリとした迫力で良かった。パリスも良いね。

ロミオとジュリエットは二人の物語だけれど、あえてどちらが主役かと言うと、私はいつもジュリエットだなぁと思っています。
それは演じる役者と、演出にも左右されるのだと思うけれど。

この作品、ラストの台詞が、"this Juliet and her Romeo"だった。
ジュリエットと、「彼女の」ロミオ。
やはりジュリエットを中心とした、ジュリエットの数日の生き様を描いた物語なのだなぁと思いました。

BTL第三弾はケネス・ブラナー主演の『エンターテイナー』。
これがあらすじ読んだだけでとても面白そうなので、絶対行きたいと思います。